【大阪万博パビリオン厳選ガイド】エンジニア必見! 技術的好奇心を刺激される展示8選
現在開催中の大阪・関西万博。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、世界最先端のテクノロジーや社会のトレンドが集結するこの万博は、ITエンジニアにとっても見逃せない一大イベントだ。
未来を先取りするイノベーションの数々を目の当たりにすることで、エンジニアとしての視野が広がり、今後のキャリアや技術の方向性を考える上で、大きな刺激を受けるはず。この記事では、数あるパビリオンの中から、ITエンジニアにとって特に見逃せないものを厳選して紹介する。
目次
【NTT Pavilion】IOWN構想で、時空を超えるコミュニケーションを体験【TECH WORLD】驚きのテクノロジー体験【電力館 可能性のタマゴたち】未来のエネルギーを体感【未来の都市】Society 5.0が拓く、都市の未来像【日本館】「ものづくり大国」日本のサステナブルな未来【GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION】ガンダムが示す、人とモビルスーツが共存する未来【三菱未来館】生命の起源と未来を探求する壮大な旅へ【パナソニックグループパビリオン「ノモの国」】五感で解き放つ、未来技術の可能性
【NTT Pavilion】IOWN構想で、時空を超えるコミュニケーションを体験
通信分野の巨人、NTTが出展するパビリオンのテーマは「PARALLEL TRAVEL」。ここでは、未来のコミュニケーションを体験できる。
展示の中心となるのは、革新的なネットワーク・情報処理基盤構想「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」。IOWNは、超大容量、超低遅延、超低消費電力の通信を実現する、未来のネットワーク基盤だ。パビリオンは三つのゾーンで構成されており、それぞれのゾーンでエンジニアにとって貴重な学びが得られるだろう。
・Zone 1(プロローグ)
手紙やモールス信号といったアナログな通信手段から、現代のスマートフォンに至るまでの通信技術の進化を学べるゾーンだ。映像やレプリカを通してコミュニケーションの歴史を辿ることで、自身の専門分野の進歩を改めて認識し、将来の革新に向けた視点を得られるはず。過去の技術の限界と、それを乗り越えてきた技術者の情熱を知ることで、IOWNのような新しい技術が、未来をどのように切り開くのか、より深く理解できるだろう。
・Zone 2(メインエクスペリエンス)
ここでは、IOWN技術の真髄である、リアルタイム3D伝送や触覚コミュニケーションを体験できる。Perfumeのライブパフォーマンスをリアルタイム3Dで伝送するデモンストレーションは、IOWNの能力を具体的に示す好例だ。このゾーンでは、高度なネットワーク技術がもたらす、リアルタイムアプリケーションの可能性を肌で感じることができるだろう。超低遅延かつ大容量の通信がもたらす革新的な変化を、具体的にイメージできる貴重な機会となるはずだ。
・Zone 3(エピローグ)
ここでは、来場者の3Dデータから生成された、自律的に行動するもう一人の自分「Another Me®」を通じて、仮想空間における未来のソーシャルインタラクションを体験できる。表情を変えたり、歌を奏でたりする様子は、デジタルアイデンティティーや仮想プレゼンスの進化を示唆している。この技術は、仮想会議、遠隔支援、パーソナライズされたデジタル体験などへの応用が期待できるため、エンジニアにとっては技術の方向性を考える上で重要な気付きとなるのではないだろうか。
インタラクティブな仕掛けが用意されており、未来の技術が社会に浸透していく様子を体験できるパビリオンだ。
NTT Pavilion
■会場エリア:東ゲートゾーン
■運営時間:9:00~21:00
■万博公式サイト:https://www.expo2025.or.jp/domestic-pv/ntt/
■パビリオン公式サイト:https://group.ntt/jp/expo2025/
【TECH WORLD】驚きのテクノロジー体験
玉山デジタルテックが出展する民間パビリオン・TECH WORLD。「世界をつなぎ、より良い未来の暮らしへ」というコンセプトのもと、「ライフ(生命)」「ネイチャー(自然)」「フューチャー(未来)」のエリアで構成されたパビリオンだ。視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚・感性といった「六感」に働きかける仕掛けがなされている。
パビリオンの主な見どころは、下記の通り。
・ライフ劇場
ここでは、560本ものロボットアームとChromebookを駆使した、他に類を見ないマルチメディアパフォーマンスが展開される。特別な生態環境における生命の多様性、寛容性、回復力を表現しており、ロボット工学、IoT、組み込みシステムに関わるエンジニアにとって、これらの技術の複雑かつ芸術的な応用例を見る貴重な機会となるだろう。自動化および制御システムの可能性を示唆し、新たなインスピレーションを与えてくれるはずだ。
・ネイチャー劇場
点群モデリング、香り、サウンドスケープを組み合わせた没入型体験を通じて、自然との共生を来場者に伝える劇場だ。点群モデリング(ポイントクラウドモデリング)とは、現実世界の物体や環境を3Dスキャンして得られた、無数の点データを用いて、リアルな仮想環境を構築する技術のこと。高度な3Dスキャンおよびレンダリング技術が、没入型体験の創造にどのように活用されているかを理解する上で役立つだろう。点群データの取得、処理、そしてリアルな仮想環境への応用も目の当たりにできそうだ。
