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容赦ない警察の暴力、若者のたちの逮捕 2019年に起きた香港の大規模な抗議運動を命懸けで撮影『灰となっても』

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容赦ない警察の暴力、若者のたちの逮捕 2019年に起きた香港の大規模な抗議運動を命懸けで撮影『灰となっても』

香港出身のアラン・ラウ監督が、2019年に起きた香港の民主化を要求する大規模な抗議運動を命懸けで撮影し、1000時間以上に及ぶ映像から制作したドキュメンタリー映画『灰となっても』が、6月28日(土)より公開される。このたび、香港では決して上映することのできない本作の日本公開を迎えるにあたり、著名人より熱い想いを伝えるコメントが到着した。また、アラン・ラウ監督から、日本の観客へ向けてのメッセージ動画が解禁となった。

香港で発生した大規模デモを記録

「第28回釜山国際映画祭」で上映され、多くの観客の注目を集めた本作は、これまで日本で公開された映画『乱世備忘 僕らの雨傘運動』『Blue Island 憂鬱之島』『時代革命』などに続き、あの時の香港、世界の混乱、後退してゆく民主主義、現在ではロス抗議デモでの警察との衝突にも通じるような、私たちが生きている時代を映し出している。

<コメント>

日下部正樹(「報道特集」キャスター)
地球上で最も開かれ自由な街は永遠に失われた。この映画は香港人の「最後の抵抗」を追った貴重な記録だ。アラン・ラウ監督の映像からは警察側の圧倒的な暴力に対する怒りと怯えが鮮明に伝わってくる。しかし映画の底流にあるのは静かな悲しみだ。二度と帰ってこない「香港」に対する諦念だ。空気のように当たり前に謳歌していた自由は驚くほど儚い。この映画は僕にその事実を突きつけてくる。

周防正行(映画監督)
剥き出しの国家権力をリアルに感じるのは、司法と戦争だ。それは、あらゆるものを破壊する、肉体も精神も、その暴力を目にする全ての者たちを。強大な力に抗う人々の団結と勇気は痛ましくも美しい。しかし忘れてはならない。その美しさはあくまでも傍観者である「観客」のものでしかない。抗う人にあるのは、絶望と地獄と希望だ。国家権力が恐ろしいのは、実はそれを作り支えているのが、私たち一人一人だということだ。

西谷格(ライター、『香港少年燃ゆ』著者)
警察を憎むのは簡単だ。その背後にいる中国政府を嫌悪するのも容易い。でも、だからこそ「なぜ? なぜ香港はこうなったんだ?」という重い問いを、どうか最後まで抱え続けて欲しい。その答えは、たぶんとても残酷なものになるだろう。作中には、さまざまな叫び声が記録されている。怒り、嘆き、哀しみ、あるいは命乞いにも似たそれらの咆哮は、一つの時代が終わらんとする香港の今際の声だったのかもしれない。

永井玲衣(作家)
映像は激しく揺れている。それは記者もまた、この激動の歴史の中を、抑圧に屈しない人々と、ともに走り、ともに闘うからだ。だがその日々には、あまりにも大きな代償も伴う。それでも、記録はつづけられる。記録が記憶になるためには、多くの人が必要だ。あなたも目撃することで、この歴史を記憶しつづけてほしい。記憶は、過去のものではなく、現在進行形なのだ。

福島香織(ジャーナリスト)
私も記者として、この映画に登場したいくつかの現場を知っている。防護マスク越しに感じた催涙ガスのにおい、目の痛み、火炎瓶の熱さ、警官に骨を折られる抵抗者の悲鳴。レトロフィルム風の褪せた色調だからこそ、脳内では極彩色の記憶でよみがえる。燃え尽きるように香港のために戦い続けた香港人、それを懊悩しながら追い続けた香港人ジャーナリスト。灰となっても、発火しそうなほど熱い自由への希求に共感しかない。

野嶋剛(ジャーナリスト・大東文化大学教授)
あの時、あの現場にいたジャーナリストたちは、一人ひとりが目撃者であり、当事者でもあった。客観と主観。警察の暴力への怒りと過激化するデモ隊への戸惑い。その狭間にあるものすべてが、本作の描き出す『失われた香港』のリアリティなのである。

ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
香港の民主主義を守る運動が失敗するのは残念ながら目に見えていました。しかし、一度味わった自由を奪われることを許せない気持ちは人間誰でも共通なので、だめだと分かっていながらも応援せずにはいられません。

阿古智子(東京大学大学院教授)
2020年の国家安全維持法に続き、2024年に反乱や外国勢力の干渉を取り締まる「国家安全条例案」が施行された香港。今も多くの人が刑務所に収監され、トラウマに苦しんでいる。そして、監視や通報を恐れる人たちにとって、自己検閲は日常になっている。しかし、葛藤し続けながらも闘い続けた人たちの記憶を決して消すことはない。これは、傷だらけの香港を愛する香港の人たちの記録。そこには、未来に向けて強く生きるための多くのヒントが隠されている。

アリック・リー(レイディー・リバティー香港代表理事)
『灰となっても』は、監督の落ち着いた語りと、2019年の激しい抗議の映像との対比が生む緊張感が非常に印象的な作品です。その静けさは、抗議の終焉とともに日常へと押し戻された香港の人々の麻痺や心の傷を静かに浮かび上がらせます。声高に語らずとも、言葉にならない感情が確かに伝わってくる、胸に深く残るドキュメンタリーです。

能條桃子(一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN代表理事)
国家が自国の市民に暴力を振るい、メディアを制限し、民主主義が崩れていく過程を命懸けで記録した映像によって、これが隣国で6年前に起きたことだと温度感を持って知る。「国家の安全を守るため」と掲げた警察によるデモ隊への暴力で散らかった街並みを、自分たちの暮らすまちだから、と片付けるデモ参加者の若者たちの様子が印象的でした。

金平茂紀(ジャーナリスト)
2019年、民主化を求めた香港の「圧殺現場」のすさまじい映像記録。一人称の語りゆえに普遍に届いている。今となっては、廃墟となった香港理工大学で、星条旗をまとう男の姿が悲しい。民主主義は「外」にはない。

『灰となっても』©rather be ashes than dust limited

『灰となっても』は6月28日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国公開

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