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蹴球(サッカー)が観光資源|スポーツツーリズムを加速させる藤枝市×ナビタイムの取り組み

Sports

サッカー王国・静岡県。なかでも藤枝市は、藤枝東高校出身の中山雅史さん、長谷部誠さんなど、多くの日本サッカーの歴史を彩る選手・指導者を輩出しています。

そんな藤枝市は、観光資源としても“サッカー”を中心に据えています。サッカー大会や合宿の誘致、J2に所属する藤枝MYFCの活躍など、「サッカーで人が集まる」状況を多くの場面で作ってきましたが、さらなる発展および観光における課題の解決のためにこのたび観光庁令和6年度「観光DXによる地域経済活性化に関する先進的な観光地の創出に向けた実証事業」の採択を受け、株式会社ナビタイムジャパン(以下、ナビタイム)とともに2024年7月に『蹴球都市藤枝 Next100 スポーツツーリズムプロジェクト』を発足させました。

スポーツがいかにして“観光資源”になるのか?スポーツを通して地域経済を活性化させるその先進的な仕組みとは?藤枝市、藤枝市観光協会、ナビタイムそれぞれの立場からこのプロジェクトへの想いを伺いました。

インタビュー対象

藤枝市観光交流政策課 観光交流政策課長 大久保さん一般社団法人藤枝市観光協会 事務局長 蒔田さん株式会社ナビタイムジャパン スポーツビジネス事業部 部長 山﨑英輝さん
(以下、敬称略)

サッカーのまち・藤枝の歴史

ーー静岡県藤枝市は、なぜ“サッカーのまち”と呼ばれているのですか?

藤枝市役所 大久保)藤枝市は旧東海道の宿場町で、人口約14万人の都市です。Jリーグは昨年30周年を迎えましたが、藤枝市のサッカーはそれ以前から文化として根付き、サッカーを核としたまちづくりを進めてきました。サッカーの持つ教育的、商業的、経済的な価値やサッカーがもたらす交流などを活用する『サッカーのまち藤枝ドリームプラン』を2009年に策定しており、市役所の中にもスポーツ振興課とは別に『サッカーのまち推進課』が部署として存在する、そんなサッカーが突出した全国でもめずらしい都市が藤枝市です

ーーそれほどまでにサッカーが藤枝市に文化として根付いたのはどのような理由があるのでしょうか?

大久保)藤枝市は、今年で“サッカーのまち100周年”になります。100年前の1924年、現在の藤枝東高校(旧志太中学校)の初代校長先生が、サッカーを校技として採用したことから始まります。野球が盛んな時代でしたが、サッカーという競技における特性、たくさんの人数が関わり、自分で考えてプレーをするという面に教育的な価値を感じ、地域に根付かせていきました。
戦前から蒔いたそうした種がきっかけで、藤枝東高校出身の方々がメキシコオリンピックの日本代表として銅メダルを獲得したり、藤枝東高校が全国大会で何度も優勝するなど、高校サッカーを中心にまちが盛り上がり、数多くの日本代表選手、日本サッカー界を代表するような方々を輩出するようになりました。

サッカーをどのように観光に活かすのか?

ーー文化として藤枝市に根付いているサッカーを、どのように観光や経済活性にいかしてきたのでしょうか?

大久保)観光地として有名なスポットは少ない中で、サッカーを中心に合宿や大きな大会の誘致などを通してたくさんの方に藤枝市に来訪していただくような取り組みをしてきました。また、藤枝MYFCもJリーグに加盟し、2023年からJ2に昇格したことで、試合の日にはアウェイサポーターが多く訪れるようにもなりました。

サッカーが大好きな市民なので、サッカー関連で来た方々に対しておもてなしをする精神を皆が持っていて、自治体としてもサッカー観戦に来ると商店街の飲食代が割引になったり、市内の宿泊に助成金を出すなどの仕掛けをしてきました。

ーーサッカーを観光に活かす上での課題はありますか?

大久保)サッカー観戦者にアンケートを取ると、市内の宿泊自体は増えているもののそれ以外どこにも行かずに帰ってしまっている方が非常に多くいらっしゃいました。観光消費額という点でも、近隣の焼津市や島田市などと比べると極端に少ない数字になっています。

せっかく泊まってくれて、市内にもさまざまな魅力があるのに、そこを素通りしてしまう方々がたくさんいらっしゃるのは私たちとしてもショックなことですよね。スポーツを通して人を呼び込むことはできている中で、「スポーツツーリズム」という観点でいくとまだまだ最大化できる余地があるのではないかという想いが、今回の『蹴球都市藤枝 Next100スポーツツーリズムプロジェクト』に繋がっています。

情報を共有し、活用することが第一歩

ーー今回のプロジェクトは、観光庁の採択事業としてナビタイムと共同で進めることになります。ナビタイムでスポーツビジネス事業部を立ち上げられた山﨑さんから見た、藤枝市の印象はいかがでしたか?

