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【三木卓さん著「鎌倉日記Ⅳ 最終章 2019・5-2023・12」】 中国・満州の体験をパレスチナ・ガザ地区に重ねる

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。今回は、月刊「かまくら春秋」の連載をまとめた三木卓さん著「鎌倉日記Ⅳ 最終章 2019・5-2023・12」(かまくら春秋社)を題材に。
昨年11月18日に88歳で亡くなった三木卓さん(静岡市出身)の身辺雑記。あるいは時評。時に文化エッセー。「最終章」と銘打たれた「日記」は、在りし日の三木さんの語り口がそのまま伝わってくる。

元号が変わった2019年5月号から始まり、亡くなる前の最後の原稿と思われる2023年12月号まで。新型コロナウイルスの感染拡大期であることも相まって、三木さんの移動範囲はとても狭い。身を置いたのは鎌倉のご自宅、病院がほとんどだろう。それなのに、ここで描かれるテーマのなんと幅広く、豊かなことか。

新聞を読み、本を読み、テレビを見て、家族と話す。そして思考する。静岡新聞の連載でお付き合いした経験から言えば、インターネットはほとんど使っていない。かつての記憶とその際の自分の思考を反芻する。そうやって、米大統領選も特殊詐欺も気候変動もロシア軍のウクライナ侵攻も、文章にする。鎌倉の小さなお部屋は、「ドラえもん」のどこでもドアのようだ。三木さんの脳みそを通じて、あらゆる場所に接続できる。

2023年12月号の最終稿には、太平洋戦争中にご自身が中国・満州で経験した教室の風景が克明に描かれている。徹底した皇国主義、暴力をふるう教師、戦争画を強いられる美術の時間、「名誉ある戦死」を強調する授業…。その上で三木さんは、イスラエルから猛攻を受けるパレスチナ・ガザ地区の、特に子どもたちに思いをはせる。荒廃した満州の街をよちよち走っている中国の幼児たちに重ねる。「こどもたちは両者(筆者注:ハマスとイスラエル)の憎悪のなかで放り出されている」

戦中の体験を的確に言葉で表現できる作家が、また一人逝ってしまった。(は)

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