【格安イヤホン探訪】「音が悪い」と言われる、ANA(全日空)の国内線カナル型イヤホンの音を聞いてみた率直な感想
格安有線イヤホンの比較から、格安無線イヤホンに移行したこのシリーズではあるが、1つだけ有線イヤホンについてお伝えさせて頂こう。というのは、今回のイヤホンは読者からわざわざお送り頂いたものだからだ。
その製品は市販品ではなく、全日空(ANA)の国内線機内で配布されているものである。その音色をたしかめて製品の特徴を紹介したい。
・ANAのイヤホン
お送り頂いた方は製品について「素人の自分でも酷い音質だなと思う一品」と伝えてくれた。良い音だから聞いて欲しいというのではなく、悪い音だからという理由が非常に興味深い。私はその説明を見て俄然聞いてみたくなってしまった。
ANAでは2017年からイヤホンの配布を行っている。それ以前はクリーニングした後に製品の外部点検をして再利用していたそうなのだが、内部の故障に気づかないケースがあったために、配布するようになったのだとか。
製品自体はひと昔前の100均クオリティといったところだろうか。見た目だけならセリアの110円の製品と同等かもしれない。
中を覗くと、ベンツのエンブレムみたいなプラスチックパーツが入っている。このフィルターは安物の象徴ではあるが、侮ってはいけない。実際セリアの「人の声が聞き取りやすいイヤホン」は音が良かったのだから。
装着感は決して良いとは言い難い。イヤーピースがしょぼいので、頼りない着け心地だ。
・聞き比べ
聞き比べをするまでもないかもしれないけど、一応以前と同じように比較してみたいと思う。使用楽曲は映画『アマデウス』のサウンドトラックより、「第一楽章(交響曲 第25番 ト短調より K.183)」。作曲はモーツァルト、指揮ネビル・マリナー、演奏はアカデミー室内管弦楽団である。
まずは永年エリートの「ハイユニット HSE-A1000」から聞いてみよう。
アマデウスは、モーツァルトの半生を題材にした同名の舞台の映画化作品、1985年に日本でも公開(米公開:1984年)された。この曲を選んだ理由は、最近たまたまクラシック音楽を聞く機会があって、懐かしくなって自分の知っている範囲のクラシックを漁っていたところ、アマデウスを思い出したのだ。
クラシックには詳しくないので楽曲については割愛させて頂く。ハイユニットで聞くと、繊細な弦楽器、弾けるような金管楽器、それらの幅広い音色をキレイに再現している。
一方、ANAのイヤホンでも聞いてみよう。
聞く前から多少の想像はついていたけど、その想像を超えるレベルで音は悪い。2重のダンボール箱にラジカセを突っ込んで、大音量で音楽を再生したかのようなこもり具合。高音は大幅にカットされている印象を受ける。
たしかに音は悪い。けど、よく考えると本来コレを使って音を聞く環境は、普通の室内ではない、航空機内だ。かなりの音量のエンジン音がしている中で、コレで音楽を聞いたら、もう少し印象が変わる気がする。
というのは、高音は貧弱だが低音はよく聞こえているのである。機内なら音質の良いイヤホンでも、エンジン音で高音はかき消される可能性もある。
つまり、搭乗中に使うなら音の悪さはそれほど気にならないかもしれない。それを考慮して音の設計がされているのかも?
いずれにしても無料配布のイヤホンに高い性能は望めないので、これくらいで良いのかもしれない。ANAをご利用予定の方は、ぜひ機内と機外でイヤホンの聞こえ方をたしかめて頂きたい。お送り頂き、ありがとうございました。
参考リンク:ANA
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24