出典:TECH WORLDパビリオンは、世界と「共に良くなる」ことを願い、大阪・関西万博で輝かしく登場
・フューチャー劇場
ここでは、生成AIを使用して作成されたアニメーションストーリーが上映され、未来の世界におけるチップの重要な役割を示す。AIがコンテンツ生成に活用される事例は増加しており、メディアやエンターテインメント業界だけでなく、様々な分野への応用が期待されている。AIの進化とその可能性を認識する良い機会となるだろう。
・インタラクティブパフォーマンス
来場者がパネルに触れると数百匹の蝶が舞い踊る「群蝶共舞」、来場者の心拍数に応じて最適な観光プランを推奨する「ハートビートスマートブレスレット」など。これらは、インタラクティブ技術と生体認証技術の統合によるパーソナライズされた体験を示すものであり、エンジニアにとってはユーザー中心のアプリケーション設計における気付きが得られるだろう。
TECH WORLD
■会場エリア:西ゲートゾーン
■運営時間:9:30~21:00
■万博公式サイト:https://www.expo2025.or.jp/domestic-pv/tamayama/
【電力館 可能性のタマゴたち】未来のエネルギーを体感
カーボンニュートラルのその先を見据え、未来のエネルギーの可能性や技術に焦点を当てたパビリオンだ。来場者は「タマゴ型デバイス」を使って、展示とインタラクションしながら館内を巡る。
パビリオンの「可能性エリア」では、核融合、温度差発電、植物発電、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)など、未来を切り開く可能性を秘めたエネルギー技術がインタラクティブな体験を通じて紹介される。これらの多様なエネルギー技術が、スマートグリッド、エネルギー管理、持続可能なソリューションといった分野で、どのようにITと統合されていくのかを考えるきっかけを得られるだろう。
世界がより持続可能なエネルギー源へと移行する中で、ITエンジニアはこれらの新しいシステムの技術インフラの開発と管理において、重要な役割を果たすことになる。この展示は、将来のキャリアパスを検討する上で、有益な視点を提供してくれそうだ。
電力館 可能性のタマゴたち
■会場エリア:東ゲートゾーン
■運営時間:9:30~21:00
■万博公式サイト:https://www.expo2025.or.jp/domestic-pv/electric/
■パビリオン公式サイト:https://www.fepc.or.jp/sp/expo2025/
【未来の都市】Society 5.0が拓く、都市の未来像
「未来の都市」パビリオンは、Society 5.0の枠組みの中で、都市の未来の姿を探求する共同展示だ。Society 5.0とは、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させ、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会。この概念を推進する主要なテクノロジーには、AI、IoT、ロボティクス、ビッグデータなどが含まれる。
パビリオンは、テーマ展示から始まり、共通展示、そして個々のパートナー企業による展示へと進む構成となっている。Society 5.0と未来都市が、日常生活者の視点から表現されており、未来都市の住民との「対話」を通じて、未来の生活を体験できるような工夫が凝らされている。
パートナー企業による展示では、未来のテクノロジーが様々な産業分野でどのように応用されるかが具体的に示される。例えば、クボタの「プラネタリーコンシャス」な食と農業、川崎重工業の未来のモビリティソリューションなどが紹介されている。これらの多様な応用例を見ることで、ITエンジニアは自身のスキルが、スマート農業、持続可能な輸送といったSociety 5.0のビジョンに貢献する様々な分野で、どのように活かせるかを考えるきっかけを得られるだろう。従来のソフトウェア開発やITインフラといった、従来のキャリアパスを超えて、より幅広い可能性を探求する動機付けとなるかもしれない。
未来の都市
■会場エリア:フューチャーライフゾーン
■運営時間:9:30~21:00
■万博公式サイト:https://www.expo2025.or.jp/future-index/future-life/city/
■パビリオン公式サイト:https://www.expo2025-futurecity.jp/
【日本館】「ものづくり大国」日本のサステナブルな未来
日本館は、「いのちと、いのちの、あいだに」をテーマに、日本の文化と技術に根ざした、持続可能な社会のあり方を提示するパビリオンだ。
・プラントエリア
万博会場で発生するゴミを、微生物の力でエネルギーに変換するバイオガスプラントが展示される。これは、廃棄物からエネルギーを生み出す技術の現実的な応用例であり、持続可能な開発や循環型経済に関心のあるエンジニアにとって、具体的なインスピレーションとなるだろう。実際に機能するバイオガスプラントを見ることで、エンジニアはテクノロジーが廃棄物管理とエネルギー生成の課題に、持続可能な方法でどのように対処できるかを理解することができる。
