半永久的なおむつ…医療的ケア必要な子どもたちの実情「知ってもらう」プロジェクト
重い障害や医療的なケアが必要な子どもの中には、大きくなってもおむつが欠かせない人もいます。
こうした半永久的に続くおむつが、家計の負担となっている実情を知ってほしいと支援の活動が始まっています。
連載「じぶんごとニュース」
1枚約100円を多いと6~7回交換
北海道・恵庭市に住む、7人家族の武田さんです。
5人きょうだいの長女で高校1年の梓希さんは、先天性の染色体異常のため、ひとりで歩くことや食べることなど生活のすべてで介助が必要です。
コミュニケーションも、思うようにはとれません。
母の栄利(えり)さんは「自分が障害ある子を育てること、誰もがそうだと思うんですけど想像していなかった」と話します。
しかし、待望の第一子の妊娠。
「待望の子どもだったので、夫とは、『お嫁に行く可能性というのが少し下がったくらいだね』と話していたんです。ただただ『かわいい』で育ててきた」
武田さんの家のクローゼットには、生後3カ月の赤ちゃん用のおむつに加え、少し大きめのおむつがいっぱいに収納されていました。
梓希さんはトイレも自分1人では出来ないため、おむつを履いています。
「終わりがみえるはずのおむつがずっとだなあって。パンツとかにもしてみるけど、やっぱり意思疎通がなかなか難しい」
1枚100円前後の、新生児用より大きいおむつは毎日3回、多い時で6~7回交換します。
生理のときは、少し交換が多くなったり…女の子ならではの事情もありました。
恵庭市の場合、月8858円を上限とした助成制度もありますが、決められた量販店で購入しなければならないなど制約が多いのが事実です。
武田さん家族は、上限を超えた分のおむつ代に加え「おしりふき」や「尿とりパッド」などを自己負担しています。
少しでも、家計の負担を減らすために…中におむつよりも1枚あたりが安い「尿取りパッド」をしいて、そのパッドを交換するかたちをとっているということです。## ももの皮プロジェクトとは
札幌市清田区にある障害のある子どもたちを支援する施設・清田リハビリセンター(一般社団法人あしすと)では、おむつにかかる費用が家計の負担になることを知ってほしいと、ある取り組みを始めました。
その名も「ももの皮プロジェクト」。
「ももの皮」はおしりを「もも」にたとえ、それを包む「皮」、つまり「おむつ」という意味です。
施設を運営する法人は、障害児のいる家庭のおむつの負担を減らそうとクラウドファンディングも実施しています。
松村順子センター長は「健常者の人だとある程度の年齢になったらかからなくなってくるものですが、大人になっても必要な方がたくさんいるので、そこをお手伝いできたらなという思い」と説明します。
金銭だけじゃない、知ってもらうことの意味
3歳9か月になる日茉李ちゃんは、1歳11か月のとき、突然難病を発症し重い身体障害が残りました。
お母さんは、当時のことを「身体的にも、知的にも、新生児の赤ちゃんと同じ状態だったので、受け入れるとかもちろん無理だった。全部やっていくしかなくて、壁にぶつかるたびに考えていくしかない毎日だった」と振り返ります。
「おむつに関することも、こんなにいっぱい買わなきゃいけないなんて想像していなかった」
札幌市も、月に6500円以内のおむつの助成があります。
しかし、この金額は2006年から固定されたまま。
昨今の物価高の状況もあり、助成費の引き上げを求める声も上がっているといいます。
日茉李ちゃんのお友だちは、おむつが外れる子も増えてきている年頃。
「そんな中うちだけおむつだなって。うちの子は障害的にも自分でトイレするとか、おしっこしたいよとか意思を示すこともまだまだないので、ずっとまだまだおむつなんだろうなって」
我が子とまわりの子の違いに戸惑いもあるなか、こうした取り組みは心強いとお母さんはいいます。
「私も、こどもが病気になるまで知らなかったことがいっぱいある。おむつがきっかけのプロジェクトですけど、おむつが必要な子ってどういう生活をしているのかなって、どういう体の状態なのかなって、知りたいなと思ってもらえたらすごくいいなって思います」
「ももの皮プロジェクト」では、2025年6月30日までクラウドファンディングを実施しています。
こうした金銭的な支援にとどまらず、おむつから障害児に対する理解や関心を広げ、地域で支える社会を目指しています。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年5月13日)の情報に基づきます。