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採用の三大悩みを解決する“本当の魅力”の伝え方をブランディング専門家が解説

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採用の三大悩みを解決する“本当の魅力”の伝え方をブランディング専門家が解説【求人ボックスジャーナル】はたらき方やキャリアを考える機会を創出するメディア

「応募が来ない」「採用してもミスマッチ」「人がすぐ辞める」

これらは、多くの企業が抱える採用の三大悩みです。解決策は、給与アップや、福利厚生などの制度を充実させるだけでは不十分。「本当に必要なことは、働く人たちの『本当の姿(魅力)』を言語化して発信することにある」と、のべ100社以上の企業ブランドについてコンサルティング経験を持つ松下一功さんは語ります。

組織の成熟度を高めながら、自社のカラーに合った人材が自然と集まる採用のあり方とは。松下さんに聞きました。

【松下一功(まつした いっこう)】

経営コンサルタント、共感ブランディングの提唱者。株式会社SKY PHILOSOPHY 会長。40年近く、企業アイデンティティーやブランドコンセプトの確立を専門とし活動。

採用の三大悩みの根本にある問題

景気の先行きが不透明な中でも、採用は続く。そして相変わらず、人事部からは同じような嘆きが聞こえてきます。

「応募が来ない」
「採用してもミスマッチ」
「人がすぐ辞める」

思わず共感してしまった人もいるかもしれませんが、実は、これらの悩みを生む理由は明確です。

応募が来ない:きちんと情報発信していない採用してもミスマッチ:本当の姿を隠している人がすぐ辞める:愛社精神を育てていない

伝えたい人にきちんと伝わるように情報発信していないから応募が来ない。自社の「本当の姿」を見せていないから希望する人材とマッチしない。そして、もし採用できたとしても、会社と社員がお互いを愛し愛される努力をしていないから、すぐに離職してしまうのです。

この負のスパイラルは、 企業側の「自信のなさ」の表れ です。恋愛に例えてみるとわかりやすいでしょう。

自分に魅力がないと思っていて、相手に好きになってもらう自信がないから、高価なプレゼントを買ってあげたり、何でも言うことを聞いてあげたりする。そんな切ない葛藤が浮かび上がってきます。しかし、偽りの姿だけを見せて恋愛成就したところで、この関係は長続きするとは思えませんよね。

採用シーンでも 「制度で釣る」ことに頼るのではなく、自社の魅力を見極めて発信すること 。それが、本当の採用力につながるのです。

「本当の魅力」を伝えることの威力

「魅力の発信って言うけど、具体的には何をしたらいいの?」

その答えは、 自分たちの仕事内容や大切にしていること、こだわりなどを言語化して発信すること です。どんな会社にも、働く人たちの「泥くさいリアル」があります。それを言葉にして伝えることで、驚くほど強力な採用メッセージになるのです。

その一例が、富山県の鋳物メーカー株式会社能作です。

鋳物は長い伝統を持つ一方で、「汚い・危険・キツイ」職種として敬遠されがちな仕事でした。かつての能作も、偏見から人材確保が難しい時期がありました。しかし、あることをきっかけに工場見学を始めたところ、鋳物に対する偏見がなくなり、いつしか子どもたちが憧れる職業になっていったのです。

その理由は、 職人が自分たちの仕事を説明することで、自分たちの仕事に誇りを持つようになり、職人から直接説明を聞いた見学者たちは、真剣に働く様子や仕事への情熱を間近で感じ取り、「すごい!」「かっこいい!」と憧れを抱くようになったため です。

能作のような取り組みは他の業界でも有効です。実際に、当社がコンサルティングをしているある企業でも、毎年20本程度の社員密着動画を制作し、イントラネットに載せたり、採用シーンや教育研修で活用したりしています。この動画では、社員がどんな信念を持ち、どんなことにこだわって働いているのか、表からは見えない裏側の泥くさいリアルを丁寧に描いています。

その結果、当初は社員20人ほどの規模でしたが、今では10倍くらいにまで成長しました。一般的に定着しにくいとされる業種ですが、他社と比べて離職率も低くなっています。他社と比べて離職率も低くなっています。

この2つの事例に共通するのは、「本当の仕事の姿を、働く人自身の言葉で伝えている」という点です。 制度やパンフレットでは伝えられない、生の声と表情、そして仕事への真摯な向き合い方 。それらが見る人の心に響き、魅力として映ることで、人を動かす力となったのです。

組織の「成熟度」が採用を左右する

前章で紹介した能作や社員動画の事例を見てわかるように、働く人が自分の仕事に誇りを持って語れることには、大きな力があります。

では、なぜ多くの企業では、この「言語化」と「発信」ができていないのでしょうか?

