【絶対買うな】TemuとAmazonの「1万円ギター」を比較した結果 → ゴミが判明 / IRIN vs minsine(Bullfighter)
初めて買ったギターは3万円のクラプトンモデルのパクリでした。私(中澤)がギターを始めた頃はギターは安くとも3万円くらいしたような気がするが、Temuを見ていたらエレキギターが1万1070円で販売されていた。今ってギターが1万円で買えるの!?
衝撃を受けてAmazonを検索してみたところ、Amazonでも1万999円でエレキギターが販売されていた。2つ合わせても私がジャスコの楽器屋で買った初心者向けギター以下の価格である。激安。というわけで、この2本を購入して比べてみました。
・ブランド
謎が多いこの1万円ギター。まず、ギターのブランドを記載すると、Temuの方は「IRIN」でAmazonの方は「minsine」とヘッドに書かれている。
Amazon1万円ギターの方はページのブランド項目は「Bullfighter」と記載されているけど、それは同ページの1万2999円のギターで、1万999円の方はminsineになるようだ。ちなみに、TemuのギターもAmazonのギターも中国メーカーである。
・見た目からキテるIRIN
最初に届いたのがIRINのため、IRINの方から見ていくと、これは見た目から「1万円だしな……」と思わされる一品だ。まず、パッと見て気になったのは、ペグの汚れとフレットの傷だろうか。
ペグにはサビる前みたいな斑点がついていて、フレットにも打痕みたいなものがついている。っていうか、最初からずっと思ってたけど……
完全にアイバニーズだ。ヘッドも塗り直しただけではないかと思うほどそのまま。全体的になんとなくくすんでいるし、裏のカバーの穴はブリッジの弦を通す穴とズレているし、パッと見でも分かるくらい雑な作りだ。
・minsineの見た目
見れば見るほど「まあ、1万円だしな」が積み重なる。そもそも1万円のギターなんて買うの初めてだけど、やっぱりこんなもんなんだなー。同じ1万円で中国メーカーだし、Amazonの方も期待できない。と思いきや……
めっちゃ綺麗。ボディとかネックがキラキラしていて傷もない。裏のカバーの穴もブリッジと合っている。スゲェェェエエエ!
・チューニング事件
って違う違う、これは本来なら普通のことだ。IRINを見ているだけに新品らしいものが届いただけで衝撃を受けてしまったが、見た目も大事だけど楽器の本分は音である。そこで弾き比べようとしたところ、音を出す前に事件が起きた。IRINをチューニングしようとしたところ……
ビヨーンという感じでシャープした後、しばらくしたら音がへたるみたいにフラットする。嘘だろ。どのポイントでチューニング合わせんねん。
これ、以前の記事に書いた際「ギターはピッキングした後シャープするの普通」という声があったけど、程度の問題だ。シャープしすぎなのである。6弦のオープンでこんなにピッチが不安定だとローコード弾くだけでチューニングが狂ってるみたいに聞こえるはずだ。
それでも良いなら自己責任で買えばいい。これでいいなら何買っても満足できるだろう。まさかの音を出す前にゴミだということが判明した。オクターブチューニングは合ってるくさいのが逆に腹立たしい。
・minsine問題
一方で、minsineの方もチューニングしてみたところ、こちらのピッチはセーフゾーン。チューニングできるくらいには安定した音程が出てるし、まあ、これならアリだろう。
ただし……
オクターブチューニングはぐだぐだだった。さらには、オクターブチューニングを合わせてみたところ、ブリッジのサドルがほぼ限界までいく。こっちはこっちで危うい。1弦と4弦のオクターブがこれ以上フラットすると素人では対応できない。
結論を言うと、チューニングにおいてはどちらも不安があった。強いて言うなら、オクターブチューニングさえしたら使えるminsineの方がマシだが、一発でサドルが限界までいくのは長く使えないオーラがあっていただけない。
・弾き比べてみた感想
さて、共に弾く前に色々あったけど、最後は音についての個人的な所感を述べたい。本記事を書く前に、それぞれの紹介記事や動画でギタリストの音についての反応を見てみたところ、「音はエフェクターとアンプ次第でギターはあまり関係ない」とするコメントが意外に多かった。
いや、そんなことないと思うで? ギターによってハイが出てないものとかあって、ある程度バランス良くフラットに出てないと、アンプやイコライジングなどでは限界があるのは今でもそうだと思う。少なくとも、私がかかわったことがあるレコーディング現場ではプロデューサーから「別のギターない?」って言われたこともあるし。
そういう意味では、比較的使い勝手の良い音はminsineの方と言えるだろう。ストラトのキラッとした部分が出ていて、クリーンでも聞ける。
一方で、IRINはそういう幅広さが欠片もない。クランチでもメタリックな音になるし、クリーンは「バル~ン」という感じのもったりした響きなのでめちゃくちゃ歪ませてもチープさがあった。パワーしかない。
・総括
まあ、パワーがあればOKという人もいると思うので、ギターの音って使い方次第だ。チープさや悪い音も溶け込み方によっては独特の魅力になるし、そういう意味では音の良し悪しは用途によるというのは本当だろう。
とは言え、実際に弾き比べてみると、初心者にオススメなのは明らかにminsineである。弾く前にオクターブチューニングしなければならないのも考え方によっては勉強だし、調整されてない以外の機能は1万円と考えるとコスパが良い。
逆に、IRINは1万円とは言え、初心者は買わない方がいい。最初に練習してる時に音痴なコード感に慣れてしまうと、音感を修正するのに時間がかかるというのはよく言われることだからである。
1万円のギターなんてどれも同じようなクオリティーだと思っていたけれど、実際に購入して弾いてみると、同じ中国ブランドの中でもバカにできない差があった。セーフとアウトのギリギリのラインを削る激安ギター界隈。魑魅魍魎も跋扈する闇鍋感は興味深い限りである。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.