福岡市民ホールが新「文化の殿堂」として誕生。 新須崎公園もリバーフロントNEXTで本格化【福岡市中央区】
2025年3月28日、福岡市民会館の後継施設として『福岡市民ホール』が、オープンしました。福岡市民会館の跡地では今後、『リバーフロントNEXT』の一環として、〝水辺に開かれた公園〟となる新しい須崎公園が整備されていきます。〝文化と緑のオアシス〟は、どのように進化していくのでしょうか。
新たな文化の殿堂『福岡市民ホール』が3月28日に誕生!
画像提供:福岡市
「これからもたくさんの市民のみなさまに感激・感動、そしてまた多くの刺激を与えられるような素晴らしい施設になることを期待しています」━━。
福岡市の高島宗一郎市長は2025年3月28日、福岡市における文化活動の新たな殿堂ともいえる「福岡市民ホール」のオープニングセレモニーにおいて力強く語った。
福岡市は、1963年に開館して以来61年が経過し、老朽化した福岡市民会館の後継施設として福岡市民ホールを建設した。
須崎公園に包まれるかたちで誕生した福岡市民ホールは、2,016席の大ホール、815席の中ホール、仮設150席の小ホール、リハーサル室、練習室、エントランスホールを備える。
地下1階・地上5階建ての福岡市民ホールは、従来の福岡市民会館と比べて、延べ床面積で2倍強の2万平方メートルの規模を誇る。
福岡市民ホールは、民間事業者による「設計・施設建設~所有権移転~維持・管理・運営」を一気通貫で行うPFI-BTO方式を採用する「福岡市拠点文化施設整備及び須崎公園再整備事業」の一環として誕生した。
画像提供:福岡市
地球温暖化対策や感染症対策も講じた福岡市民ホール
画像提供:福岡市
『福岡市拠点文化施設整備及び須崎公園再整備事業』では、福岡市による総合評価一般競争入札方式での公募結果、日本管財を代表とするグループ案が採択された。
日本管財を代表とするグループは、戸田建設やJTBコミュニケーションデザイン、九州林産、占部建設、照栄建設で構成されている。
そして、協力企業として、梓設計、俊設計、戸田芳樹風景計画、サン・ライフ、古賀緑地建設、クレアプランニングが参画する。
当初、福岡市民ホールは、2024年3月の開館を予定していた。
採択後、地球温暖化対策としての太陽光パネルの追加導入や感染症対策としての非接触型エレベーターへの変更などを理由に1年延期としている。
福岡市拠点文化施設整備及び須崎公園再整備事業の総額は、施設整備費約237億円、開業準備費及び供用開始後15年間の維持管理・運営費約43億円の計280億円となっている。
福岡市民ホールの整備事業を担当した福岡市経済観光文化局文化まつり振興部の山口学文化施設課長は、次のように語る。
山口学文化施設課長
「世界に誇れるホールを作る」との意気込みで取り組まれた多くの関係者の方々の思いに触れ、福岡市民ホールが完成し、開館したことに感謝し、感動しています。
福岡市民ホールは、舞台公演を〝観る場〟であるとともに、自らが〝活動する場〟であり、多くの方が文化・芸術と親しみ、触れ合う機会を創出していきます。
円形でガラス張りの開放的な外観を持つ福岡市民ホールは、緑あふれる須崎公園と調和したランドマークとして、広く市民に親しまれる場所として、多くの方にご来場いただきたいと思います。
福岡市経済観光文化局文化まつり振興部の山口学文化施設課長
〝文化と緑のオアシス〟として誕生した福岡市民会館と須崎公園
2025年3月23日に閉館した福岡市民会館
福岡市都心部に接する天神北地区で長年、福岡市民会館と須崎公園は、市民から〝文化と緑のオアシス〟として親しまれてきた。
福岡市民会館・須崎公園エリアは昔、海辺だったそうだ。
福岡市民ホールの北側を走る那の津通りが、かつて海岸線だったという。
幕末期には、現在の須崎公園付近の海岸部に黒船来襲に備えた砲台場が築かれ、12貫目砲など15門の大砲を配備した。
現在、須崎公園の北側に残る石垣は、かつて砲台場だった名残だ。
明治期に入ると、台場跡地に日本赤十字社福岡支部が開設された。
1899年には福岡県水産試験場が設置され、1923年には日本初の公立女子専門学校である福岡県立女子専門学校(現・福岡女子大学)が開校した。
また、第一次世界大戦の戦時下には、ドイツ人捕虜を収容する福岡俘虜収容所も設けられている。
現在の天神5丁目一帯は、当時「須崎裏町」と呼ばれており、1911年、福岡市内に鉄軌道を敷設した博多電気軌道(西日本鉄道の前身の一社)が、現在の須崎公園南側に停留所を設置し、その名称を「須崎裏」とした。
さらに1920年3月20日から5月20日までの62日間には、当地において「福岡工業博覧会」が開催され、入場者数は91万人を記録した。
終戦後の1945年10月、博多港が引揚援護港に指定される。
そして、近隣の須崎グラウンドに応急簡易住宅やバラック小屋などが建てられて、大陸からの引揚者や戦災者らの居住地となった。
その後、福岡市は、隣接地に市営住宅を建設すると共に簡易住宅を撤去し、立ち退きを完了させた。
そして、跡地に戦災復興記念事業の一環として、1965年から4カ年計画で須崎公園建設に着工する。
須崎公園の整備を進める一方、隣接地に1963年10月、福岡市民会館が開館した。
また、1964年11月、図書館と美術館を併設した福岡県文化会館(現福岡県立美術館)が開館している。
その後、1967年4月に席数500席の野外音楽堂が完成。
1968年7月、大噴水の完成によって須崎公園がグランドオープンした。
須崎公園の北側に残る石垣
〝新〟須崎公園の整備に向けた第2期工事がスタートへ
