「また続かなかった……」を卒業!行動が自然に続く3つの方法
「健康のために、毎日運動をしましょう!」このように言われて、本当に運動を習慣化できる人はどのくらいいるでしょうか?「確かにそうだ」と納得するものの、三日坊主になってしまう人のほうが多いはずです。運動や勉強、早起きなど、続けようと思ってもなかなか続けられないのが現実。とはいえ、習慣化できないのは意志が弱いからでもやる気がないからでもありません。
本記事では、三日坊主になってしまう本当の原因と、習慣化するために意識したいポイントをまとめました。
三日坊主になってしまう原因
何か新しいことを始めても、三日坊主で終わってしまう――その背景には、ふたつの理由があります。
「習慣引力」の影響
出張先の土地や新しい職場など、普段と違う環境に疲れた経験はないでしょうか。習慣も同じように、「いつもと違う」からこそ定着しない可能性があります。
習慣化コンサルタントの古川武士さんによると「人間には『新しい変化に抵抗し、いつも通りを維持しよう』とする本能がある」そうです。私たちは本能的に「変化は脅威で、いつも通りが安全で安心」と認識しているため、新しい習慣を取り入れようとすると心や体が抵抗してしまいます。*1
古川さんはこれを「習慣引力」と呼び、三日坊主の原因だとしています。解決方法は、一定の時間をかけて「当たり前に続く状態に導く」こと。身につけたい習慣の種類によって、必要な時間は異なります。*1
行動習慣:1カ月
勉強、読書、日記、節約など身体習慣:3カ月
ダイエット、運動、早起きなど、身体のリズムに関わる習慣思考習慣:6カ月
ポジティブ思考、論理的思考力などの考え方
三日坊主になってしまうのは、意志の力ややる気のせいではありません。習慣引力という本能と上手に付き合って、じっくりと時間をかける必要があるのです。特にもともとの性格や考えと向き合うような思考習慣は、より時間がかかります。「いつも三日坊主で終わって何も続かない」と落ち込む必要はなく、定着するまでにはある程度の時間が必要だということを理解しておくのも重要です。
完璧主義
習慣化できないもうひとつの原因は、完璧を求めすぎること。「サボってはいけない」「手を抜いてはいけない」と自分を追い込み、行動のハードルを高くしてしまうのです。
前出の古川さんは、継続できない人の特徴として「0点か100点かでしか評価できない極端な完璧主義者」を挙げています。「行動するときに100点にしようと強烈なプレッシャーを感じて、動きが鈍くなってしまう」ほか、「1、2日続けられないときがあると、自己嫌悪に陥り諦めやすい」という傾向があるそうです。*2
たとえば「毎日10km走る」と決めた場合、仕事で疲れている日や帰宅が遅い日は難しいでしょう。それでも「必ず10km走らなければ」「1日も休んではいけない」と考えると、気持ちの負担が大きくなり、続けることが苦痛になってしまいます。
大切なのは、「5kmでもいい」「1日休んでも次の日に再開すればいい」と柔軟に考えること。内容の完璧さよりも、続けることを優先しましょう。
習慣化するための3つのコツ
ここからは、習慣を定着させるためのポイントを3つに分けてご紹介します。
「ベビーステップ」から始める
「10km走る」「毎日日記を1ページ書く」など、やる気のあるときに立てた目標はハードルが高くなりがちです。三日後には「面倒だな」と感じてしまうような行動は定着しにくいため、まずは簡単なことから始めましょう。
この考え方を「ベビーステップ」と言います。古川さんによると「なにかをはじめるときに赤ちゃんのような小さな一歩から踏み出すこと」を指します。*2
「行動を『0』から『1』にするのには膨大なエネルギーが必要ですが、『1』を『2』や『3』にするのは、さほど力がいらない」という古川さん。*2
つまり、どんなに小さくても最初の一歩さえ踏み出してしまえば、そこから行動を増やしたり広げたりするのは比較的簡単なのです。たとえば「10km走る」ではなく、「家の周りを歩く」という簡単な目標にしてみたり、日記も1ページではなく1行からはじめて、慣れてきたら少しずつ増やしてみたりするとよいでしょう。
