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背中の貼り紙が告げる認知症の現実…母の入院で迫られる避けられぬ介護の決断とは【体験談】

シニアカレンダー

私が53歳のある日突然、母が急病で入院することになりました。問題は父でした。両親は2人で暮らしており、アルツハイマー型認知症で要介護3の父を母が世話していました。その母が入院することになったのです。私の家は実家から電車で3時間ほどで、私も仕事をしているため、父を引き取ることもできません。母から「入院することになった」という電話があったとき、目の前が真っ暗になりました。

介護者の母が入院。要介護3の父は…

母の容体は? 手術になるの? その間、父はどうなるのか? 一度にいろいろなことが頭を駆け巡り、他に頼る親戚もいない私はパニック状態になってしまいました。病院から「緊急手術となったので、明朝8時に来てほしい」と電話がありましたが、病院は実家よりもさらに遠く、始発で行っても間に合わないため、なるべく早く行くということになりました。

この病院は母が毎月糖尿病の治療に通っている病院でした。母が、主治医である院長に現在の状況を説明した結果、父もレスパイト入院というシステムを使用して、同じ病院に入院できることになったのです。レスパイト入院とは、介護者が病気などで入院する際、被介護者(介護を受ける側の人)が期限付きで入院できるシステムです。

さらにこの病院は、以前に父もヘルニアで入院しており、そういうこともあってか話はスムーズに決まったようでした。どこの病院にもこのようなシステムがあるのかはわかりませんが、その点では父はとてもラッキーだったと思います。

とりあえず父の落ち着き先が決まったことでホッとしたものの、母の手術はこれからです。とにかく会社に連絡を入れ、休みをもらい、翌日病院に向かいました。

父の背中に病院からの貼り紙を発見

病院に行くと、父がひとりで入院棟の小さなソファに座って食事をしていました。ふと見ると、背中に何かが貼ってあります。

「この人は〇〇病院の患者さんです。見つけた方は、病院までご連絡ください。電話番号×××-××××」

これを見たとき、「ああ、父は本当に認知症だったのだ」と認識を新たにしました。今まで母から父の様子が少しおかしい、認知症ではないかと言われていましたが、電話では特におかしなところもなく、いつもの父だったので半信半疑でした。

看護師さんに聞くと、病棟の違う母を探して外に出て行ってしまうため、紙を背中に貼ったとのことでした。また、看護師さんは、母が手術をするということは父には伝えていない、知ってしまうと父が心配してまた母を探しに出て行ってしまうからとも言っていました。

2カ月ほど会わないうちに、父はまるで変わっていました。ほとんど話さなくなり、反応も鈍くなっていました。レスパイト入院できたのは本当によかったのですが、病院は介護施設ではないため、父は1日中ひとりで過ごさなくてはなりません。娯楽も運動できる場所もありません。私は、父にとってもう少し良い環境にすることはできないだろうかと考えるようになりました。

介護老人保健施設の面接へ

母の手術は無事済んで、半月ほど入院ということになりました。すぐに病院のケアマネジャーさんから電話があり、今後のことで話し合いたいとのことでした。後日病院に行き、ケアマネジャーさんとお会いしました。とても元気のいいハキハキとした方で、父の認知症の状態が悪いこともあり「ここにずっと入院することはできない。特別養護老人ホームに入るのが一番良いが、この時点で2000人待ちのためすぐには空きがない。介護老人保健施設であれば入れそうなところがある」ということを教えてくれました。

幸い入院していた病院のそばに何カ所か介護老人保健施設があり、その中の1つに空きがあるとのことで、「早めに面接に行き、決めてきたらどうか」と勧められました。どうやら入院中、父の認知症がかなり悪くなってきたようなのです。

私は、ケアマネジャーさんに連絡を取っていただき、介護老人保健施設に面接に行くことを決めました。そこは病院からバスで10分くらいの場所にありました。とてもきれいで大きな病院が併設されており、何かあればすぐにそちらで対応できるとのことでした。感じの良い女性のスタッフさんが料金、食事、介護スケジュールなどの説明をしてくれ、その日のうちに入所日まで決めました。私はこのとき初めて肩の荷が下りた気がしたのです。

まとめ

介護老人保健施設のスタッフの方から「認知症には波があり、症状が出ないときは普段と変わらなく見えたりする」と聞きました。父の認知症は知っていましたが、さほど頻繁に会わない私は半信半疑でした。会うときはいつも元気で、変わった様子はなかったのですが、今回のことで父の認知症は疑うことのできない現実となりました。これは精神的につらいことでしたが、病院のケアマネジャーさんと施設のスタッフさんの連携により、父の入所が決まったことはうれしいことでした。

それまで老健についてろくに知らなかった私でしたが、自分なりに調べ知識を身に付けることにもつながりました。そして母は無事退院、父は施設へと新しいスタートを切ることができたのです。

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。

監修/駒形依子先生(こまがた医院院長)

2007年東京女子医科大学卒業後、米沢市立病院、東京女子医科大学病院産婦人科、同院東洋医学研究所を経て、2018年1月こまがた医院開業。2021年9月より介護付有料老人ホームの嘱託医兼代表取締役専務に就任し現在に至る。著書に『子宮内膜症は自分で治せる(マキノ出版)』『子宮筋腫は自分で治せる(マキノ出版)』『膣の女子力(KADOKAWA)』『自律神経を逆手にとって子宮を元気にする本(PHP研究所)』がある。

著者:平田昭子/50代女性。自営業。東京生まれの東京育ち。校正の仕事が休みの日は、映画や読書を楽しむ。最近は着物にもはまっている。父の認知症をきっかけに、高齢者と病気について考えるようになった。

※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています

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