【箱根町】 「温泉ヘルパー」本格始動 施設へ出張、入浴箱根町ト
一人での入浴が困難な高齢者や障害者にも箱根の温泉を楽しんでもらおうと、小田原市内の介護事業所が入浴介助事業「はこねOnsen―Helper」に力を入れている。誰もが気兼ねなく楽しめる観光地に向け、箱根町が掲げる「ユニバーサルツーリズム」の理念を体現した取り組みのひとつだ。
事業を行うのは、リハビリテーションや訪問看護、デイサービスなどを展開する(有)足柄リハビリテーションサービス(小田原市堀之内)。箱根町観光協会(箱根DMO)と連携し、今年秋から本格的に事業に取り組む。
きっかけは2021年、町が打ち出した「ユニバーサルツーリズム」の推進に向けた一連の取り組みに、同社の初鹿真樹さんが参加したことだった。目玉事業となった「車いすで巡る箱根旅」をコンセプトにした観光マップの作成に携わる中で、「箱根観光の最大の目的は温泉だが、ハード面は整っていても障害などを理由に温泉に入れない人を支えるソフト面が足りないと思った」。
選ばれる温泉街に
「誰でも温泉に入れるサービスを」と考え、初鹿さんが思い付いたのが町内のホテルや旅館に出張する入浴介助だった。長野県や佐賀県、鹿児島県などの温泉街ではすでに同様の取り組みが行われており、指折りの温泉観光地である箱根にも需要はあるはずと感じた。
サービスの提供にあたり、同社では昨年8月からヘルパーの養成講座を開き、これまでに看護師や介護福祉士、介護タクシーのスタッフなど26人が受講。昨年秋から事業を開始し、これまでに8件の利用があった。
利用は事前予約制で、要介助者と同性のヘルパー2人1組が客室まで迎えに行き、貸し切り温泉や客室付属の露天風呂での入浴をサポート。予約時に入浴の可否を判断するための聞き取りを行うほか、入浴前後のバイタルチェックなどを通して利用者の安全に配慮するという。
利用者の家族は「(旅行先では)家族が入浴させなければいけないことが負担になるが、プロの方に介助していただけることで気分もリフレッシュする。本人も家族と同じような気持ちで旅行を楽しめるのでは」と喜ぶ。箱根DMOの佐藤正毅さんも「ユニバーサルツーリズムは行政と箱根DMO、宿泊施設などで取り組んでいた。そこに専門家が入ることによって、オール箱根という形で進められるようになった」と手応えを感じている。
温泉施設の理解不可欠
事業を進めるには施設側の協力も必要となることから、取り組みに賛同するホテルや旅館を増やしていくことも課題だ。旅行会社などとも連携し、協力施設を増やしていきたいという。
初鹿さんは「リハビリなどに取り組む方が、『また温泉旅行に行きたい』という目標を持って頑張れる、そんな支援につなげていきたい」と展望を語った。