電車と自動運転のクルマ、踏切事故をどう防ぐ? 東大生研のキャンパス公開で最先端技術を知る(東京都目黒区)
鉄道会社がファンと触れ合う機会といえば工場や研究機関の公開が思い浮かぶが、今回ご報告するのは少々異色の研究所公開……。
東京大学生産技術研究所(生研)の「東大駒場リサーチキャンパス公開2025」が2025年5月30、31の両日、東京都目黒区の東大駒場エリアで開かれ、研究職志望の高校・大学生や企業研究者らが訪れた。
工科学分野の調査・研究を手がける東大生研は、戦時中の1942年に発足した東大第二工学部がルーツ。戦後まもない1949年に東大生研になり、発足時の千葉市から東京・六本木を経て2001年、現在の駒場キャンパスに移転した。
生研は企業との共同研究に力を入れる。鉄道関係では、東京メトロと共催で毎年夏休みに開催する、中高生向け「鉄道ワークショップ」が広く知られる。
【参考】鉄道訓練センターと大学キャンパスで鉄道ネットワークを学ぼう! 東京メトロと東大生研が今年も7月に「鉄道ワークショップ2025」(東京都江東区など)
https://tetsudo-ch.com/13001065.html
交通・鉄道分野の研究を手がけるのが、中野公彦教授がセンター長を務める「ハーモニック・モビリティ研究センター」。2009年に誕生した先進モビリティ研究センターなどを出発点に、2025年に新生研究機関として再スタートした。ハーモニック(調和)の名称そのままに、鉄道と道路交通をミックスさせて安全で利用しやすい移動を実現する手法などを探る。
研究メニューで鉄道ファンに興味を持ってもらえそうなのが、「携帯電話回線を利用した鉄道車両と自動車の統合型交通制御システム」と「鉄道車両の減速度低下検知」の2つ。
統合型交通制御システムは、実用化が迫る自動運転のクルマと列車の踏切事故を防ぐ。列車が踏切に近付く自動車との間で無線を介して情報交換、クルマを安全に停車させるが、通信に汎用ケータイ回線を使ってコストダウンや導入期間を短縮するのがミソ。
実験では、鉄道車両に見立てた電動カートが時速9キロで走行、接近情報をクルマや道路信号への伝達に成功している。
減速低下検知は、降雪地帯を走る列車の安全確保が目的。降雪時の滑走による〝列車ブレーキの利きにくさ〟をコンピューターで算出、運転士のタブレットに送信する。
今回のキャンパス公開では、生研と共同研究する企業ブースの出展エリアが設けられ、鉄道業界からは東京メトロが参加した。
記事:上里夏生