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「学童=低学年」もう古い? 浜松市の民間施設が証明 6年生のリアルなニーズとメリット

Shizuoka

■知育玩具メーカー「シャオール」が運営 6年間通える学童保育

学童保育を必要としているのは低学年だけなのか――。1つの疑問からスタートした事業は6年目を迎えて答えを示している。浜松市の知育玩具メーカー「シャオール」が運営する学童保育には、小学6年生も数多く通っている。高学年の需要は高く、6年生が通うメリットも大きいという。【全2回の前編】

学童保育を運営するシャオール 事業の柱は知育玩具の開発・販売

おもちゃメーカーが挑戦する学童保育事業。シャオールの宮地完登社長には仮説があった。

「学童は小学1年生が中心で、学年を重ねると受け入れが難しくなる施設が多いです。高学年を受け入れている施設はほとんどありません。しかし、高学年や、その保護者も学童保育を求めているのではないかと思っていました」

シャオールは2020年4月、民間の学童保育を開始した。料金体系は一般的な施設と異なり、4年目以降の利用料を無料に設定。高学年も継続して通える選択肢を示す目的だった。

新型コロナウイルス感染拡大の時期と重なったこともあり、スタートから1、2年間は思い通りの運営ができなかった。それでも、口コミで利用者が増え、現在は定員が埋まって新規受け入れができない状況が続いている。

6年生がリーダーを担うシャオールの学童保育

■利用児童58人のうち6年生は7人 1年生は最少の3人

シャオールの学童には、浜松市内5カ所の小学校から児童が通っている。学年の内訳が興味深い。利用している児童58人のうち、1年生は最も少ない3人。6年生は7人で、高学年(4~6年生)が低学年(1~3年生)よりも多い。

<シャオールの学童に通う児童>

・1年生:3人

・2年生:8人

・3年生:14人

・4年生:13人

・5年生:13人

・6年生:7人

学童を開設して6年目を迎え、初年度に入った1年生は今、6年生になっている。高学年になると授業の時間が長くなり、学童に滞在できる時間は1時間半程度と短くなる。それでも、大半の児童が学童を続けている。宮地社長は事業スタート当初に立てた仮説が正しかったと確信する。

「保護者が帰宅するまで、自宅で宿題をしたりYouTubeを観たりすることができる中で、学童を選ぶ5、6年生がたくさんいます。高学年であっても子どもを1人で留守番させることへの不安を感じる保護者も少なくありません。高学年にも学童が必要とされていると事業を通じて実感しました」

シャオールが運営する浜松市の学童保育施設

■「空間が締まる」 6年生が全体まとめるリーダーに

シャオールの学童保育は、主に小学1、2年生を預かる一般的な学童とは一線を画す。夏休みや冬休みだけの利用も受け入れていない。そこには、仮説の検証だけではなく、宮地社長の譲れない思いがある。

「民間で運営しているので自由度があります。本当に子どもたちが育つ学童とはどんな形なのか考えた時、1年生から6年間、自分たちが成長を見守れる環境がベストだという結論に至りました。来年は学童に入れるのか分からないという不安を子どもにも保護者にも抱かせず、卒業まで責任を持って預かる形が必要だと思っています」

シャオールの学童は、費用が相場よりも割高になっている。ただ、4年目以降は無料なので、4年以上通えば総額は下がる。長期休みも利用可能。共働きの保護者からは「経済的な負担が軽減され、高学年でも安心して学童を利用できる」といった声が届いている。

高学年も通える学童には、宮地社長が想像していなかったメリットもあった。6年生の存在を、こう表現する。

「空間が締まるんです」

リーダー・副リーダーのを任命式

■リーダー・副リーダーを任命 児童主体のイベント開催

シャオールの学童には常時、4~5人のスタッフがいる。施設内ではどんな過ごし方をしても自由だが、秩序を乱す言動には当然注意する。ただ、小学1、2年生には響かないケースもある。そんな時に頼りになるのが6年生だという。宮地社長が語る。

「大人の言うことを聞かない1、2年生が、6年生に注意されると素直に従うんです。その姿に『さすが6年生だな』と声をかけると、うれしそうにしています。注意された1、2年生は学年を重ね、今度は下級生の世話をする好循環が生まれています。自然とリーダーシップを育み、学童が学びの場にもなっています」

6年生が低学年に目を配ったり、学童全体をまとめたりする力を伸ばしているのは、シャオールの仕組みづくりにもある。6年生になるタイミングで毎年、「リーダー・副リーダー任命式」を実施。任命後は6年生が週に1回、イベント会議を開き、夏祭りやお楽しみ会などの企画を立てる。

6年生は役割を得たことで責任感が強くなり、積極的に行動するという。リーダーを中心にイベントの内容を話し合って決める。宮地社長は「リーダーシップ、考える力、協調性といった学校や社会で必要な力が自然と育まれます。大人が全て決めるよりも子どもたちがアイデアを出して準備した方が、みんな楽しんで参加します」と話す。シャオールの学童保育は、子どもを預かるだけではない、プラスαの価値を生み出している。【後編に続く】

(間 淳/Jun Aida)

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