65歳雇用義務化時代の新たな課題 認知症を学ぶ三谷産業のセミナーに社員626人が参加
三谷産業(石川県金沢市)は9月19日、テオリア・テクノロジーズ(東京都千代田区)と共同で、「認知症の世界と、自身の脳の健康を考える」と題した社内セミナーを開催したと発表した。
社員が認知症への理解を深めるとともに、認知症を身近な問題として捉えるきっかけをつくることを目的とした。
実体験や動画を通じて、認知症への理解を深める
今回のセミナーの内容は、以下の通り。
・三谷産業の事例紹介三谷産業の元役員が認知症を発症した際の体験を、一緒に勤務していた社員が語るインタビュー動画を放映。
・アニメーション動画の視聴、認知機能の低下が引き起こすトラブルを推理するワークショップ教材には特定非営利活動法人イシュープラスデザイン(東京都文京区)が制作した書籍『認知症世界の歩き方』を使用。認知症のある人の世界を旅するようにわかりやすく描いた同書籍を題材に、書籍内のイラストをアニメーション化して、教材とした。
・講演東京都健康長寿医療センター副院長の岩田淳氏監修の内容を基に、テオリア社員より認知機能維持に役立つ知識や、認知機能の低下に備えるための知識について解説した。
三谷産業は、視覚的な手がかりを通じて認知症への理解を深め、認知症に対する偏見や誤解の軽減をはかることが目的の一つであると説明。勉強会を通じて、認知症の当事者と支援者が円滑にコミュニケーションをとるためには、認知機能の低下が引き起こす現象への理解が不可欠であることを強調した。
626人が参加、9割以上が認知症「関係ある」と回答
同セミナーは7月から8月にかけて全3回開催された。同社の国内グループ会社社員のうち40歳以上を受講対象とし、対象者の約8割にあたる626人が参加。
セミナー実施後のアンケートでは、「認知症は『自分にも関係があること』と感じたか」という問いに対して、参加者の90%以上が関係あることと感じた(「とても感じた」「ある程度感じた」の合計)と回答した。
また、参加者からは以下のようなコメントが寄せられた。
・認知症は記憶障害が中心というイメージがあったが、実際にはさまざまな原因や症例があることが理解できた
・認知症のある方に対して「何が困難なのか」に耳を傾けることが大切であるという考え方へと変わった
同社はテオリアが提供する研修プログラムを採用し、社員の認知症理解促進に取り組んでいる。8月には、脳の健康度チェックを行う「そなえるパッケージ」を導入。セミナーと併せて社員の意識啓発や行動変容を後押ししてきた。
「65歳までの雇用確保完全義務化」に伴う新たな課題
同社が今回のセミナーを実施した背景には、社会的な要請と同社での経験の2つの要因があるという。
2021年4月の改正高年齢者雇用安定法施行により、企業には70歳までの雇用確保への努力義務が課され、さらに2025年4月からは65歳までの雇用確保が完全義務化された。
法改正を受けて、社員の平均年齢上昇に伴い、認知機能の低下が業務パフォーマンスに与える影響が、新たな課題となっている。
加えて、かつて同社の役員が認知症を発症した事例があり、当時を知る社員のインタビューを動画で紹介するなど、社内の実体験を踏まえた学びにより、当事者意識の醸成をはかる機会とした。
同社では、今後も「社員が健康に長く活躍し続けられる社会」の実現に力を入れていくとしている。
今回の発表の詳細は、同社の公式リリースで確認できる。