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鉄道生まれの新ビジネス・新サービスが宿泊・飲食業界で躍動! 総合展示会「HCJ2025」で2社をウォッチング(東京都江東区)【コラム】

鉄道チャンネル

ビッグサイトの6ホールを宿泊、飲食に分けたHCJ2025の会場風景。飲食ブースでは有名シェフのレシピ通りに調理するマシンが話題でした(画像:HCJ2025事務局)

宿泊サービスと飲食ビジネスの総合展示・商談会「HCJ2025」が2025年2月4~7日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれ、延べ4万9334人が来場。国内外の約800社(者)が出展しました。

HCJは「国際ホテル・レストランショー=ホテレス)」、「フードケータリングショー」、「厨房設備機器展」の3つの展示会の総称。日本能率協会が主催しました。全体テーマは「人手不足対策」、「生産性向上」、「インバウンド対策」の3つ。最も開催回数の多いホテレスで、今回が53回目という歴史ある総合展です。鉄道関連業界からも複数企業が自社サービスをアピールしました。

2024年の訪日客3687万人で過去最高

宿泊・飲食ビジネスを上昇気流に乗せるのが、訪日インバウンドで盛況な観光業界。2024年の訪日客数は3687万人で、過去最高を記録しました。観光と鉄道で思い浮かぶのは新幹線や特急列車による観光客輸送、さらに外国人にもファンが増えている観光列車です。

しかし、鉄道業界の実力はそれだけじゃない。鉄道生まれのアイディアで、宿泊・飲食サービスのレベルアップに貢献する企業もあります。

「人手不足対策に無人店舗」(TTG)

最初に取り上げるのは、JR東日本発のスタートアップ企業・TOUCH TO GO(タッチ・トゥ・ゴー=TTG)。本サイトでは2021年10月、千葉市のガソリンスタンドへの無人コンビニ出店をきっかけに、最新情報を発信してきました。

TTG1号店は、2020年3月の山手線・京浜東北線高輪ゲートウェイ駅。JR東日本が「過去と未来、日本と世界、多くの人々をつなぐ結節点」と位置付ける新駅から〝発車〟したのがTTG。鉄道生まれの新ビジネスです。

キーワードは「無人AI決済店舗」で、ウォークスルー型の完全キャッシュレスが売り。カメラなどの情報から入店客と、手に取った商品をリアルタイムに認識して、人手をわずらわせることなく決済(支払い)を可能にしました。

最近は積極的に市中進出。学校、病院、従業員休憩室と導入事例を増やすのは、本サイトでご紹介の通り。無人店舗で買い物する方のほとんどは、JR東日本生まれのニュービジネスとは気付かないはずです。

ホテレスに初参戦

今回は宿泊産業展への初参戦で、JTB商事ブースの一角で進化形の無人店舗「TTG-SENSE SHELF(センスシェルフ)」をお披露目しました。

JTB商事ブースでお披露目されたTTGセンス。ユーザーに当たるホテル・旅館オーナーらが買い物体験しました(筆者撮影)

TTGの進化形として2024年2月にリリースしたセンスシェルフ、キャッチコピーは「棚板1枚から無人店舗できます」。「人件費最大75%カット」がうたい文句で、ホテルロビーなどわずかなスペースでも、洗面用具やタオルなどのリネン用品、おみやげ品を販売できます。

JTB商事は社名で分かるように、旅行業界最大手・JTBの流通子会社。JTB系列のホテルや旅館で取り扱うリネン用品、おみやげ品の供給を受け持ち、商品とともに無人店舗導入を働き掛けます。全国に営業拠点を持つJTB商事とのコラボで、TTGの販路も大きく広がりました。

ホテレスの仮設店舗は、上段にリネン用品、下段におみやげ品のラインナップ。来場したホテル経営者らが、TTG社員の熱心な説明に聞き入っていました。

このほかTTGからは、「鹿児島県鹿児島市の鹿児島銀行本店ビル『よかど鹿児島』に無人コンビニ『ファミリーマートよかど鹿児島店』開店」(2025年2月5日)のニュースも届いています。

「鉄道の勤務シフト作成を社会が待望」(JRシステム)

続いては「JRシステム」。正式社名は鉄道情報システムで、国鉄改革で情報システム部門を民営化して誕生しました。

鉄道ファンになじみ深いのは、旅客販売総合システム「マルス」。例えば、東京のJR駅の「みどりの窓口」で九州新幹線の指定券が購入できるのも、全国規模のコンピューターネットワークがあるからです。

「マルスのJRシステムとホテル・レストラン業界って、どうつながるの?」の疑問をお持ちの方も多いと思いますが、ホテレスで売り込んだのは「勤務シフトの作成お助けマン」というサービス。

鉄道の乗務員運用ノウハウがレストランで生きる

鉄道会社の場合、自動運転が普及する将来はともかく、列車運行に絶対必要なのが運転士と車掌です(ワンマン運転線区を除きますが)。

運転区や乗務員区などの現場機関には、大手では100人を超す運転士や車掌が所属します。鉄道の基本は、24時間営業のコンビニやレストランと同じ。どの列車にどの乗務員を乗せるかといった、勤務シフト作成が必要です。

JRシステムは、乗務員シフトのシステム化に長年取り組んできました。それを市中展開したのがお助けマンというわけです。

ほとんどの人が鉄道生まれとは気付かない!? JRシステムの「勤務シフト作成お助けマン」ブース(筆者撮影)

働き方改革の昨今、勤務時間制限が厳しくなってきましたが、お助けマンはそうした環境変化に対応。シフトを作成した後は、従業員やアルバイトのスマホに「今月の(次の)勤務は〇月〇日〇時から」と送信します。従業員側からは、勤務や休日の希望を伝える機能も備えます。

鉄道関係では、JR西日本のコールセンター業務を受託するJR西日本交通サービスが採用。ビックカメラやアパホテルといった、有名企業でも、お助けマンの導入例が増えています。

JRシステムからはもう一件、ホテル・旅館向けの予約サイトを一元管理する「らく通with」と名付けたサービスも、別ブースで情報発信されました。

宿泊ビジネスは、旅行客が多い夏休みや年末年始は料金を高く、反対に観光オフシーズンの冬季は料金を安くして客室稼働率を上げる、空室を極力なくすのがビジネスの極意。考え方はJR指定席料金の通常期、繁忙期、閑散期と共通ですね。

HCJ2025のレポートは以上。会場で存在感を発揮した鉄道発のサービス。頭をひねれば、応用範囲はまだまだ広がりそうです。

記事:上里夏生

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