四日市から「低音の風」吹かせてプロ15年 ジャズバストロンボーン奏者の服部陽介さん
三重県四日市市で生まれ育ったバストロンボーン奏者の服部陽介さん(38)は、今年プロとしての音楽活動15周年を迎える。ジャズをこよなく愛し、現在は関西を拠点にビッグバンドを中心に演奏しながら、地元の四日市にも月1〜2回のペースで帰郷し、ライブ出演や後進の指導に当たっている。
◆四日市で出会った「一生の楽器」
服部さんがトロンボーンに出会ったのは中学校の吹奏楽部。高校に進学後、友人から「より専門性が高い」と勧められてバストロンボーンに転向してからは、いっそう、重厚で深みのある低音に魅せられていった。立命館大学に在学中、最初は将来的にトロンボーンを続けていくかどうか考えていなかったが、ドイツの専門学校生のビッグバンドをゲストに迎えたジャズライブを見て、その迫力に心が決まった。「ビッグバンドでバストロンボーンを吹いていこう」。2010年秋のことだった。
◆多彩な共演と海外へ広がる視野
Kyoto Composers Jazz OrchestraやMoonlight Swing Orchestraなどのビッグバンドに在籍し活動するほか、ジャズ界の巨匠・北村英治さん(クラリネット)、日野皓正さん(トランペット)、阿川泰子さん(ボーカル)やポップスアーティスト・宇崎竜童さん、ジュディ・オングさん、今陽子さんなどのバックバンドを務めたことも。
2021年に自身のユニット「服部陽介TROMBONES INC.」を結成、東京、関西の奏者たちと各地でライブを展開し、2023年にはタイ・バンコクでの海外公演も実現した。また、香港の人気バンド「RubberBand」のレコーディングに参加し、現地ピアニストと共演するなどグローバルな視野を広げている。
SNSでの発信にも力を入れようと試行錯誤中だ。YouTube(バストロTV)に、演奏動画や初心者向けの解説などを投稿し、トロンボーンやジャズの魅力を伝えている。
【5月13日に地元四日市で服部さんが出演するクインテット(5人バンド)によるライブが開かれた】
◆歌とのコラボで起こす「化学変化」
5月13日に四日市市鵜の森のライブハウス「Jazz Spot VEEJAY」で、ジャズボーカリスト松本ケイさんとの共演ライブを開いた。バンドメンバーに名を連ねたパンダ岡崎さん(ピアノ)、伊藤靖雄さん(ベース)、林宏樹さん(ドラム)は、いずれも四日市で長くジャズを演奏してきたミュージシャンだ。「最近は『歌』との化学反応にさらなる表現の可能性を感じています。アレンジを提供することで、ボーカルを輝かせるおもしろみがありますね」。
◆「ジャズが聴けるまち・四日市」への思い
服部さんは、2017年にA4判2つ折り4ページのフリーペーパー「四日市ジャズジャーナル」を個人で創刊。毎月約200部を発行し、ライブハウスや市文化会館などで配布している。「四日市にはジャズメインのライブハウスが4軒とジャズ演奏のあるカフェも2軒ある。人口規模のわりに多い印象です。でも、地元ではあまり知られていない。紙媒体を手に取ってもらうことで、ライブに足を運ぶきっかけになれば」。地道に続けてきて、11月には100号を迎える。
【服部さんが発行している「四日市ジャズジャーナル」】
◆四日市での次回公演は7月
7月19日(土)午前11時から、服部さんは四日市市河原田町のJAみえきた河原田支店会議室で開催される「JAZZふれあいコンサート」(入場無料)に出演する。岐阜や名古屋を拠点に全国ツアーや海外演奏を行っている東海地方屈指の人気ジャズピアニスト近藤有輝さんとの共演。「地元の方にもっと気軽にジャズを楽しんでもらいたい。敷居は高くないことを知ってもらえたら」と話す服部さん。四日市のジャズ文化を支える「低音の風」は、これからも力強く吹き続けていく。