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【モリイクエさんの新作CD「OF GHOSTS AND GOBLINS」】 小泉八雲にインスパイアされた楽曲群。強烈に映像を喚起するサウンドスケープ

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は、米ニューヨーク在住の音楽家モリイクエさんの新作CD「OF GHOSTS AND GOBLINS」。焼津市に縁の深い明治時代の作家ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の「Of Ghosts and Goblins (Little Clothbound Classics)」にインスパイアされて出来上がった作品で、プロデューサーはジョン・ゾーンさん。

1977年に米ニューヨークでギタリストのアート・リンゼイさんらとバンド「DNA」を結成し、以後はソロ活動が中心のモリさん。新作発売を契機に来日し、自身も未知の領域が多い、八雲の足跡をたどることにした。焼津の小泉八雲記念館では、巻上公一さん(熱海市)とのトークセッションも行った。

ラップトップと小さなシンセサイザーで作った新作は、怪談で有名な小泉八雲の世界を音で表現しようという試み。「FRAGMENT」(断片)、「A PASSIONAL KARMA」(牡丹燈籠)など具体的な小説を基にした曲、「LAFCADIO'S  GARDEN」など八雲本人をイメージした曲が収められている。

楽譜には書き起こせないような、いわゆる「サウンドスケープ」が中心だが、どの楽曲もそれぞれに違った映像を喚起する。例えば1曲目「FRAGMENT」は約6分をざっと3楽章で構成している。

琴のような音によるヨナ抜き音階のメロディーは月夜が照らす日本庭園を想起させ、残響が心地よいタブラと和太鼓の「バトル」からは、絵巻物に描かれたモノノケがニョキニョキと立ち上がってくるような景色が浮かぶ。“最終楽章”は無機的な電子音に載せた、たおやかな琴のソロが主体。朝方の野点に少しずつ光が差し込んでくるかのようだ。

7曲目「HOUR OF OX」は半ばすぎからの、打楽器音の定位に驚かされる。右手の届きそうな場所、左耳の真横、左斜め前、といったように、キックや金属的な打撃音があちこちから聞こえてくる。これは「癖」になる。サウンドスケープの混沌から、徐々にリズムとハーモニーが立ち上っていく4曲目「THE UNKNOWN」も秀逸。

(は)

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