また、「継続のためには初動のハードルを下げてでも行動をゼロにしない」ことも大切だと、古川さんは述べています。*2
一度行動をやめて「0」にしてしまうと、また「1」に戻すのが大変です。そのため、「運動靴を履いただけ」「日記帳を開いて読み返すだけ」のように、「そんなこと?」といった小さな行動でも大丈夫。どんなに小さくても“毎日ゼロにしない”ことが、習慣を育てるコツなのです。
「アンカリング」を活用する
忙しい毎日に、新たな習慣を組み込むのは意外と難しいものです。いつ、どこでやるかが定まらず、なんとなくやらなくなってしまう可能性もあります。
そんなときは「すでに習慣化していることの直後に、『新しく習慣化したいこと』をくっつけてしまえばいい」。このように主張するのは、目標実現の専門家・メンタルコーチの大平信孝さんです。*3
これは心理学用語で「アンカリング(条件付け)」と呼ばれる方法で、「すでに習慣化していることの勢いを借りて行動を開始できるのでうまくいきやすい」といいます。*3
確かに、食事や歯磨き、通勤、お風呂などはすでにルーティン化している人がほとんどのはず。そこに新しい行動を組み込み、“ついで”にやることで定着をはかります。たとえば、次のようなアンカリングができそうです。
通勤電車に乗ったら読書をする 湯船に浸かっているあいだ、英単語を5つ覚える 歯磨きをしながらスクワットを30回する
「記録(見える化)」する
目標を立てたときはやる気に満ちあふれているものの、習慣化するまでに時間がかかるとモチベーションが低くなりがち。継続の原動力としておすすめなのが、「記録」です。
習慣や意思決定についての著書をもつジェームズ・クリアさんは「望ましい結果が現れるまでには、しばしば時間がかかる」として、「正しい道を進んでいることを示す、即時のフィードバックが必要」だと述べています。そのフィードバックこそ記録であり、3つのメリットがあるとクリアさんはいいます。*4
1.行動を思い出させる視覚的な合図を作成します。
2.自分がどれだけ進歩しているかを目にすると、モチベーションが上がります。
3.その瞬間の成功を記録すると満足感が得られます。
つまり、行動の継続を“見える化”することで忘れないようにしつつ、「今日もできた」「記録を更新したい」というモチベーションにつなげるのです。
クリアさんは記録の方法として「カレンダーを用意し、習慣を続けた日にチェックマークを付けること」をすすめています。*4 このほか、アプリを使ったり、手帳にマークやシールをつけたりしてもよいでしょう。習慣化を手助けする、「ハビットトラッカー」のテンプレートをダウンロードしてみるのもひとつの手です。やりやすい方法で記録をつけて、習慣が定着するまでのモチベーション維持に活かしてください。
3つのキーワードで三日坊主から脱却!
最後にもう一度、習慣化に効果的な3つのキーワードをおさらいします。
1.ベビーステップ
2.アンカリング
3.記録(見える化)
3つとも、これから何かを習慣化したい人はもちろん、「何をやっても続かない」という人にもぜひ実践していただきたい方法です。今回ご紹介したキーワードを意識すれば、やる気に頼ることなく行動を続けられるようになるはず。
勉強や日記、ダイエットなど様々な行動に応用できるので、まずは自分が習慣化したい物事にあてはめたらどんなふうに実践できるか、計画を立ててみるのもおすすめです。三日坊主から脱却して、理想の自分に近づきましょう。
参考文献
*1 LIFE HACKER|なぜ三日坊主になるの? 無理なく習慣化できる行動の組み立て方・完全ガイド
*2 古川武士(2019),『理想の人生をつくる習慣化大全』, ディスカヴァー・トゥエンティワン
*3 東洋経済オンライン|三日坊主は卒業!「簡単に」行動を習慣化する方法
*4 JAMES CLEAR|The Ultimate Habit Tracker Guide: Why and How to Track Your Habits
文・写真:藤真唯