革新創出に挑み時代を見据えたイノベーションの創出を目指す「第2回沖縄イノベーションカンファレンス開催」
スタートアップを軸に、沖縄からのイノベーション創出を探る「第2回沖縄イノベーションカンファレンス」が、那覇市の那覇オーパ内「O2 OKINAWA OFFICE」で開催されました。 「発掘」「連携」「交流」をテーマに、沖縄に眠る多様なリソースを結集し、次の時代を見据えたイノベーションの創出を目指す取り組みです。 県内外のスタートアップや支援機関が一堂に会し、沖縄の持つ可能性を最大限に引き出すための議論が交わされました。 さらに北海道との交流セッションも実現し、地方発イノベーションの可能性を探り、活発な意見が飛び交いました。
総務副大臣、沖縄発のイノベーション創出に期待
カンファレンス冒頭、阿達雅史・総務副大臣はビデオメッセージで、沖縄を起点とした地方創生への期待を示しました。 阿達副大臣は「地方の未来を作り、地方を守る。地方こそ成長の主役」との考えから「地方創生2.0」と名付けた新たな取り組みをスタートさせたことを説明。地方創生の実現に向けて「デジタルや新技術を徹底して活用する」必要性を強調し、その具体的な方策として、スタートアップ企業との連携を挙げました。 沖縄について「魅力的なヒト、モノ、コトがある」と評価した上で、「スタートアップの力で沖縄から地方の将来の可能性を広げてください」と呼びかけました。
環境副大臣は沖縄と北海道、両地域の発展に期待
同じくビデオメッセージを寄せた中田宏・内閣府副大臣兼環境副大臣は今回のカンファレンスで沖縄県と北海道のコラボレーションが行われることを念頭に、両地域の魅力と新たな価値創造への期待を示しました。 また、観光地としての両地域の魅力について「『沖縄に行く?』『北海道に行く?』という一言で、それぞれ皆、ときめくものがある」と高く評価。 その上で「『なるほど!(これは)沖縄だから(できるんだ)』と思わせる魅力を今回のカンファレンスで高めていただき、新たなビジネスにつながることを心から祈念しています」と激励しました。
「市場分析より自己分析」 門間氏、海外展開のリアルを語る
企業の海外進出では、市場分析やリスク評価といった基本的な準備以上に、「自己分析」が成功を左右する―。大手IT企業に勤める門間純一氏はキーノートスピーチで、豊富な実務経験を基にこう指摘しました。 門間氏はまず、大手企業が支配する市場に安易に参入するのではなく、自社の現状を正確に把握した上で、スタートアップ企業でも価値を提供できるニッチ市場を見つけることが重要だと説明しました。 知的財産の保護も重要な要素として強調しました。 「うまくいき始めると必ず競合他社が参入してきます。特許を取得していれば、ある程度、他社の参入を防御できるので特許を必ず取っておく必要がある」と指南しました。
さらに、企業文化の変化への対応も指摘しました。特にダイバーシティ(多様性)については、「AIによる翻訳ツールの進化で、英語を話せる人材を雇う必要はなくなるかもしれない。むしろ、異なる文化や考え方を理解できる柔軟な人材が今後は必要になる」と見通しを示しました。 最後に、門間氏は「ドン・キホーテ」の物語を引き合いに出して「企業の視点で読むと、会社の理想と現実、狂気と平常心などいろんなことが重なって会社は運営されていると思える。物語の中のドン・キホーテにならないよう、会社を発起したときの理念を忘れず、海外に進出して事業を大きくしていってほしい」と呼びかけました。
北海道と沖縄のスタートアップの現在地
続くセッションでは、北海道と沖縄県の両地域のスタートアップのプレイヤーとサポーターが登壇し、「『北海道×沖縄』スタートアップと新規事業のローカルtoローカル」と題して、熱いパネルディスカッションを繰り広げました。
運転代行のDXで地域課題解決へ Alpaca.Labの挑戦
