「なんでもいい」が口癖のわが子…。「自分で決められる子」になるための親の関わり方とは?
臨床心理士・公認心理師のyukoです。 「うちの子、自分で判断して決められないんです。選択に自信がもてないみたいで……」という親御さんの声をよく耳にします。たしかに、周囲の空気を読もうとする力は、小学校高学年においては大切な社会性の一つ。しかし同時に、自分の気持ちを理解し、大切にし、必要なときにはしっかり主張できる力も育てていきたいものですよね。 今回は、“自己決定力”を育むために、親が日常でできる関わりについて考えてみます。
「なんでもいい」「どっちでもいい」が口癖の子
主体性のないわが子。「誕生日何欲しい? 何食べたい?」と聞いても、「なんでもいい。友達がもってるゲームとかかな。」とぼんやりした返事。友達を自分から遊びに誘うこともなく「断られるかもしれないから」と消極的だったり、図工の時間「自由に描いてよい」と指示されても例と同じような作品を作ってくる。子どもの主体性はどうやったら育つ?
主体性がない、自分で決められないと一言に言っても、背景にはいくつかのタイプが隠れています。
・周囲の顔色や反応をうかがい、正解を探そうとするタイプ→「失敗したくない」「怒られたくない」という思いから、自分の気持ちを抑えてしまう。
・断られること、否定されることへの不安が強いタイプ→「誘って断られたらどうしよう」とリスクを避ける行動が中心に。
・周囲が先回りしてくれていて、決める経験が少なかったタイプ→ 子ども自身が「選ぶ」ことに慣れていないため、自分の気持ちをつかむのが難しい。
小学校中~高学年くらいは、周囲の目を意識し始める自然な時期。だからこそ、“自分の気持ちを感じて、見つけて、伝える”経験を少しずつ積んでいくことが大切です。ポイントは、「なんでも自分で決めさせる」ではなく、「無理のない範囲で選ばせる」手助け。子どもが自分で決められるようになるための関わり方を考えていきます。
無意識のうちにしてしまっている、親の先回り
子どもに関する選択をしているとき、毎回「あなたはどうしたいの?」「どっちがいいの?」と聞いていても、無意識に先回りしていたり、誘導していたりする方は多いもの
例えば、
・子どもが選んだあとに「それでいいの?」と、なんとなく聞いている。
・失敗しそうな選択をしたとき、違う案を提案してあげる。
・子どもが選んだ結果に対して「だから言ったでしょ」と言う。
どれも親の思いやりから出たものですが、「選んでもいい」「失敗しても大丈夫」という安心感があってこそ、子どもは自分の気持ちを表に出せるようになります。すべての場面で子どもに合わせていると生活がままならないので、どんな親御さんも代わりに決めたり、よさそうな道に誘導するときはあるでしょう。大切なのは、時折「今回はとことん付き合ってあげよう、どんな選択でも見守ろう」という機会があることです。
どんな声かけが子どもの「決める力」を支えるのか?
「どうしたいの?」「どっちがいいの?」という問いかけは、答えを引き出すときには効率よいのですが、親の顔色を見てしまう子は“親にとっての正解”を選んでしまいます。そこで重要なのは、子ども自身の気持ちを見つけるための声かけ。
例えば
・もし~したら、どんな気持ちになると思う?(気持ちの予測を促す)
・Aがいい理由は? Bがいい理由は? (比較を通して価値観を見つめる)
・もし友達が同じことで迷ってたらどんな風に声をかける? (客観的視点を取り入れる)
・「好きにしていいよ、自由でいいよ」って言われたとき、どんな気持ちになる? (子ども自身の捉え方を探る)
このような問いかけをすることで、子どもは自分の気持ちを見つめるきっかけができます。子どもが「なんでもいい」と言うとき、本当は“自分の気持ちがまだ見えていない”ことも多いもの。だからこそ、親ができるのは、急かさず・否定せず、気持ちを見つける手伝いをすること。
時間があるとき、気が向いたとき、根気強く子どもの気持ちを一緒に見つけてあげられるといいですよね。
yuko/臨床心理士・公認心理師