フランスの街中で見かけることば遊び ~地名編【しあわせ気分のフランス語】
テキスト『しあわせ気分のフランス語』から、東京外国語大学、慶應義塾大学などで非常勤講師を務める中尾和美さんの連載「言葉遊びの部屋~JOUONS AVEC LES MOTS~」をご紹介します。
今回ご紹介するテーマは、「ことば遊びと地名」です。
言葉遊びの部屋 ~JOUONS AVEC LES MOTS~
ことば遊びと地名
日本のご当地キャラやマスコットは、パリのJapan Expoなどでもお馴染みです。マスコットの名前は、たいてい地名、社名、イベント名などにかけたネーミングですが、このように同音または類音の事物を地名の中に見つけて、それをご当地キャラならぬ村や町の紋章に仕立てることば遊びは、フランスでも古くから行われてきました。
チーズで有名な北東部の村シャウルス(Chaource)の紋章には、2匹の白猫と1匹の黒熊があしらわれています。というのも、村名を発音すると、まるで「猫(シャ chat)」と「熊(ウルス ours)」からできているように聞こえるからです。また、オクシタニーのエロー(Hérault)県にはフロランサック(Florensac)という町がありますが、ここの紋章は「袋に入った花(フルーランサックfleurs en sac)」です。少しダジャレっぽいですね。
ことば遊びは、町などのスローガンにも見られます。オクシタニーのオード(Aude)県の中心都市ナルボンヌ(Narbonne)では、町の名前に「良い(ボンヌ bonne)」を見出して、« Cette fois,cʼest la bonne, cette fois, cʼest Narbonne »「今度は大丈夫(ボンヌ)だ、今度はナルボンヌだ」というスローガンを掲げたことがあります。これは、前の年に惜しくも優勝を逃した「最高の市場(Votre plus beau marché)」コンテストに投票するよう市民にアピールするためでした。このスローガンが功を奏したのか、見事その年はナルボンヌの市場が優勝したそうです。
※テキストでは、シャウルスの紋章の画像も紹介しています。
文:中尾和美(なかお・かずみ)
東京外国語大学博士後期課程修了。博士(学術)。パリ第3大学博士課程留学(フランス政府給費留学生)。専門は言語学。現在、東京外国語大学、慶應義塾大学などで非常勤講師を務める。著書に『海外領土から知るフランス』(三修社、共著)。趣味は第九(ソプラノ)。
◆『NHKテレビ しあわせ気分のフランス語』2025年1月号
◆文:中尾和美