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【南小国編】熊本・阿蘇・人吉を巡って「熊本プレDC」を体験! 話題の映えスポット「喫茶竹の熊」で田園風景に癒される

鉄道チャンネル

「熊本デスティネーションキャンペーン・プレキャンペーン(熊本プレDC)」取材で熊本駅から阿蘇駅へ。ここから阿蘇観光と行きたいところですが、その前にちょっと寄り道をして、阿蘇外輪山のふもとに位置する南小国町へ向かいました。「黒川温泉」や「そば街道」があるところとして有名で、町全体の約8割を森林や原野が占めているという自然豊かなエリアです。

美しい田園風景のなかに溶け込むようにポツリとたたずむ、高床式の建物。SNSを中心に話題を集めているというスポット「喫茶 竹の熊」へ足を運びました。

【前回】
【あそぼーい編】熊本・阿蘇・人吉を巡って「熊本プレDC」を体験! D&S列車で熊本から阿蘇駅へ
https://tetsudo-ch.com/12999213.html

「喫茶 竹の熊」へ行くには?

すぐ近くに「竹の熊」というバス停があるのですが、残念ながら駅とは繋がっていないようです

「喫茶 竹の熊」に公共交通機関で向かうなら、JR阿蘇駅からバスで50分前後、もしくは熊本空港から高速バスで40分弱「南小国役場前」もしくは「市原」バス停で下車すれば、徒歩10分少々でアクセスが可能です。

実際に、バスを利用して訪れる外国人観光客もいるそうですが、バスの本数が少ないことに注意。帰りもバスで戻るのであれば、時刻表を確認のうえ、のんびりとする前提で予定を組みましょう。

小国杉を余すところなく活用 資源の循環により環境を守る

案内をしてもらったのは、小国杉の製材所「穴井木材工場」の3代目である穴井俊輔さんとともに「Foreque(フォレック)」を創業。インテリア・ライフスタイルブランド「FIL」や「喫茶 竹の熊」を運営している穴井里奈さんです。

「Foreque」は2024年、小国杉の認知度向上と普及のために付加価値を高める取り組みなどが認められ、JR九州が主催する「九州観光まちづくりAWARD 2024」で最優秀賞の大賞を受賞しています。

【参考】「JR九州と九州の観光」で三題噺 年末年始にお勧めの鉄道歴史旅もご案内します【コラム】
https://tetsudo-ch.com/12991459.html

その取り組みの一部を知るべく、まずは「FIL」のショールーム兼販売スペース「FIL STORE」へ。ここには小国杉を使った家具や食器、エッセンシャルオイル、阿蘇の植物やハーブをブレンドしたハーブティなどの商品が並んでいました。

隣には精油の抽出を行なう工房があり、入口には小国杉の葉と枝の山が山積みになっていました。山で伐採した小国杉は建築材として売りに出されますが、枝葉の部分は不要とされ、山で放置されていたそうです。その枝葉を、ここではエッセンシャルオイルの材料として活用しています。

エッセンシャルオイルのなる前の、小国杉の葉(写真左)と枝(写真右)。30kgの小国杉から抽出できるエッセンシャルオイルは100g程度とのこと

通常、エッセンシャルオイルは枝葉からそのまま作ることができますが、ここでは敢えて枝と葉を分けているそう。葉の部分は精油を蒸留して残った残渣を堆肥として土に還し、枝の部分は乾かしてから燃やして灰にすることで、土壌改良剤として畑に撒いたり、釉薬(灰釉)として器づくりに役立てたりと、小国杉を余すことなく活用しています。

「このエッセンシャルオイルがいい香りだと感じる人ほどストレス過多かも」と笑う穴井さん。筆者も実際に嗅いでみて、柑橘系のいい香りにとても癒されました……つまり、ストレスを感じている!?
小国杉のカップや皿とともに並ぶのは、枝を燃やした灰を溶媒とした釉薬による灰釉陶器(写真右)。透明感のある淡い緑が美しくて、これは欲しくなる!