この日のカンファレンスでは、北海道文化放送の人気番組の特別収録「BOSS TALK in 沖縄」が行われました。 一人目のゲストは、運転代行配車プラットフォームを手がける株式会社Alpaca.Labの代表取締役、棚原生磨氏。モデレーターを務めた同局の廣岡俊光アナウンサーとの対話を通じて、起業への思いと将来展望を語りました。 2018年に創業したAlpaca.Labは、AIを活用した運転代行配車プラットフォーム「AIRCLE(エアクル)」を開発・運営しています。棚原氏は起業の背景について「社会課題解決のビジネスモデルを作りたかった」と説明。運転代行業界を選んだ理由として、「20年前に法律ができた比較的若い市場で、ルールメイキングが確立されていないためにいわゆる貧困ビジネスになりかけていました」と問題点を挙げ、業務の非効率性や人手不足といった課題に着目したと語りました。
特に沖縄を拠点とした理由については、「全国に約8000ある運転代行業者のうち、沖縄に約700業者が集中している一大市場です」と説明。 「車社会である上に公共交通インフラが少なく、夜遅くまで飲む習慣がある」という地域特性が、サービスの必要性を高めていると分析しました。 同社が開発したアプリは、タクシーの配車アプリと同様の手軽さが特徴で、待ち時間を平均7分に短縮することに成功しました。 「運転代行を、お酒を飲んだときだけのサービスではなく、日常生活に溶け込んだインフラにしたい」と棚原氏は今後の展望を語りました。
趣味から始まったシェアリングサービス、URKATAが描くアウトドアの未来像
「BOSS TALK in 沖縄」の2人目のゲストは、キャンプ用品のシェアリングサービス「ソトリスト」などを手掛ける株式会社URAKATAの代表・山田慎也氏。アウトドア事業を通じた地域活性化への思いを語りました。 もともとウェブサイト制作やデジタルマーケティングを手がけていた同社が、2020年からキャンプ用品のシェアリングサービスを始めたのは意外な理由からでした。「スタートアップは社会課題の解決から始まることが多いですが、私たちは社員全員の共通の趣味だったキャンプから事業を発想しました」と山田氏は振り返ります。 キャンプを始めようとする人々が直面する高額な初期投資の問題に着目し、使われていない用品を有効活用するサービスを考案したといいます。
「大人が好奇心を持ち続け、思い切り人生を楽しめる社会にしたい」という思いが、事業の原動力になっているといいます。沖縄の気候は一年を通してキャンプに適しており、その特性を活かしたサービス展開を進めています。 今後は単なるシェアリングサービスにとどまらず、使われなくなった施設の利活用も含めた地域活性化への貢献を視野に入れていると展望を示しました。 山田氏はこう語って、トークを締めくくりました。「事業を通して、アウトドアの体験価値を再定義していきたいです」
北海道と沖縄、地域特性を活かしたスタートアップ支援の現在
「BOSS TALK in 沖縄」の特別収録を締めくくる「スタートアップサポータートーク」には、スタートアップを支援している株式会社D2 Garage代表取締役兼株式会社デジタルガレージ執行役員の佐々木智也氏とフォーシーズ株式会社代表取締役CEOの豊里健一郎氏が登壇しました。 両氏は北海道と沖縄それぞれの地域におけるスタートアップエコシステムの現状と展望を語り合いました。 佐々木氏は北海道の強みとして、一次産業との連携から生まれるイノベーションを挙げました。 「漁師の海難事故を防ぐ見守りサービスや酪農から生まれた生ゴミ処理技術など、地域の特性を活かしたスタートアップが生まれている」と事例を説明しました。
一方、豊里氏は沖縄の特徴として、アジアとの近接性を活かしたグローバル展開の可能性を強調します。「台湾などアジアのスタートアップと連携し、日本市場への展開支援を行うハブとしての役割を担える」と語りました。 資金調達の面では、沖縄のスタートアップ全体で2023年に40億円、2024年に78億円を達成するなど、エコシステムの成長が見られると、豊里氏は現状を説明します。
両氏は地域発のスタートアップが持続的に成長していくためには、投資によって得られたリターンを地域に還流させ、次世代の起業家を支援する循環の仕組みづくりが重要だと強調しました。 最後に、佐々木氏は「外貨を稼ぐために外に飛び出さないと、将来、子どもたちが食べていけなくなる。海外展開を考える企業に自分の失敗体験を伝えていきたい」と意欲を語りました。豊里氏は「アジアと日本を結ぶ架け橋となるスタートアップの支援者になりたい」と締めくくりました。 熱気を帯び4時間半に及んだ沖縄イノベーションカンファレンス。