『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』連載インタビュー第6回:島村三葉役・斉藤壮馬さん 前編|作品に宿る独特のリズム感とユーモア。斉藤さんと三葉がシンクロした瞬間とは?
2025年10月4日(土)より放送中の『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』。
「仮面ライダーになりたかったから」 40歳になっても本気で「仮面ライダー」になろうとしていた男・東島丹三郎。その夢を諦めかけた時、世間を騒がす「偽ショッカー」強盗事件に巻き込まれてしまい……。『エアマスター』『ハチワンダイバー』の柴田ヨクサル先生の漫画を原作とする「仮面ライダー」を愛しすぎるオトナたちによる“本気の仮面ライダーごっこ”がここに開幕します!
アニメイトタイムズでは、各話放送後にキャスト陣へのインタビューをお届け! 第6回は、島村三葉を演じる斉藤壮馬さんに第6話の物語を振り返っていただきました。
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前回はこちら
【写真】『東島ライダー』斉藤壮馬インタビュー前編【連載第6回】
三葉はバランサーとしての役割を持っている
ーー『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』という作品に対する印象をお聞かせください。
島村三葉役・斉藤壮馬さん(以下、斉藤):オーディションを受ける際に原作を拝読したのですが、タイトルにも表れているように、非常に熱量の高い作品だと感じました。熱さに加えて、独特のリズム感やユーモアがあるなと。「これがアニメーションになった時、どうなるのだろう?」というワクワクするような気持ちを抱いた記憶があります。
また、実際に収録が始まってみると、「こういう風になるんだ」というポジティブな驚きが沢山あったんです。TVアニメという形で、原作の魅力をもっと多くの方に届けられる予感がしました。
ーー斉藤さんの中で、特に魅力を感じた部分はどのようなところでしょうか?
斉藤:仮面ライダーというものが“概念”として存在している中で、「大人になる過程でそれを卒業しなければいけない」というひとつの価値観が存在する。そのうえで「俺は仮面ライダーになる」と本気で言える東島のように、幼い頃の夢を抱き続けている人たちが「本当にショッカーが存在している」という現実に直面するんですよね。
斉藤:我々の生きている世界においても、現実というのは時に残酷なもので。夢や理想に対して、ある程度折り合いをつけなければならないことがあります。それでも折れずに情熱を持ち続けている東島たちが本物のショッカー、怪人たちと対峙していく。40歳になってもなお、「好き」に対する情熱を持ち続けている東島の“物語”がそこから始まるというのは、本当に素敵だと思いました。
ーー斉藤さんはライダーマンに憧れる島村三葉を演じられています。彼のキャラクター像について、お聞かせください。
斉藤:非常に個性的なキャラクターたちの中では、比較的“常識人”寄りの立ち位置にいる、いわばバランサー的な役割のキャラクターだと思います。
もちろん三葉が大きく一歩踏み込むシーンもありますが、どちらかというと、みんなが飲み会でお店をめちゃくちゃにした時に後始末をするようなタイプですね。
斉藤:一方で、この作品においては、あまり“まとも”という感覚は必要ないとも感じています。まともっぽく見える三葉ですが、あくまでも相対的な話なんです。100%常に大声を出し続けるようなキャラクターではないからこそ、役者としても、さじ加減を試されているような面白さがあります。
ーーこういった微妙なさじ加減を要求される役は珍しかったりするのでしょうか?
斉藤:どうでしょうか。でも彼に出会えたのはとてもありがたいことだと思っています。
斉藤さんと三葉がシンクロした瞬間
ーー斉藤さんと三葉で共通している部分や共感できるところはありますか?
斉藤:元々の三葉は「僕にもブイスリーやらせてよ」と思っていたところで「ライダーマンになれ」と言われて、その道を選んだ人なんですよね。そういう感覚は何となく分かると言いますか。一葉に対して、「自分は完全に対等にはなりきれていない」みたいな、どこか尻込みしてしまう感覚というのは共感できる気がします。
ーー三葉が憧れるライダーマンについての印象もお伺いさせてください。
斉藤:実は子どもの頃、VHSで昭和の仮面ライダーを観ていたんです。その中で、一番好きだったのは『仮面ライダーV3』でした。
ーーまさにライダーマンが登場する作品ですね!
斉藤:とはいえ、「好きだった」という感覚と主題歌くらいしか覚えていなくて。今回改めてライダーマンというヒーローに触れてみると、三葉がロマンを感じるのもすごく分かると思いました。彼は元々敵として登場していて、V3と握手し合うというよりは、背中を預け合うような関係性になっていくんですよね。僕個人としても、「こういうキャラクター造形が好きだな」と思える要素が詰まっているんです。
三葉のセリフで「ライダーマンが一番熱い」というものがあるのですが、三葉を演じる中で「本当にその通りだな」と強く思いました。そこは本当に、嘘のない気持ちで三葉とシンクロできたと思います。
ーーアフレコ現場自体も非常に熱い現場と伺っているのですが、(※インタビューはアフレコ収録時期)斉藤さん自身はどのように感じていましたか?
