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川虫愛に溢れるWebサイト<An Artless Riverside ​川虫館>オープン 名を知るは愛の始まり?

サカナト

An Artless Riverside ​川虫館 トップ写真(提供:An Artless Riverside ​川虫館)

2025年元日、川虫愛にあふれるウェブサイト「An Artless Riverside​川虫館」が公開されました。

川虫に特化したウェブサイトとしては「日本一掲載点数が多い」といい、何よりも写真が美しいのが特長。管理人のhisame氏は「世界一美しい自信があります」と語りますが、その言葉に偽りなし。

管理人のhisame氏は、東北に拠点を置くアマチュアの研究者で、音楽活動にも取り組む多才な人物。

このサイトを通じて、川虫の美しさやかっこかわいさに触れてほしいと強く思うのです。

主な川虫は3種類

一般に「川虫」とはあまり聞き馴染みがないかもしれません。

「川虫」と検索すると、上位に出てくるのは釣り関係のサイトです。釣り師であれば、「キンパク」「オニチョロ」「クロカワムシ」なんて名前で種類を把握していることでしょう。

主な川虫は、「カゲロウ」「カワゲラ」「トビケラ」の3グループ の幼虫。「An Artless Riverside​川虫館」の情報によると、2024年の時点でカゲロウは13科約160種 、カワゲラは9科約220種 、トビケラは29科で、約600種が国内で確認されているそうです。

「カゲロウ」「カワゲラ」「トビケラ」(提供:An Artless Riverside ​川虫館)

川虫の研究は発展途上で、新種の解明・報告によって年々種数も増えているのだとか。

また、同サイトの解説によれば、カゲロウやカワゲラは原始的な昆虫で、蛹になることなく成虫に成長。トビケラの幼虫は巣を作るのが特徴で、蛹を経て成虫に。成虫はガに似た姿で、勘違いしている人も多いかもしれません。

環境の指標生物

川虫は、環境指標生物としても機能しています。

環境指標生物とは、生息できる環境条件が限られていることから、生息数から水質を推し量ることができる重要な生き物のことです。

管理人のhisame氏は、サイトの巻頭言で次のように述べています。少し長くなりますが引用します。

「川虫たちは川という身近な生態系を形作るうえでの主要な構成員であり、水と陸との間の物質循環において大切な役割を担っています。

例えば川底の石の表面に生える付着藻類が異常に増殖して川から異臭が発生するのを防いだり、より大きな生き物たち(例えば魚や鳥)の餌になることで食物連鎖の上位生物が生きていくための土台になったりと、川虫たちは我々の普段の生活の意識からは遠い場所(しかし実際には我々の生活圏のすぐそば)で、ひっそりと活躍しています。

川虫がいなくなれば、イワナもヤマメもウナギも川エビも、我々の食卓に並ぶことはなくなるでしょう」(An Artless Riverside ​川虫館冒頭の文章より抜粋)

ひっそりと活躍している」とは、川虫を表すのにぴったりの言葉ではないでしょうか。

環境省、国交省が振興する水生生物調査では、水質階級I「きれいな水」、水質階級II「ややきれいな水」の指標生物になっている川虫も多くいるのです。

かっこよくてかわいい川虫たちに魅了される

難しいことはさておき、川虫はかっこいい、そしてかわいい。An Artless Riverside川虫館は、改めてそれを教えてくれるサイトです。

現在、カゲロウ12科、カワゲラ9科、トビケラ25科、計約220種の写真が掲載されており、その美しさにはため息しか出ません。

ノギカワゲラ(提供:An Artless Riverside ​川虫館)

hisame氏は、「生きた川虫の写真」に徹底的にこだわってきたといいます。

氏によれば、これまでの図鑑やサイトでは野外撮影や液浸標本の写真がほとんどで、生きた状態のものを、撮影設備の整った屋内で鮮明に写した写真は少なかったそうです。

「An Artless Riverside川虫館」に掲載されている個体写真は、扱いの難しいデリケートな川虫を屋内で生きたまま撮影したもの。川虫は酸欠や高温ですぐ死んでしまうそうですから、そんな写真撮影がいかに大変かは推して知るべし。

体毛や体表の模様のような細部までしっかりと見ることができるうえ、種によっては、ドアップの写真や横からのアングルのもの、環境中の姿のものなどもあり、見応えはたっぷり。

また、研究者らしい「観察メモ」や生息環境についての情報など、読み物としてもとても面白いのです。

自然を見る目が変わる

このサイトを見ていると、川虫に対する解像度が高まるような気がしてきます。

水辺の環境についてもまとめられている(提供:An Artless Riverside ​川虫館)

hisame氏は、「川虫は生態学の教科書のようなもの」と述べています。

「川虫を学ぶ過程には水辺の生態系を知るうえでの重要な学びや発見がたくさんあるため、川虫は生態学の教科書のようなものだと思っています。

川虫を深く観察することで、複雑で巧妙な水辺の生態系の細部がよりはっきりと理解できるようになり、身の周りの何気ない自然を見る目が大きく変わるのです」(「An Artless Riverside ​川虫館」より引用)

「名を知るは愛の始まり」とは植物の世界ではよく言われる言葉ですが、水生昆虫だってそれは同じ。名を知り、姿をよくよく知れば、愛着も増してきますよ。

(サカナトライター:土屋ジビエ)

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