どんな物か想像できる? 京都土産の「清浄歓喜団」があまりにも摩訶不思議すぎた
タナカさんという一風変わった友人がいる。どこからともなく変わったものを見つけてくる彼女が、関西旅行のお土産をくれた。
大阪万博にでも行ったのかと思ったら、まもなく閉館する大阪の味園ユニバースにライブを見に行ったらしい。
渡されたお土産は一見、何の変哲もなかった。「せいじょう……って和菓子で……お線香みたいな……」と小さな声で説明してくれたが、とりあえず和菓子か何かだろうと思って、お礼を言ってバッグにしまった。
数日後に封をあけたのだが、私のアタマははてなマークだらけになった。
・京都の伝統、清浄歓喜団
和菓子屋さんらしい、夏っぽい包み紙を開いたら、黒字に金で「清浄歡㐂團(清浄歓喜団)」と書かれた渋すぎる箱が出てきたのである。
清浄……歓喜……団?
黒字に金の箱からは、清浄なムードも、歓喜っぽいムードも、なんらかの団員的な感じもない。
しかし、名前はめちゃくちゃ夏っぽいっていうか、祭りっぽいっていうか……。
めちゃくちゃ暑いところに、クーラーとか扇風機が置かれて大喜びしてる人たちを想像する。そんな清浄歓喜団。
ちなみに、生成AIに「清浄歓喜団」の画像を作ってもらったらこんなのが出てきた。
・開けてなお想像つかず
さて、今のところ、どんなものか想像がつかないので中身を出してみる。何やら亀屋清長という和菓子屋さんが作っているらしい。
もし、和菓子だとしたら、氷をイメージしたような水まんじゅうみたいな感じかな? 涼しいイメージがする感じの。
すると、出てきたのは……瓢箪型のかたい焼き菓子のようなもの。煎餅風の生地が揚げてあるようにも見える。
瓢箪っていうか、巾着袋みたいな……? とにかく不思議な形をしている。そしてずっしりと重い。あんこか何か入ってるのかな。
ますます「清浄歓喜団」がよくわからなくなってきた。説明書を読むと、軽く焼いて温めて食べたほうが美味しい……とのことなので、オーブントースターで軽く焼いてみた。
いざ実食しようとすると、思いのほか、皮(?)のような部分が固かったので、包丁で半分にカット!
なんか、高級な揚げ饅頭的な雰囲気がある。とくに「清浄」って感じじゃあないな……!
・食べてさらに衝撃
というわけで、ドキドキしながらパクッと一口食べてみる。
こうばしい揚げ饅頭を想像しながら食べたところ、衝撃が走った!
「あんこの奥からものすごく線香のような香りがする!」
ただ、線香のような香りといっても、家庭で使う「毎日香」とかじゃなくて、お寺で使われているようなとても上等な線香の香りである。
伽羅とか白檀みたいな、奥深い香の匂いが漂うのだ。スパイスの香りとかじゃなくて、完全にお香。食べてると、京都の寺で座禅を組んでいるような気分になる。今まで食べたことがないし、これからも似たような味に遭うことは絶対ないと言い切れる味。
そういえばタナカさんがこれをくれたとき「線香が……」とかなんとか言っていたが、このことだったのか。
・なんと日本最古のお菓子だった
ネーミングも味わいもあまりにも摩訶不思議だった「清浄歓喜団」。入っていたリーフレットを見ると、非常に歴史のある、やんごとなきお菓子だったことが判明した。
亀屋清永の説明によると……
奈良時代に伝わった唐菓子の一種「団喜」です。略して「お団」と呼ばれています。 数多い京菓子の中で、千年の昔の姿そのままに、今なお保存されているものの一つで、この「清浄歓喜団」なしに和菓子の歴史を語ることはできません。亀屋清永はこのお菓子を製造する日本で唯一の和菓子処です。
なんと、奈良時代に唐から伝わったお菓子であり、和菓子のルーツともいえる食べ物だったという。さらに説明には
「清め」の意味を持つ7種類のお香を練り込んだ「こし餡」を、米粉と小麦粉で作った生地で金袋型に包み、八葉の蓮華を表す八つの結びで閉じて、上質な胡麻油で揚げてあります。(中略)亀屋清永は、その秘法を比叡山の阿闍梨(あじゃり)より習い、月の一日、十五日を中心に調製しています。
とある。実際にこし餡の中にお香が練り込んであるからあのような味なのか。そしてネーミングの「清浄」は「清め」の意味だったと聞くと、納得がいく。唐の菓子は、かつては密教のお供えもので、庶民は口にできなかったという。秘宝を阿闍梨から習った……というのがまた神秘的である。
何も考えずにパクパク食べるようなお菓子ではない。部屋を片付けて心を鎮め、お茶と一緒に静かにいただくのが良さそうだ。
これを食べたら、身が清められて長生きできそうな、そんな気がするお菓子でした。今は世界中のいろんなお菓子が手に入るけれど、これは他にはない唯一無二の味だと思う。好き嫌いは分かれるだろうけど、もし手にできたらぜひ。
参考リンク:亀屋清永
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.