「ルンルン」「ニャムニャム」ってなんのこと?? スペイン語のオノマトペ【しあわせ気分のスペイン語】
犬の「ワンワン」、雷の「ゴロゴロ」のようなオノマトペ(擬音語、擬態語)を知ると、言語の意外な側面が見えてきます。
スペイン語のオノマトペ(onomatopeya〔オノマトペヤ〕)について、テキスト『しあわせ気分のスペイン語』で講師を務める福嶌教隆先生に教えていただきました(テキストより一部抜粋)。
何の音でしょうか?
次のオノマトペは、何の音でしょうか? 考えてみてください。
答えは……
日本語の「るんるん」は気分が浮き立っている様子を表すことばですが、【1】はそうではありません。「大勢の人の話し声」、転じて「うわさ話」という意味でも使います。日本語なら「ザワザワ」「ガヤガヤ」ですね。
【2】は、キスの音です。「チュッ」より情熱的ですね。語尾にcを付けて ¡Muac!〔ムアク〕と言うこともあります。
【3】は、1954年にメキシコのトマス・メンデス(Tomás Méndez)が作曲したヒット曲で知られたオノマトペで、ハトの鳴き声を表します。「ポッポッポ」とはずいぶん違いますね。昭和世代の方なら桜田淳子の歌を思い浮かべたり……。いえ、あれは微妙に違います。確かに鳥の歌ですが。
【4】は、「ムニャムニャ」と寝ぼけていることを指すのではありません。食べ物を勢いよく食べる音。つまり「ムシャムシャ」にあたります。
【5】は、何事もプラス思考でいく様子……。そんなわけはありません。拍手の「パチパチパチ」です。
……さあ、5問中何問正解しましたか? もとは同じ音なのに、スペイン語圏の人の耳には、ずいぶん違った音に聞こえていることがご納得いただけたでしょうか?
動物の鳴き声
冒頭に挙げた犬の「ワンワン」は、スペイン語では ¡Guau, guau!〔グアウ・グアウ〕と言います。また、「犬がワンワン吠える」はladrar〔ラドラル〕、「犬がワンワンと吠える声」はladrido〔ラドリド〕と言います。
このようにスペイン語には、動物の鳴き声のオノマトペのほかに、「動物が~と鳴く」を表す動詞や、「動物の~という鳴き声」を表す名詞がたくさんあるのが特徴です。
日本語では、特定の動物の鳴き声を表す動詞、名詞と言えば、せいぜい馬が「いななく」、鳥が「さえずる」くらいですが、スペイン語ではそういう動詞、名詞が充実しているので、オノマトペに頼らなくても「豚がブウブウと鳴いた」のようなことが表現できるわけです。特に、家畜や家禽(かきん)の鳴き声が細かく区分されているのは、古くから牧畜が人々の暮らしの根幹だったことと関係があると思われます。
一方、牧畜とは関係のない小動物の鳴き声については、名詞、動詞のどちらかが欠けていたり、名詞をオノマトペで代用していたり、と、ちょっと雑な感じがします。スズムシは「リーンリーン」、クツワムシは「ガチャガチャ」、鳴き声が名前になった「ツクツクボウシ」など、虫の声を丁寧に聞き分ける日本文化とはずいぶん違いますね。
文:福嶌教隆(ふくしま・のりたか)
神戸市外国語大学名誉教授、スペイン王立学士院外国人会員、言語学博士(マドリード・コンプルテンセ大学)、イスパニア語学専攻。直近のNHKのスペイン語講座担当は「まいにちスペイン語 応用編」(2023~2024年)。著書に『これからはじめる スペイン語入門』(NHK出版)、『詳説スペイン語文法』(共著、白水社)、『ニューエクスプレスプラス スペイン語』(白水社)、『気持ちが伝わる! スペイン語リアルフレーズBOOK』(研究社)など。趣味は漫画を描くこと。
◆『しあわせ気分のスペイン語』2024年11月号
◆文 福嶌教隆