変わらないもの~ 小説家・清水晴木「晴れ、ときどき懐う(おもう)」
千葉県習志野市出身、在住の小説家・清水晴木さん。累計4万部突破の『さよならの向う側』シリーズなど多数の執筆した小説の数々は千葉を舞台にしています。そんな清水晴木さんが著作と絡めて千葉の思い出をつづります。
清水晴木さん
1988年生まれ。東洋大学社会学部卒。2011年函館イルミナシオン映画祭第15回シナリオ大賞で最終選考に残る。2021年出版の『さよならの向う側』はテレビドラマ化して放送。『分岐駅まほろし』『旅立ちの日に』『17歳のビオトープ』など著作多数。
変わらないもの
同窓会で久々に会った友人に「変わらないね」と言われるのと「変わったね」と言われるのはどちらが良いだろうか。
私は「変わらないね」と言われる方がうれしいかもしれない。
でも笑って「変わったねえ」なんて言われてもきっとうれしい気がする。
千葉県出身のアーティスト、奥華子さんの曲に「変わらないもの」がある。この生歌が津田沼の空に流れたのは、2025年3月30日のことだった。
そう、モリシア津田沼閉店の日だ。
当日、モリシアではセレモニーが行われ、多くの人が集まった。
その当日、私も広場にいた。
モリシアは旧サンぺデックから数えると、47年間の歴史に幕を閉じることになる。
広場に集まった誰もが、この街のシンボルでもある商業施設との別れを惜しんでいた。
奥華子さんのライブが始まったのは、夕方頃だ。
茜色に染まる空の中に響き渡る奥華子さんの歌声に私も聴き入りながら、思わず涙をこぼしそうになった。
群衆に囲まれる中、西の空に沈んでいく夕日と共に影が深くなっていくモリシアの姿は、これから何度も思い出すであろう特別な光景として胸に刻まれている。
津田沼はここ最近、パルコ、イトーヨーカドー、モリシアと閉店が相次いでいる。流れゆく時間の中で「変わらないもの」なんて決してないのだろう。
でも「変わるもの」があるからこそ、懐かしいと思う感情や、それを温かく想う気持ちがきっと生まれる。
だから私は、色んなものがなくなってしまった津田沼の街並みにも、「変わったねえ」といつか笑って言いたい。