斉藤:本当に楽しいです。毎回とても大変なんですが、その“大変さ”をみんなでポジティブに言い合えるくらい、熱量の高い現場だと思います。
斉藤:特にこの作品は、登場人物が多すぎない分、ひとりひとりのセリフの密度も高いんですよ。だからこそ、全員で収録することに意味がありますし、作品全体の熱がそのままフィルムに乗っているんじゃないかなと。「誰かがギアを上げたら、他の誰かがそれを上回る」みたいな連鎖が起きていくんです。
ここまで全員が100%以上の力で声と芝居をぶつけ合う現場って、なかなか味わえるものではないと思います。すごくいい刺激を受けますし、貴重な機会です。
ーー三葉を演じるにあたって、制作陣からのディレクションやオーダーなどはありましたか?
斉藤:キャラクター造形に関して、明確に「こうしてください」というオーダーはなかったと思います。この現場の素敵なところは、各話のアフレコの冒頭に監督やプロデューサー、音響監督がブースに入ってきて「今週もよろしくお願いします」とか、ちょっとした会話をしてくださることです。それがただの挨拶ではなくて、全員の意識を共有するための時間になっています。
ただ、アニメと原作ではリズム感が異なる部分もあるので、メリハリについての細かいディレクションをいただくことはありました。
ーー具体的にはどのようなところですか?
斉藤:ユカリスとのやり取りですね。自分が原作から受けた印象としては、三葉自身も大人ではあるので、ユカリスの押しに戸惑っているというか、少しドギマギするようなニュアンスだと思っていたんです。まあ、普通の大人は高校生とは付き合わないですけど……(笑)。
ーー(笑)。言われるまで気づきませんでしたが、よく考えるとそうですね。
斉藤:ただ、アニメでは三葉もまんざらではなさそうな感じに描かれていて、良い意味での“バカップル感”が強調されているように感じました。実際、「もっと甘くやっちゃってください」というディレクションもありました。個人的にも、そこは面白かったです。
100のお芝居に83で返す
ーーその他にユカリスとの掛け合いで大切にしていたポイントはありますか?
斉藤:やっぱり“さじ加減”がすごく難しいんです。この作品って、かなり独特なリズムがあると思っていて。三葉とユカリスだったら、一般的に言ってこう、というよりは「三葉とユカリスはそうなんだ」という事実だけを認識することが大事だと思っています。
加えて、ファイルーズさんはユカリスをすごく素敵に演じてくれているんですけど、僕自身が同じ熱量で返してしまうと、キャラクターとしてのバランスが崩れてしまうんです。アニメの方が積極的ではあるものの、バランスとしては「三葉が押され気味」であることが大切なのかなと。
ーーファイルーズさんの100のお芝居に100で返せない、みたいな感覚でしょうか。
斉藤:もちろん気持ちとしては100なんですけど、実際の表現としては控えめな場合もあると言いますか。アニメではアドリブシーンも多いので、楽しみつつもバランスを意識しています。ファイルーズさんが色々な“パス”を出してくれる中で、三葉として受ける場合もあれば、敢えて受けない場合もあって。それに関しては「申し訳ない!」と思っていました。ただ、それも含めてやっぱり楽しいですし、ユカリスとの絡みが一番多いので、毎回ファイルーズさんのお芝居にはすごく刺激をもらっています。
ーーユカリスは物語の中で過去に触れたり、心情に変化が見えるキャラクターでもありますよね。
斉藤:この作品において、ユカリスって結構特異なキャラクターだと思うんですよ。東島や一葉のように、幼い頃から「仮面ライダーになりたい」という夢を持っていた訳ではない。何なら人間かどうかも分からないですよね。だからこそ、ある意味“変わらないこと”が強さである東島たちに対して、ユカリスは“変わっていくこと”が強さになり得るキャラクターなのかもなと。それに三葉がどう関わっていくのかも、ぜひ注目していただけたらと思います。
ーー第6話の中で、印象的だったシーンについてもお聞かせください。
斉藤:やっぱり怪人が格好良いですね。内山昂輝さん演じる蜘蛛男は三葉と同じ第3話から登場していますけど、監督からのディレクションが「内山さんのままでやってください」という(笑)。それを受けた内山さんが「はい」と一言で返して、実際に演じられている姿が印象的でした。原作をお読みの方はご存知だと思いますが、蜘蛛男は物語の中核にかかわる重要キャラクターなんですよ。彼の人間に対する感情の変化も、大きな軸になるので、今後もぜひ注目してほしいです。他に印象的だったのは……結婚報告のくだりでしょうか。
ーー居酒屋の中とは思えない、凄まじい状況でした。
斉藤:正にこういうノリですよね。この作品では「普通に考えたら〜」「常識的に言えば〜」みたいな捉え方をせず、どれだけこのグルーヴに乗っていけるかが重要だと思います。
[インタビュー/小川いなり]