「このエリアは九州4県をまたがる大きな河川、筑後川の源流域に位置します。海の生態系は川がつくると言われていて、筑後川の水は豊かな漁場として知られる有明海に流れていきます。もし、筑後川の生態系が崩れれば、有明海にも影響を及ぼすでしょう。廃棄物ゼロを目指し、資源を循環させる私たちの活動が、南小国の環境保全に繋がることを期待しています」と穴井さんは言います。

アロマ抽出工房からあぜ道を通り、のどかな田園風景を眺めながら「穴井木材工場」へ

「Foreque」の原点である製材所を見学

続いて向かったのは、小国杉を建築資材として加工・販売する製材所「穴井木材工場」。穴井ご夫妻にとって家業であり、「FIL」や「喫茶 竹の熊」の根幹となる場所です。

南小国の杉や檜による建築材の製造、販売を行う「穴井木材工場」

小国杉は寒暖差の大きい山間地で、水資源が豊富なため、他の地域と比べて木目の詰まった丈夫で大きな木が育ちやすいそう。そして、薄いピンク色の木肌も特徴です。やすりを掛ける前でもすべすべとした手触りで、やすりを掛けるとさらに滑らかに。油分を多く含んでいるため、しっとりとしています。

職人が「赤い」と表現するというピンク色の木肌の小国杉。「スパンと切るとローズピンクのようなきれいな色なんです」と穴井さん

地域の木材を使用して建築中のログハウスも、ちらりと見学させていただきました。何と、基礎部分のコンクリート以外、すべて木で建てられているとのこと。通常の住宅には必須の断熱材も入っていないそうです。実は裏側に設置されているペチカストーブで端材を燃やし、その熱源で壁を暖かくして、家の中を暖める仕組みなのだとか。

完成後はモデルハウスとして1日宿泊体験施設として利用する予定。製材所の事務所を兼ねているログハウス
上質な小国杉をふんだんに使用。写真右側の壁は蒸した杉の葉を混ぜた漆喰で仕上げているとのこと。2階には萱で作ったベッドもあり、自然素材の家を体現していました

日常の喧騒を忘れてしまいそうな、水庭越しに広がる田園風景

いよいよ、話題のスポット「喫茶 竹の熊」へ。「小国杉をふんだんに使って建てられた建築で、目の前に広がる美しい田園風景を眺めながら、南小国の湧き水や食材を使った食べ物や飲み物を楽しんでほしい」という想いから作られた贅沢な空間です。

建物は山の湧き水を引いた水庭を取り囲むように板の間と回廊、喫茶室を設けた空間構成で、どこから見ても絵になる光景! 神社仏閣などの木造建築に用いられる伝統的な工法や建築様式を採用し、地元の職人の手で建てられています。建物に使用した木のほとんどが先ほど見学した製材所で加工され、石材や土などの材料も地元産で統一されています。

磨き丸太の棟木が目を引く高床の板の間。足を投げ出すように座り、のんびりとくつろぐ人が多いそう
杮葺き屋根は、6万6,000枚の小さな小国杉のピースを張って仕上げたそう。なんて贅沢!

カフェの一部は壁がなく、あえて照明も設置されていません。天井には、紙漉き職人が貝殻の粉を入れるなど工夫して白さを出したという和紙が貼られています。太陽の光が水面に反射し、天井に当たることで、ゆらゆらと揺れながら映し出され、美しい照明代わりになることを想定しているのだとか。

「昔ながらの日の出・日の入りの暮らしを再現しています。私たちスタッフも、日の入り前に残業せずに帰ります」という穴井さんの言葉に「何て贅沢なのだろう」と感じずにはいられませんでした。

喫茶室は床を敢えて1段下げることで、田んぼと同じレベルとなるように設計されています。テーブルは小国杉と石を組み合わせて製作。暖炉の薪ももちろん小国杉。「端材がいつでも手に入るため、薪の確保に困ることはありません」と穴井さん

「竹の熊」の写真を見たときから素敵な空間であることは想像していましたが、実際に足を運んでみれば、まさしく南小国の魅力を凝縮した空間でした。環境保全まで視野に入れた取り組みにも共感しましたが、何も考えず、時間や天気の移り変わりとともに表情を変える景色をぼんやりと眺めるひとときは至福の時間ですね。
ここからは、阿蘇の中心部へ。次回は阿蘇神社や草千里など、阿蘇の人気観光スポットやグルメを紹介します!

次回: 【阿蘇編】熊本・阿蘇・人吉を巡って「熊本プレDC」を体験! 阿蘇神社や草千里ヶ浜、白川水源、名物の田楽料理やSNSで人気のカフェもチェック

文/写真:斎藤若菜

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