・ファームエリア
藻類を活用した二酸化炭素のリサイクルによる、新しい素材の生産に焦点が当てられている。グリーンテクノロジーや持続可能な素材開発に関心のあるエンジニアにとって、新たなキャリアの可能性を示唆するかもしれない。
・ファクトリーエリア
修理や修繕を重ねて長く使い続けるという、日本の「ものづくり」の文化に着目。例えば、増水時にあえて一部が壊れることで、全体への負担を軽減する京都の「流れ橋」や、着陸時に脚部が「壊れる」ことで衝撃を吸収するJAXAの月着陸実証機「SLIM」などが挙げられる。これは、持続可能性と長寿命を重視した製品設計の考え方を提起するものだ。高品質、耐久性、資源効率を重視する「ものづくり」の原則は、現代のエンジニアリングの実践においてもますます重要になっている。
日本館
■会場エリア:東ゲートゾーン
■運営時間:9:30~21:00
■万博公式サイト:https://www.expo2025.or.jp/domestic-pv/japanese-government/
■パビリオン公式サイト:https://2025-japan-pavilion.go.jp/
【GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION】ガンダムが示す、人とモビルスーツが共存する未来
GUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONは、ガンダムの世界に描かれた高度なテクノロジーが、現実となる未来を探求するパビリオンだ。象徴的な存在である実物大ガンダム像は、まさにその未来を体現している。
パビリオン体験では、来場者は軌道エレベーターに乗って、宇宙ステーション「スタージャブロー」へと向かう。この未来の世界は、Unreal Engine 5を使用して制作された没入型映像で描かれている。ガンダムの世界は技術的なコンセプトに深く根ざしており、この未来像を没入型技術を通じて体験することで、エンジニアは現在の技術の限界を超えた発想や、宇宙技術、ロボット工学、高度なAIといった関連分野への関心を刺激されるだろう。
映像では、モビルスーツが兵器としてではなく、平和目的で活用される未来の姿も描かれている。
GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION
■会場エリア:西ゲートゾーン
■運営時間:9:00~21:00
■万博公式サイト:https://www.expo2025.or.jp/domestic-pv/bandai-namco/
■パビリオン公式サイト:https://www.bandainamco.co.jp/gundam-next-future-pavilion/index.php
【三菱未来館】生命の起源と未来を探求する壮大な旅へ
三菱未来館は、海の深淵から宇宙の広がりまで、「生命」の起源と未来を探求する旅へと来場者を誘うパビリオンだ。湾曲した巨大LEDスクリーンに映し出される没入型映像体験が特徴である。
この映像体験は、東京工業大学(現東京科学大学)地球生命研究所の関根康人教授が監修しており、古代生物の実際の化石データやNASAの画像などがもととなっている。科学的知見に基づいた壮大な物語は、技術のより広範な科学的、哲学的意義について考えるきっかけを与えるかもしれない。
未来的な生命体である「ナナ(CV.早見沙織さん)」と「ビビ(CV.花江夏樹さん)」がナビゲーターを務め、深海で生まれたとされる生命が、どのように海全体、そして陸へと広がっていったのか、その壮大な物語が繰り広げられる。
三菱未来館
■会場エリア:東ゲートゾーン
■運営時間:9:00~21:00
■万博公式サイト:https://www.expo2025.or.jp/domestic-pv/mitsubishi/
■パビリオン公式サイト:https://www.mitsubishi.com/ja/expo2025/
【パナソニックグループパビリオン「ノモの国」】五感で解き放つ、未来技術の可能性
パナソニックグループパビリオン「ノモの国」は、来場者自身の「ココロ」が映し出される不思議な国を舞台にしたパビリオンだ。
「Unlock体験」をテーマに、光、音、風、触覚などを通じて感覚を刺激する展示が展開される。パビリオンの「大地」エリアでは、ペロブスカイト太陽電池(発電するガラス)、生分解性セルロースファイバー、バイオセンサリードームなど、持続可能で革新的な技術が紹介される。具体的な未来志向の技術を見ることで、より持続可能で技術的に進んだ未来に貢献する意欲を高めることができるかもしれない。
パナソニックグループパビリオン「ノモの国」
■会場エリア:東ゲートゾーン
■運営時間:9:30~21:00
■万博公式サイト:https://www.expo2025.or.jp/domestic-pv/panasonic/
■パビリオン公式サイト:https://the-land-of-nomo.panasonic/
大阪・関西万博は、ITエンジニアにとって、最新技術を学び、キャリアについて考え、そしてテクノロジーの進歩した未来を思い描くための、またとないチャンスだ。今回ご紹介したパビリオン以外にも、多くの魅力的な展示がされている。ぜひ現地で体感してほしい。
企画・編集/エンジニアtype編集部
※各パビリオンの情報は2025年5月1日現在のものです。最新情報は万博公式サイトでご確認ください