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訪問看護で要支援者の自立を支援!介護予防の視点を取り入れた効果的な取り組み

「みんなの介護」ニュース

阿部 洋輔

要支援者に対する訪問看護の役割と重要性

介護予防訪問看護の定義と目的

介護予防訪問看護とは、要支援1および2に認定された高齢者を主な対象とした訪問看護サービスです。看護師が利用者の自宅を訪問し、健康状態の観察や日常生活の支援を行います。

このサービスの主な目的は、利用者の自立を支え、要介護状態への移行を防ぐことにあります。通常の訪問看護では、医療的なケアを中心に行うことが多いですが、介護予防訪問看護では、日常生活の維持や健康管理を重視した支援を行うことが特徴です。

介護予防訪問看護の需要は年々高まっており、介護保険制度における費用額も増加傾向にあります。厚労省によると、2023年度の介護予防訪問看護の費用額は約418億円に達し、2015年度と比較すると約2.2倍に増加しました。

通常の訪問看護においても、2015年度の費用額は約2,014億円であるのに対し、2023年度の費用額は3,788億円となっています。この数字からも、介護予防を含む訪問看護サービスの重要性が高まっていることがわかるでしょう。

なお、訪問看護は医療と介護の一体化が進められる中で、地域包括ケアシステムの要となる機関として期待されています。

特に、要支援者に対する介護予防訪問看護は、自立支援を促し、健康寿命の延伸に貢献する重要なサービスとして位置づけられているのです。

介護予防訪問看護の対象者と利用条件

介護予防訪問看護の主な対象となる要支援の高齢者は、日常生活は概ね自立しているものの、将来的な介護を予防するための支援が必要とされています。

日本訪問看護財団の実態調査で対象者の年齢構成が明らかになっており、無効回答を抜いた割合では、75歳以上が79.3%と最も多く、次いで65~75歳未満が16.6%、40~65歳未満が4.1%の順となっています。このデータからも、主な利用者は高齢者、特に後期高齢者であることが言えるでしょう。

また、介護予防訪問看護は医療保険ではなく、介護保険を利用して提供されるため、利用条件や費用負担が異なります。

介護保険制度において、要支援者が介護予防訪問看護を利用するためには、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所が作成した介護予防サービス計画に基づくサービスを受ける必要があります。

サービス利用時には、主治医の指示書が必要です。訪問看護は主治医の指示に基づき、治療の必要の程度に応じて看護を行う制度であり、医師との連携が不可欠となっています。

このように、医師からの指示に基づき、看護師が適切なケアを提供することで、要支援者の自立した生活を支援していくのです。

介護予防訪問看護で提供されるサービス内容

介護予防訪問看護では、要支援者の自立を促し、要介護状態への移行を防ぐためにさまざまなサービスが提供されます。

利用者の健康管理や生活支援を行うための主なサービス内容は以下の通りです。

健康管理 看護師が利用者の健康状態を定期的にチェックし、血圧や体温の測定を行います。これにより、異常があれば早期に対処することが可能です。 服薬管理 利用者が適切に薬を服用できるようにサポートし、服薬のタイミングや方法について指導を行います。特に高齢者では複数の薬を服用するケースが多く、正確な服薬管理は健康維持に欠かせません。 生活指導 食事や栄養管理、排泄のサポートを通じて、利用者が快適に過ごせるように支援します。また、清潔の保持や褥瘡(床ずれ)の予防・ケアも行います。 リハビリテーション 身体機能の維持・向上を目的としたプログラムを実施します。理学療法士や作業療法士と連携して、日常生活動作の訓練を行うことも可能です。

これらのサービスは、利用者一人ひとりの状態や生活環境に合わせて調整され、個別のニーズに対応した支援が提供されます。

訪問頻度や時間も利用者の状態によって異なりますが、月に数回の訪問で、30分から1時間程度のケアが一般的です。

看護師による専門的な視点からのケアは、単なる生活支援にとどまらず、健康状態の変化の早期発見や適切な対応にもつながります。

このような包括的な支援が、要支援者の生活の質の向上に貢献しているでしょう。

要支援者の自立を促す訪問看護の3つのポイント

生活機能の維持・向上を目指したアプローチ

要支援者の生活機能を維持・向上させるためには、日常生活動作(ADL)や手段的日常生活動作(IADL)の評価が不可欠です。

ADLは食事、入浴、排泄などの基本的な動作を指し、IADLは買いものや家事、金銭管理など、より複雑な動作を含みます。これらの評価を通じて、利用者の自立度を把握し、必要な支援を計画することが重要です。

