水遊びが好きすぎて困った!自閉症息子はお風呂から出ない、トイレでいたずら…安全と楽しさの両立を目指して
監修:新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
水遊びが大好きな3きょうだい!お風呂の時間が楽しいのはいいけれど……
わが家の知的障害(知育発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の息子たちは水遊びが大好きです。一口に水遊びと言ってもいろいろあると思いますが、わが家の3きょうだいの遊んでいる様子を観察していると、それぞれ好みに違いがあるようです。
長男りーは水の流れを見るのが好き
次男かーは水の中で漂うのが好き
三男おーは波や大きな水しぶきが好き
というように、個性があらわれています。
そんな3きょうだいはお風呂に浸かるのも大好きです。
浴槽でそれぞれ好きな遊びをしていて、母一人で3きょうだいをお風呂に入れる際にも、遊びながら自分の順番を待っています。
しかし長男、次男は洗い終わっても、なかなかお風呂から上りたがりません。幸い三男はママっ子のため、母が上がろうとすると「自分も!!」と主張してくるのですが、上2人は声をかけてもイヤイヤ。腕を掴もうとしてもするりと抜け出し、脱力して抱き上げられないように抵抗します。
特に長男りーは(扉は閉め切ってませんが)一人になれる空間であることが気に入っているようで、最後まで上がろうとしません。また、お風呂に長く浸かっていると「熱い」という感覚がなくなってしまうからか、いつまでも遊んでのぼせてしまうこともありました。
今は暑くなってきたためお風呂の温度も控えめにして、長く入っていてものぼせないようにしています。うまく切り上げられるように、また様子を見ながらタイマーを使っていこうと検討中です……。
そこはやめて……!困ったもう一つの「水遊び」
そしてもう一つ、困った水遊びがあります。これは長男りーだけなのですが、彼は先ほど書いた通り、シャワーなどの水の流れを見るのが好きなのです。イタズラ感覚で洗面所で水遊びをしていることがありましたが、新たな場所を見つけてしまいました。それがなんと、「トイレ」だったのです……。
ある日三男を寝かしつけていた際、どこかで水の流れる音がしました。「誰かがトイレに入っているのかな~」とも思ったのですが、なんだか流れる時間が長い……気になってトイレに行ったところ、長男りーが、トイレの掃除用具を使って便器内の水が流れるところをせき止め、水をためてから一気にジャーと流して遊んでいました。綺麗に流せておらずトイレはびしょびしょ……(一応あふれた水は拭こうとしていたようで、タオルを使った形跡がありました)。
やってはいけないことをしたという自覚はあったのか、私に叱られる前に耳を押さえて「聞きたくない」ポーズをしていました。しかも、この「水遊び」は家の中だけかと思っていたら、なんと同じことを放課後等デイサービスでもやっていることが判明。先生方にも家での状況を共有して、定期的に声をかけたり、様子を見たりしてもらうようにお願いしました(幸い、特別支援学校ではやっていないようです……これは学校のトイレが完全に個室ではない環境だからかと思っています)。
支援者とも連携しながら、楽しく安全な水遊びを!
この「トイレで水遊び事件」の後、家では夫婦で連携をとりつつ、今まで以上に長男の動きに気を配るようにしました。また、次男もトイレに行って用を足すようになったことで、今では長男が必要以上にトイレに長居することが難しくなっています(笑)。放課後等デイサービスでもある程度時間が経ったら声をかけてもらうようにしたので、長男がトイレで水遊びをすることはぐっと減りました。しかし大人が「見ていない」と判断すると、こっそり用もないのにトイレに忍び込んでいるため油断は禁物です。「見ているよ〜」と目線や声をかけ続けることが大事かと思っています。
油断すると大惨事になりかねない水遊びですが、やってもいいこと、いけないことの線引きをしっかり行い、子どもたちにも伝え続けることで、楽しく安全に遊べたら良いなと思っています。
執筆/かしりりあ
(監修:新美先生より)
お子さんの水遊びについて、三者三様の楽しみ方と、困りごとについて聞かせて下さりありがとうございます。水遊びが好きなお子さんは多いですね。水遊びと一口に言っても楽しみ方は人それぞれ。きょうだいも楽しみ方の種類が違うというのがとても面白いですね。
好きな活動があることは良いことですが、切り上げることの難しさはどんな活動にもつきものです。さらに3人いると切り上げ方のタイミングにも工夫がいります。かしりりあさんが3人のお子さんの個性を尊重して上手にさばいている様子が素敵です。
また、水が好きなお子さんの中で、洗面所やトイレで不適切に遊んでしまうという困りごとはよくあることです。トイレで遊ぶのは不適切であるということの教え方に苦慮することもありますが、そういうことが起こらないよう環境設定し、適宜見守ることや、視覚支援なども用いてルールを提示したり、日常の活動の中に適切な水遊びの時間を設定してスケジュール提示をするなど、さまざまに工夫して大惨事を予防していけるといいですね。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。