退職代行サービス、労働者の新たな選択肢として定着か 背景にはパワハラや悪質な引き止めなど
ベリーベスト法律事務所(東京都港区)は11月15日、2020年から2024年にかけての「退職サポート」サービスに関する相談件数のデータを公開した。同サービスは、退職を希望する労働者に代わり、会社に退職の意思を伝え、退職手続きを代行するもの。同事務所は、退職代行サービスの需要が安定して推移しており、労働者にとって新たな選択肢として定着しているとの分析を示した。
退職代行に関する相談件数、年間およそ1000件で安定推移
公開されたデータによれば、相談件数は年間1000件程度で推移し、過去5年間で大きな変動は見られていない。
都道府県別の相談件数では東京都が92件、神奈川県が82件と首都圏が全体の中心を占め、関東地方全体で322件と全国最多を記録した。次いで近畿地方136件、中部地方126件と続き、都市部での利用が目立つ結果となった。
同事務所はこの背景について、地方では法的サポートを受けるための心理的・物理的なハードルが高い傾向にあり、地方の労働者がアクセスしにくいと推測している。
2018年頃から注目、若者を中心に拡大した退職代行サービス
退職代行サービスは、2018年頃から注目を集め始めた。長時間労働や職場での人間関係の悪化、ハラスメントなどの影響で、退職を申し出ることが困難な労働者が増加。これに対応する形で、第三者が退職手続きを代行するサービスが普及した。
同サービスは「手軽さ」や「対人トラブルの回避」といった点で特に若年層に支持されており、SNSやメディアを通じて広がりを見せている。ベリーベスト法律事務所のデータによると、2024年1月から10月に寄せられた相談のうち、男性は587件、女性は264件と、男性の利用者が女性の約2倍に上ることがわかった。建設業や製造業など、男性比率が高い職種で職場環境に起因するトラブルが多いことが背景にあるとみられている。
パワハラや損害賠償リスク、退職時のトラブルが依然根強い
2024年の相談内容には、退職を巡る深刻な問題も多く含まれている。パワハラや退職引き止め、損害賠償の脅しなど、労働者が退職を申し出ること自体が困難な状況が多発しているという。具体的には、以下のような相談が寄せられた。
・パワハラを受け、怖くて退職をいい出せない
・ほかの人員が見つかるまで引き止められそう
・退職届が受理されない
・退職時に損害賠償請求をほのめかされる
一方、マイナビ(東京都千代田区)が10月3日に発表した「退職代行サービスに関する調査レポート」では、2021年以降、同サービスを利用した退職者が増加傾向にあることが示されている。今後も、長時間労働や職場でのハラスメント問題が解消されない限り、退職代行サービスの需要は安定して続くとみられている。
なお、ベリーベスト法律事務所の詳細な調査結果は同社のプレスリリースで確認できる。