その理由は、組織がまだ十分に成熟していないからです。多くの企業では、経営層の思いが現場まで適切に伝わっていません。これは 「ティール組織」の発達段階論 で説明できます。

ティール(進化型):自主経営、全体性、進化する目的を持つ
グリーン(多元型):多様性と調和を重視、従業員の幸福を大切にする
オレンジ(達成型):成果主義、競争と革新を重視
アンバー(順応型):階層的で規則重視、安定を求める
レッド(衝動型):力による支配、短期的思考が中心

現在の日本企業の多くは 「アンバー(順応型)」 段階にあります。これは規則重視の組織形態であり、すべての決定事項はトップからボトムへと流れます。しかし、時代の変化とともに、多くの企業が 「オレンジ(達成型)」 や 「グリーン(多元型)」 段階へと進化しようとしています。

問題は、組織内での進化のペースにバラつきがあることです。経営層の新しい考えや価値観が現場にきちんと浸透していれば、それぞれの部署が抱える問題意識は自然と顕在化されます。すると、採用においては「営業部ではこういう人がほしい」「技術部門にはこんなスキルを持った人を迎えたい」といった具体的なリクエストも出やすくなります。

その結果、「採用は採用チームだけでやるべき仕事」という認識が薄れ、 「全員でいい人を探そう・入れよう」 という動きが自然と生まれてくるのです。

ここまで組織が成熟すると、 「自分たちに共感してくれる人に入ってほしい」という思いから、自然と仕事への誇りやこだわりを言語化・発信できるようになります 。これが、組織の成熟度が採用を左右する理由なのです。

「自社のカラーに合った人が、ちゃんと続く」採用のために

では、どうすれば組織全体が一丸となって、本当の魅力を発信できるようになるのでしょうか。

まず重要なのは、 自社の現在地を正しく把握すること です。経営層と現場の間にどのような認識格差があるのか、働く人たちはどんな思いで仕事をしているのか。これらを明確にして、丁寧に言語化することから始めましょう。

次に、それらの情報を様々な形で発信します。社内・社外に関係なく広めましょう。方法はいろいろあります。手っ取り早く、公式noteを作るのもいいですし、密着動画のような映像コンテンツや、職場見学のような体験型のアプローチも効果的です。

そして、何よりも大切なのは、 働く人自身に自分の言葉で、日々、どんな気持ちで仕事と向き合っているのか、何にこだわっているのかを語ってもらうこと です。

そうすることで、採用の三大悩み「応募が来ない」「採用してもミスマッチ」「人がすぐ辞める」は、すべて解決へと向かうでしょう。

きちんと情報発信ができれば応募は来ます。本当の姿を見せられればマッチング精度は上がります。そして愛し愛される関係性を築けば、人は長く働き続けてくれます 。

まずは自社の現在地を知ることから始めましょう。そうすれば、「自社のカラーに合った人が来て、ちゃんと続く」採用へと変わっていくはずです。

プロフィール

松下一功(まつした いっこう)

経営コンサルタント、共感ブランディングの提唱者。株式会社SKY PHILOSOPHY 会長。40年近く、企業アイデンティティーやブランドコンセプトの確立を専門とし活動。2011年より「真のブランディングを世に伝える」ことをミッションに、講演、講師、コンサルティングを行う。2024年、著書『共感ブランディング®ドリル』で、自身の体系的オリジナルロジックを一般公開。ブランディングのわかりやすい実践書として高評価を得ている。

取材・文:安倍川モチ子
編集:求人ボックスジャーナル編集部 内藤瑠那

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