実際の訪問看護における生活機能支援のアプローチとしては、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士によるリハビリテーションの視点を取り入れた個別プログラムの作成が挙げられます。

例えば、歩行訓練や筋力トレーニングを行うことで、身体機能の向上を図ります。また、生活環境の調整や自助具の使用を促すことで、日常生活の質を向上させることができます。

生活機能の維持・向上には、単に身体機能の改善だけでなく、生活習慣全体を見直すことも大切です。規則正しい食事や睡眠、適度な運動を組み合わせることで、全体的な生活の質の向上につながります。

また、生活の中での小さな成功体験を積み重ねることで、自信を取り戻し、自立への意欲を高めることができるでしょう。

前出の調査によると、介護予防訪問看護において「ADL・IADL・リハビリテーション」は、「薬の管理・服薬」に次いで優先順位の高い看護課題となっています。

これは、要支援者にとって生活機能の維持・向上が、自立支援において極めて重要であることを示しています。

さらに、生活機能の維持・向上には、継続的なモニタリングとフィードバックが必要です。定期的な評価を行い、利用者の状態に合わせてプログラムを調整していくことで、効果的な支援が可能となります。

このようなきめ細かな対応が、要支援者の自立を促し、要介護状態への移行を防ぐ鍵となるでしょう。

訪問看護師は、利用者の日常生活の様子を直接観察できる立場にあり、生活機能の変化にいち早く気づくことができます。

この強みを活かして、利用者一人ひとりに合わせた生活機能の維持・向上のための支援を提供することが求められています。

疾病管理と重症化予防の徹底

慢性疾患を抱える要支援者に対しては、疾病管理と重症化予防が重要な課題です。

看護師は利用者の健康状態を継続的に観察し、異常を早期に発見するための観察ポイントを設定します。具体的には、血圧や体温、体重の変化を定期的にチェックし、症状の変化に敏感になることが求められます。

また、自己管理支援として、要支援者に対して病気の理解を深める教育を行うことも重要です。

利用者が自分の健康状態を把握し、適切な行動を取れるようにすることで、要介護状態への移行を防ぐことができます。

例えば、服薬管理や生活習慣の改善に関する指導を行い、利用者が自らの健康を管理できるようサポートします。

介護予防訪問看護では、利用者の自宅という生活の場で支援を行うことができるため、実際の生活状況に即した指導が可能です。

食事内容の確認や運動習慣の定着など、日常生活に根差した支援を提供することで、慢性疾患の安定した管理を実現できるでしょう。

さらに、異変の早期発見と医療機関との連携も訪問看護の重要な役割です。利用者の状態に変化があった場合、速やかに主治医に報告し、適切な医療介入につなげることで、症状の悪化を防ぎます。

このような予防的なアプローチが、要支援者の健康維持と自立した生活の継続に貢献するのです。

本人の意欲を引き出す動機づけ支援

要支援者の自立を促すためには、本人の意欲を引き出すことも意識するようにしましょう。介護予防訪問看護においては、利用者が自分の生活に対して前向きな姿勢を持てるよう、動機づけ支援を行います。

セルフケア能力の向上支援 自分で薬の管理ができるようになるなど、具体的な自己管理スキルの習得を促し、成功体験を積み重ねます。 回復過程の可視化 バイタルサインの推移や健康状態の改善を一緒に確認し、改善していることを利用者自身に認識してもらうことで、健康維持に向けた意欲や行動を継続しやすくなります。 専門的知識の提供 疾病や健康管理に関する正確な情報を提供し、なぜそのケアが必要なのかを理解してもらうことで、自発的な健康行動を促します。

