猫にまつわる『素朴なギモン』3選 “ペットボトルを嫌がる”はウソ?ホント?
1. 通称「猫よけ水」は本当に猫の天敵か?
住宅街に一歩入ると、民家の塀の上や下、あるいは門まわりなどに置かれたペットボトルの水(通称、猫よけ水)が目に飛び込んできます。門兵のように整列した姿はときに圧巻で、設置者の苦悩、セキュリティ意識が垣間見え、何となく切なくなってくるほどです。
日本各地で当たり前に見られる光景ですが、結論から言うと、猫は、「猫よけ水」を怖がりません。もちろん、科学的根拠もゼロです。
猫は新規のモノに対して警戒しがちですが、自分に害がないとわかれば、まるで最初から存在しないかのように素通りします。
一説によれば、「猫よけ水」のルーツは、もともとアメリカで始まった噂「瓶に入った犬よけ水」だと言われています。
どういうわけか、その話がのちに海を渡って日本まで来ると、犬から猫へと置き換えられ、テレビなどの紹介もあって、全国的に広まったいきさつがあります。
裏を返せば、庭先への「不法侵入」や糞尿の「不法投棄」、あるいは、「車上荒らし(冬場のボンネットで暖を取る)」など、当時、外猫の「迷惑行為」によって、実害を被っていた人たちがいかに多かったかを物語っているのかもしれません。
猫にとって「猫よけ水」は無害でも、ずっと放置していると、思わぬトラブルに見舞われる可能性があります。過去の事例では、あたかも虫メガネのように、ペットボトルの外側が太陽の光を集めた結果、近くにあるものが燃える、といったことも実際に起こりました。
インバウンド・ブームに後押しされ、日本を訪れた外国人観光客たちが、道端の植え込みを取り囲むように並んだペットボトルを見て、どんなふうに感じるのか、気になるところです。
2.猫が「きゅうり」を怖がるのは本当か?
「きゅうり」と言えば、私たち人間にとっておなじみの野菜で、サラダや漬物など、さまざまな料理に使われています。夏の夜店に行けば、冷やしきゅうりを必ず買い求める人もいるかもしれません。
では、猫にとって「きゅうり」は、どんな存在なのでしょうか?
正解を先に言うと、猫によって反応のばらつきはありますが、「きゅうり」に直面するタイミング次第では、ひどく怖がることもあるようです。
その証拠に、ネット上の動画では、ゴハン中などに、背後にそっと置かれた「きゅうり」に気づいて、まるでバネ仕掛けのごとく、大きく飛び上がる愛猫の姿が数多く紹介されています。
猫が「きゅうり」にひどく驚いてしまうのは、主に2つの仮説が考えられます。
ひとつは、振り返った瞬間、さっきまでなかったモノがある、と気づいたときのとまどいです。猫は、想定外のハプニングが苦手で、予期せぬ出来事が起こると、命を守るために、すぐにその場から逃げ出そうとします。
もうひとつは、「きゅうり」=「ヘビ」の連想です。個体差はありますが、「ヘビ」は猫の天敵のひとつに数えられています。そのため、「きゅうり」を「ヘビ」と見間違えて、逃亡したという可能性も否定できません。
つまり、猫が「きゅうり」にビックリ仰天するのは、不得意な「ハプニング性」に加え、天敵「ヘビ」のイメージが重なった結果なのかもしれません。
言うまでもないことですが、愛猫を不用意に驚かせると、せっかく築き上げた信頼関係が壊れてしまうこともあります。特にゴハン中の猫は、かなり気を許しているので、「きゅうりドッキリ」のインパクトも最大級です。
「食べ物で遊んではいけません」と昔から言われている通り、「きゅうり」を買ったら、遊び半分に使わずに、サラダや酢の物、お漬物などにして楽しんでみてください。
3.なんで猫は寝てばかりいるの?
みなさんのなかにも、子供の頃、寝てばかりいる愛猫を見て、「なんでそんなに眠たいの?」と素朴な疑問を抱いたことがあるかもしれません。
両親にそのことを聞いても、忙しいのか、「猫って、そういう動物なのよ」と答えてくれるだけで、何となくモヤモヤが残るばかりです。
猫のようにずっと寝ていられたら、学校に行かなくて済むし、やり残した宿題を先生に注意されることもありません。友達に会えない寂しさはちょっとあるけれど、目が覚めれば、スリスリしてきた愛猫といっしょに遊べます。
猫好き少年・少女からすれば、ある意味、理想の暮らしです。
猫の一日の平均睡眠時間は約12~16時間で、子猫やシニア猫になると、約20時間近くも寝ています。一方で、各国別による統計では、日本の平均睡眠時間は7時間22分です。猫は、実に日本人の倍以上も眠っている計算になります。
猫がそれほどまでに長く眠るのは、野生時代のライフスタイルが深く関係しているからです。
大昔の猫は、ウサギやネズミ、野鳥、昆虫などの獲物を捕まえて、命をつないできました。狩りに出かけても、毎回、成功するとは限りません。失敗が続けば、飢えの苦しみが待ち構えています。野生下の猫の暮らしは、飢え、つまり、「死」と隣り合わせです。
獲物が見つからず動き回れば、体力を奪われてくたびれてしまいます。弱ったところを天敵に襲われたら、ケガするか、最悪の場合、自分が「獲物」になってしまいます。
無駄なエネルギーを使わずに、いかに効率よく獲物をしとめるか――これは野生の現場で生きる猫のセオリーです。
たとえば、岩陰や高い木のうえで動かずに寝ていれば、体力を奪われることもありません。体力温存のために、日中は睡眠にあて、獲物の動きが活発化する夕暮れ前と明け方になると、猫は「狩り」の仕事に出かけます。
つまり、猫にとっての長い睡眠は、生き残りを賭けた戦略のひとつであり、狩りに備えるための「準備期間」です。その野生本能は、人間と暮らすようになった飼い猫にもいまだに引き継がれています。
もしみなさんが自分の子供に「なんでうちの猫は寝てばかりいるの?」と尋ねられたら、「そういう決まりなのよ」と冷たくあしらわずに、これまで説明してきたことを、かいつまんで話してみてください。
「へぇ~、そうなんだ。睡眠は、猫にとって『仕事』のようなものなんだね」と納得してくれるかもしれません。
まとめ
全国各地で猫よけとしてペットボトルの水が置かれています。その情景は、もはや日常の風景と化していて、歩いていてもたいして気にならないほどです。
今回は、「猫よけ水」を手始めに、猫に関する疑問点を3つ紹介しました。
改めて要点をまとめると、「猫よけ水には科学的根拠がない」「きゅうりは状況次第で怖がることもある」「よく眠るのは野生本能が残っているから」というものです。
繰り返しになりますが、きゅうりなどを使って、イタズラ半分に愛猫を怖がらせると、信頼関係上、取り返しのつかない亀裂が入ることもあります。
愛猫と暮らしていると、次々に素朴な疑問が湧いてくるかもしれません。愛猫を教材にして日々、猫について学びながら、幼い子供の鋭い質問にも臆することなく答えられる飼い主さんになってください。