ナビタイム 山﨑)藤枝市が「サッカーのまち」だということは知っていました。その上で、自治体や藤枝MYFC、事業者の皆さまが連携体制を構築し、地域活性化に対して積極的に取り組んでいることに大きく驚きました。その一方で、地域活性化を実現するための仕組みや手段という面においてはまだできることがあるのではないかと感じ、少しの工夫で大きな成果を生み出す可能性があると感じていました。

ーーどういった点に可能性があり、今回のプロジェクトではどのようなことに取り組んでいくのでしょうか?

大久保)情報発信の部分がまず一番の課題です。私たち自治体としても、誘致している大会の情報や、Jリーグで多くの方が訪れる予定など、事業者さんに情報共有しているつもりでいました。ですが、実際には「今日たくさんお客さんが来たけれど、なにかイベントあった?」と聞かれることも多々あるのが現状です。

山﨑)私も先日、天皇杯での鹿島アントラーズ戦観戦のために藤枝駅を訪れた際、タクシーの運転手さんから「今日、駅前が混んでいるけど何かあるの?」と聞かれ、地域とのコミュニケーションの必要性を改めて感じました。

大久保)飲食店も、多くの方が来ることを予測し、キャンペーンをしたりアルバイトを多く手配しておけば、商売のチャンスを逃すことなく売上に繋げることができますよね。

お客さんの目線で見ても、「どこに行ったらいいかわからない」という意見も聞きますので、そうした点をナビタイムさんの『ユニタビ』アプリを使って解消しようと考えています。

ーー観光という観点では、そうした現状に対してどのような可能性が広がっているのでしょうか?

山﨑)たとえば沖縄などの観光地では、その日にどのくらいの人が来るのかを予測するために、ホテルや交通等の複数の事業者が連携する必要があります。ただ、藤枝市のような“スポーツ”を中心に観光を考えると、Jリーグのチケット販売枚数、大会の参加人数など大会主催者の保有しているデータを活用するだけで、比較的精度の高い来訪者数の予測を行うことが可能となります。

まずは、大会主催者が保有するデータをしっかりと地域に共有することで、人がまわり、地域経済が活性化するという結果に繋がるのではないかと考えています。

「ユニタビ」を活用した観光DXへの期待

ーー今回のプロジェクトでは、具体的にどのようなことを行うのでしょうか。

山﨑)まずは、地域事業者側の受入体制をいかに整えるかということです。

地域事業者向けのLINE公式アカウントを開設し、藤枝市・ナビタイム側からプッシュ型で、いつ試合・大会があるのか、チケット販売枚数・大会の参加人数、アウェイ観戦客数、宿泊や飲食への影響有無など、詳細なデータや予測を共有します。事業者の方々は、その情報をもとに営業体制を整えたり、クーポンを発行したり、SNSの発信内容を工夫したりして、集客に繋げていっていただければと思っています。

なお、来訪者数の予測などをwebサイトに掲載し、事業者の方々が自分たちで確認する方法も検討したのですが、それだと、情報が届かなかったり、伝達スピードが遅かったりするため、プッシュ型で情報を届けられるLINEを活用することにしました。

ーー地域の多くの事業者さんが一体となって動くためには、たしかにプッシュ型の情報提供があるとしっかりと情報が届いて改善に繋がりますよね。

山﨑)観戦客向けのソリューションとしては、ナビタイムとぴあ株式会社が共同で開発した『ユニタビ』アプリの利用と、藤枝市観光協会さんのサイトを活用します。

ーーこのプロジェクトは、2024年9月から実証事業がスタートしました。観光協会の蒔田さんは、どのような期待をもっているのでしょうか?

観光協会 蒔田)このプロジェクトによってどう変わっていくのだろうというわくわくがすごくあります。『ユニタビ』も各地で活用されていることは知っているものの、この藤枝で皆さんがどのように使ってくれて、どういう形になっていくのか、とても期待感がありますね。

ーー事業者さんがこのプロジェクトをどんどん活用することも、蒔田さんの立場からすると期待する部分なのではないでしょうか。

蒔田)今回のプロジェクトは、地域がひとつになるチャンスだと思っています。いままで自治体・事業者・クラブなどそれぞれが頑張ってやってきましたが、今後長くこの形が続けられるのかだろうか、とどこかで感じているタイミングだった思います。
このプロジェクトがきっかけとなり、「よし、今がチャンスだ」と皆が思って取り組むことができれば、まちの経済がまわり、それぞれの立場で幸せになるような理想の姿を作れるのではないかと思っています。

ーーいままで皆さんが積み上げてきたものを繋げる、さらに火をつけることが“Next100”という点でも大事になりますね。

大久保)こうしたプロジェクトは、持続性が大事になります。今後は事業者側からも「こんなことやりたい!」と多くの声が出てきて、継続的に取り組めるようにしたいですよね。
今年は実証事業という立ち位置の1年間になりますが、その間に持続可能になるような仕掛け、地域の巻き込みを行わなければならないと思っています。

山﨑)Jリーグが目指す地域に根付いたクラブを作るために、もっと観戦する人々の“1日の体験”にフォーカスした情報が多く出てくると良いと思います。『ユニタビ』アプリのコンセプト通り、ユニフォームを着たまま、まちを楽しんでもらう、よりそのまちを好きになってもらうような体験価値を藤枝市さんとも一緒に作っていければと思います。

ーーありがとうございました!

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