須崎公園の再整備イメージ図(画像提供:福岡市)
今回の『福岡市拠点文化施設整備及び須崎公園再整備事業』における対象エリアは、福岡市民会館エリアの1万573平方メートル、隣接する須崎公園エリアの2万9,602平方メートルの計4万平方メートル余りとなっている。
整備事業では、1期工事として現在の須崎公園エリアに福岡市民ホールを建設して供用を開始した。
今後の2期工事では、福岡市民会館を取り壊し、跡地を〝水辺に開かれた公園〟として整備していく計画で2027年3月から供用の開始を予定している。
旧来の須崎公園エリアと福岡市民会館エリアは一体的に整備されて、福岡市民ホールを除く、約3万平方メートルのエリア全体が、新しい「須崎公園」となる。
福岡市民ホールおよび須崎公園の指定管理者には、日本管財を代表とするグループによって、特別目的会社として設立した株式会社福岡カルチャーベース(福岡市中央区天神5丁目)が、指定された。
指定管理者としての維持管理・運営期間は、2040年3月末までとなっている。
福岡市住宅都市みどり局みどり推進部の大内一浩みどり企画課長は、次のようにコメントする。
大内一浩みどり企画課長
福岡市拠点文化施設整備及び須崎公園再整備事業の2期工事では、福岡市民会館を取り壊した跡地に〝水辺に開かれた公園〟を整備していきます。
県市連携で取り組むリバーフロントNEXTの一環として、福岡県が整備を担当する護岸工事では、川辺に下りられる階段状の親水空間を設ける計画です。
都心部での3ヘクタールものみどりの空間は貴重であり、一体的に整備する須崎公園には、全体で700本を超える木々がある、みどりあふれる公園となります。
福岡市民ホールを利用される方々にも公園のみどりを楽しんでいただきたいと思います。
天神ビックバンをはじめとする都心開発でまちが生まれ変わろうとする中、まちにみどりを積極的に導入していくことで、彩りと潤いあふれるまちづくりを進めていきたいと考えます。
福岡市住宅都市みどり局みどり推進部の大内一浩みどり企画課長
川に開かれた水辺のまちづくり『リバーフロントNEXT』とは何か
画像提供:福岡市
福岡市の中央部を流れる那珂川沿いの須崎公園から清流公園までのエリアにおいて、〝川に向かって開かれた〟〝水辺を活かした〟まちづくりである『リバーフロントNEXT』がいま、推進中だ。
対象となるエリア全体の魅力をさらに高めていくため、須崎公園や水上公園、清流公園などを管理する福岡市、そして二級河川の那珂川や天神中央公園を管理する福岡県が、連携して取り組んでいる。
一方、対象エリア内では、リバーフロントNEXTの理念に賛同した民間企業による開発も進んでいる。
那珂川に面した『(仮称)天神一丁目15・16番街区計画』では、水鏡天満宮や赤煉瓦文化館などの歴史・文化資源と水辺・緑の魅力を活かしたまちづくりに向けて取り組んでいる。
また、対象エリアの南端に位置し、食とエンターテイメントを融合したカルチャー発信の複合施設が『010BUILDING』だ。
同施設では、アートやエンターテイメント、フード、カクテルの融合を通じて福岡の街に新たなカルチャー創出を目指している。
従来、川に背を向けてきた都市と言われてきた中、川をはじめとする水辺に開かれたまちづくりに舵を切ったことの意義は大きい。
都市の価値と魅力を高めていく新たなまちづくり
今回、築60年余りを経過した福岡市民会館は、新たに福岡市民ホールに〝バトンタッチ〟することで機能更新を実現している。
そして、隣接地への移転を通じて、再整備されていく須崎公園も〝水辺に開かれた公園〟へ生まれ変わろうとしている。
さらに『リバーフロントNEXT』の対象エリア内に立地する、須崎公園をはじめとした清流公園、(仮称)天神一丁目15・16番街区計画などは今後、福岡市都心エリアにおける魅力をさらに高めていくものとみられる。
福岡市が目指す、「生活の質の向上」と「都市の成長」の持続的な好循環を図るためには、文化や花・緑による都市の魅力をさらに高めて、人と経済活動をより一層呼び込んでいくことが求められる。
参照サイト
福岡市拠点文化施設整備及び須崎公園再整備事業について
https://www.city.fukuoka.lg.jp/keizai/b_sisetu/shisei/fukuokashibunkashisetsuseibijigyou.html
【お知らせ】福岡市拠点文化施設開館1年延期について
https://fukuoka-civichall.jp/archives/11841/
福岡市民ホール
https://www.fukuoka-civic-hall.jp/
福岡市民ホールのオープンについて
https://www.city.fukuoka.lg.jp/shisei/kouhou-hodo/hodo-happyo/2024/documents/kaiken2_fukuokasiminho-runoo-punnituite.pdf
「福岡市民ホール」オープン 大ホールは約2000人収容 どん帳は博多織 こけら落とし公演はMISIAさん
https://www.fnn.jp/articles/-/849600
リバーフロントNEXT ~川に向かって開かれたまちへ~
https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/kaihatsu/shisei/riverfrontNEXT_02.html
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