このように、看護師は利用者と信頼関係を築きながら、心理的な側面からのアプローチも大切にします。

そして、家族や地域の支援者との連携を図りながら、利用者を取り巻く環境全体で意欲を高める雰囲気づくりを行うことも重要です。

介護予防訪問看護における動機づけ支援は、単に身体機能の維持・向上だけでなく、生活全体の質を高め、要支援者が自分らしい生活を取り戻すための鍵となるでしょう。

自立への意欲が高まることで、日常生活においても積極的に行動できるようになり、要介護状態への移行防止につながります。

効果的な介護予防訪問看護の実践に向けて

多職種連携によるチームアプローチの推進

介護予防訪問看護においては、多職種連携によるチームアプローチが効果的です。

特に、ケアマネジャーやほかのサービス提供者との情報共有は、利用者に対する包括的な支援を行ううえで重要な要素となります。

多職種連携は、医師や看護師、リハビリテーション専門職、栄養士など、さまざまな専門家が協力し、利用者のニーズに応じた最適なケアを提供することを目的としています。

介護予防訪問看護において、多職種連携を効果的に行うための取り組みとしては、以下のような活動が挙げられます。

ケアカンファレンスへの積極的な参加 定期的に開催されるケアカンファレンスに参加し、利用者の状態や課題について多職種で情報を共有します。 地域ケア会議への参画 地域全体の課題を把握し、解決策を協議するために地域ケア会議に参加します。地域内での情報交換が促進され、各専門職の知識や経験を活かした支援が可能になります。 サービス担当者会議での看護の視点の提供 医療的な視点から利用者の状態を評価し、他のサービス提供者にも理解できるよう情報を伝えます。 情報共有ツールの活用 連絡ノートやICTを活用し、日々の変化や気づきを迅速に共有します。

チーム内でのコミュニケーションを円滑にするためには、フラットな関係性が求められます。各職種が互いに専門性を尊重し、意見を出しあうことで、より良いケアを実現することができます。

訪問看護師は医療と介護の橋渡し役として、両方の視点を持ちながら、チーム全体のコーディネイトを担うことも重要です。

このような多職種連携によるチームアプローチは、要支援者の生活の質を向上させる重要な役割を果たします。

さらに、早期に状態の変化を把握し、適切な対応につなげることで、要介護状態への移行を防ぐ介護予防にも大きく貢献するでしょう。

エビデンスに基づいた評価指標の活用

介護予防訪問看護における効果を測定するためには、エビデンスに基づいた評価指標の活用が不可欠です。具体的には、効果測定のための評価尺度を選定し、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を用いた継続的な質の向上を図ることが重要です。

まず、評価尺度の選定においては、利用者のニーズや介護予防の目的に応じた指標を選ぶことが求められます。

例えば、身体機能の改善を測るための指標や、心理的な健康状態を評価するための尺度など、複数の指標を組み合わせることで、より包括的な評価が可能となります。

日本訪問看護財団の調査によれば、看護課題を評価する際の期間は「1ヵ月ごと」が48.4%と最も多く、「1~3ヵ月ごと」が22.4%となっています。定期的な評価を行うことで、利用者の状態変化を適切に把握できます。

評価のポイントとしては、日常生活における意欲や身体機能の変化、服薬状況など、多面的な観点から利用者の状態を評価します。特に、ADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)の変化は重要な評価指標となります。

PDCAサイクルを活用することで、評価結果に基づいた改善策を迅速に実施することができます。

計画(Plan)に基づいてサービスを提供(Do)し、その結果を評価(Check)し、必要に応じて改善(Act)を行うというサイクルを繰り返すことで、訪問看護の質を継続的に向上させていくことが可能です。

このようなエビデンスに基づいた実践は、要支援者に対する介護予防訪問看護の効果を最大化し、自立支援の実現に寄与するでしょう。

地域資源を活用した社会参加の促進

地域資源を活用した社会参加の促進は、介護予防訪問看護における重要な取り組みの一つです。

訪問看護ステーションが地域の介護予防活動と連携することで、要支援者の社会参加を支え、自立した生活の維持をサポートできます。

実際に、前出の調査によると、各訪問看護ステーションではさまざまな地域活動が行われています。

地域の専門職による健康相談会 閉じこもり予防のためのサロン活動 自治会主催の運動会や夏祭りの救護担当として参加 ボランティア養成講座の開催 理学療法士による健康教室の開催 地域の老人会などでの出前講座

このような活動の中で、社会とのつながりを持ち続けることは、孤立感の解消や生きがいの創出にも寄与し、精神的な健康維持にも効果が期待されます。

さらに、要支援者だけでなく、地域住民全体の健康意識を高めることにもつながるでしょう。生活習慣の見直しや健康管理の意識が向上することで、体調の変化にいち早く気づくことができ、必要な支援にもつなげやすくなるかもしれません。

訪問看護ステーションは医療・介護の専門知識を持った地域の拠点として、単に個別の訪問サービスを提供するだけでなく、地域全体の健康づくりに貢献していくことが求められているのです。

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