ポップで奇抜な演出&国際色豊かな歌手陣が圧巻のパフォーマンスで魅了~ロイヤル・オペラ『ホフマン物語』を「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2024/25」で上映
英国はロンドンのコヴェント・ガーデン、「ロイヤル・バレエ&オペラ(RBO)」で上演された、ロイヤル・オペラ、ロイヤル・バレエ団による世界最高峰のオペラとバレエを、特別映像を交えて映画館上映する「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ」。今シーズンも全10作品<バレエ6作品/オペラ4作品>を各1週間限定で全国公開する。ライブでの観劇の魅力とは一味違う、映画館の大スクリーンと迫力ある音響で、日本にいながらにして最高峰のオペラとバレエの公演を堪能できる至極の体験を味わえる。
2025年3月28日(金)からは、鬼才ダミアーノ・ミキエレットによるポップで奇抜な演出が光る幻想的なオペラ『ホフマン物語』が、TOHOシネマズ日本橋ほか全国で1週間限定公開される。ファン・ディエゴ・フローレスをはじめ国際色豊かな旬の歌手陣による圧巻のパフォーマンスも要注目。そんな本作の見どころを、音楽・映画・舞踊ナビゲーター、石川了氏の解説とともに紹介する。
『ホフマン物語』は、“オペレッタの王様”と称されたフランスの作曲家ジャック・オッフェンバックが、パリの音楽界から“オペラ作家”として認められたいとの想いで取り組んだ、彼にとって生涯最後となるオペラ作品。1881年2月10日にパリのオペラ・コミック座で初演された後、上演した劇場の火災などで初演の楽譜や資料が散逸し、現在まで決定版がないまま複数のバージョンの楽譜が存在している。どのバージョンも、詩人ホフマンが3つの失われた恋を振り返るという基本ストーリーは変わらないが、オッフェンバック自身が命名した「幻想オペラ」(Opera fantastique)という要素がクリエイターの想像力を掻き立てるのか、物語の順番や音楽が異なるさまざまな『ホフマン物語』が上演されている。
石川氏は本作の演出について、「挑発的な読み替えで常に論争を巻き起こすイタリアの演出家ダミアーノ・ミキエレットによるポップで奇抜、ちょっとダークな幻想的ステージが見どころだ」と語る。人生にも詩作にも幻滅している初老の詩人ホフマンは、ニュルンベルクの居酒屋ルーサー・タバーンで、詩のミューズの導きにより、パリの少年時代(オランピアへの恋)、ミュンヘンの青年時代(アントニアとの恋)、大人になったヴェネツィア(ジュリエッタとの恋)という若き日の恋した時代を旅することで、これからの詩作人生に新たな希望を見出す。石川氏は、本作のこのような展開について、「人間賛歌を謳うフェリーニ的だ」と解説し、さらに「今となっては古臭いかもしれないオペラの物語を、現代の私たちに違和感なく観てもらうための読み替え演出。それがミキエレットの世界的な人気の理由なのだろう」とミキエレットへ賞賛を送っている。
さらに、石川氏はキャストにも注目し、「国際色豊かな旬の歌手のパフォーマンスを、映画館の迫力のスクリーンと音響空間で堪能できるのも、英国ロイヤル・バレエ&オペラの醍醐味のひとつである」と述べている。
主人公ホフマンを歌うのは、ペルー出身の世界的スーパーテノール、ファン・ディエゴ・フローレス。51歳の彼は、少年から若者、青年、老人までを演じ切る。
ホフマンの“宿敵”であるリンドルフ、コッペリウス、ミラクル博士、ダペルトゥットの4役には、イタリアの人気バスバリトン、アレックス・エスポージト。
オランピア役には、本公演でロイヤル・オペラ・ハウスデビューを飾ったロシアの新進ソプラノ、オルガ・プドヴァ。
他にも、エルモネラ・ヤオ、マリーナ・コスタ=ジャクソン、ジュリー・ブリアンヌといった実力派歌手たちが作品に彩りを添えている。
ダミアーノ・ミキエレットの斬新な演出とキャスト陣の圧倒的な歌唱パフォーマンスで魅せる『ホフマン物語』をぜひ劇場でご堪能あれ。
※石川 了(音楽・映画・舞踊ナビゲーター)による『ホフマン物語』解説全文は下記↓URLにて閲覧可能です。