伝建デジタルdeスタンプラリー 〜 新しいかたちの歴史探訪。スマートフォン片手に楽しむ「伝建巡りの旅」
倉敷美観地区は、江戸時代からの町並みがほぼそのまま残り、その美しさで訪れる人々を魅了し続けている伝建地区です。
正式には「重要伝統的建造物群保存地区」(以下、「伝建地区」と記載)と呼ばれ、全国には129地区もの伝統的な町並みが息づいています(2024年9月時点)。
伝建地区は宿場町や門前町、港町、商家町など日本各地に残る、かつての暮らしが色濃く反映された町です。
岡山県では「倉敷市倉敷川畔(倉敷美観地区)」だけでなく、「矢掛町矢掛宿」、「高梁市吹屋」、「津山市城東」、「津山市城西」の合計5地区が選定されています。
2025年で伝建地区は制度創設から50年の節目を迎え、2024年8月7日(水)〜2026年1月25日(日)まで「伝建デジタルdeスタンプラリー」が開催中です。
伝建地区としての倉敷美観地区の魅力やデジタルスタンプラリーの楽しみかたを取材しました。
「伝建デジタルdeスタンプラリー」の概要
一般的にスタンプラリーといえば、スタンプを押すためのカードや冊子を持ち歩き、目的地のスタンプ集めるといったものです。
「伝建デジタルdeスタンプラリー」は、デジタル……つまりスマートフォン(以下、「スマホ」と記載)のGPS機能を使ってスタンプを集めます。
全国各地の伝建地区でサイトを開くと、スタンプ取得画面が表示されるので、タップしてスタンプをゲットできます。登録は非常に簡単で、スタンプカードなどの紛失がないのもうれしいところです。
集めたスタンプ5個以上で、全国各地の伝建地区の名産品が当たる抽選に応募できます。
伝建デジタルdeスタンプラリー参加方法
参加方法は以下のとおりです。
・参加者用二次元コード(QRコード)の読み込み、または、「こちら」から直接遷移して参加登録
・スタンプラリーのポイント(全国127か所の伝建地区)でチェックボタンをタップ(2024年9月時点)
・スタンプをためて抽選に応募可能(A賞 スタンプ10個で応募可能:全国各地の伝建地区所在市町村の名産品5000円相当。B賞 スタンプ5個で応募可能:同左3000円相当)
期間中、何回でも応募可能ですが、一度取得したスポット分は重複してスタンプ取得はできません
伝建地区としての倉敷美観地区
「伝建地区」として倉敷美観地区を訪れると、観光地の見方は変わるのでしょうか。他の伝建地区を訪れる際の参考にもなるかもしれません。
伝建地区の魅力や「伝建デジタルdeスタンプラリー」の楽しみ方について、倉敷市教育委員会生涯学習部文化財保護課谷中勝一(たになか かついち)さんと迫田圭一郎(さこだ けいいちろう)さんに話を聞きました。
──そもそも「伝建地区(重要伝統的建造物群保存地区)」とは具体的にどういったものなんでしょう?
谷中(敬称略)──
重要伝統的建造物群保存地区は、1975年(昭和50年)に制定された「文化財保護法」の改正により、歴史的価値のある町並みや建造物群を保護、保存するために設けられた制度です。
それ以前の日本は急速な近代化の波にさらされ、古い建物や街並みが次々と姿を消していきました。
そこで、歴史的な建造物群を町全体として保存する動きが起こり、特定の地域に対して伝建地区として選定するようになったのです。
岡山県以外では「白川村荻町(岐阜県)」【白川郷】、「太田市大森銀山(島根県)」【石見銀山】などの世界遺産登録地区や「仙北市角館(秋田県)」、「京都市祇園新橋(京都府)」などもあげられます。
──「伝建地区」に倉敷美観地区が選定されたのはいつですか?
谷中──
倉敷美観地区の町並み保護は住民主体で行政よりも早く取り組んでいて、1968年(昭和43年)に倉敷市は美観地区の保存を目的として「倉敷伝統美観保存条例」を制定されました。
その取り組みが、のちに文化財保護法の改定により行政とタイアップして、1979年(昭和54年)に伝建地区に選定されました。
──「伝建地区」は現在も増え続けているのですか?
谷中──
はい。増え続けています。
現在伝建地区に選定されているのは、2024年に2つ増えて全国106市町村で合計129地区(2024年9月時点)になります。
1979年(昭和54年)に伝建地区を持つ全国13市町村が集まり、全国伝統的建造物群保存地区協議会(以下、「伝建協」と記載)が発足しました。
倉敷市はこの13市町村のひとつで最初期の段階から取り組んでいます。
伝建協では新しく選定された伝建地区を含め、歴史的な町並みを守るために、会員の市町村でさまざまな情報を共有しています。
──では、他の伝建地区にはない倉敷美観地区の魅力などがあれば教えてください。
迫田(敬称略)──
和洋折衷でしょうか。
──和洋折衷?
迫田──
伝建地区は大きく分類すると、以下に分けられます。
・宿場町、集落、港町、商家町、産業と結びついた町並み
・社寺を中心とした町並み
・茶屋の町並み
・武家を中心とした町並み
多くの伝建地区は、江戸時代から宿場町や伝統的集落、社寺を中心とした町並みなどのようにいわゆる「和」の風情を持つものが中心です。
倉敷美観地区は「商家町」に分類され、江戸時代の白壁の建物に加えて、さまざまな時代の建物が共存しています。
たとえば、明治22年に建てられた倉敷紡績所(現クラボウ)の本社工場を、昭和44年に改装した「倉敷アイビースクエア」。
大正11年に建設された「旧中国銀行倉敷支店本町出張所」や昭和5年に完成した「大原美術館」などの洋式の建築があります。
そして、倉敷川沿いに立ち並ぶ柳が自然に調和し、美しい景観を生み出しています。この風景は、他では観られない独特な魅力があるのではないでしょうか。
──それでは、「伝建デジタルdeスタンプラリー」の楽しみかたを教えてください。
迫田──
スマホのGPS機能を利用して、各伝建地区のスタンプを手に入れます。アプリをダウンロードするタイプではなく、公式サイトの二次元コードから登録するだけなので、どなたでも無料で参加できます。
また、スタンプのサイト画面には伝建地区のマップやエリア一覧などもあり、スタンプの入手ポイントもわかりやすくなっていますよ。
スタンプを集めると、抽選で特産品がもらえるのも大きな魅力かと思います。
また、伝建地区でスマホを使って撮った写真を、Instagramに投稿すると参加できる「Instagram#伝建フォトキャンペーン」も同時開催中です。
キャンペーン期間は2024年8月31日(土)〜2025年5月10日(土)なので、伝建デジタルdeスタンプラリーと並行して楽しんでもらえたらと思います。
──読者にメッセージをお願いします。
谷中──
岡山県には伝建地区が5か所ありますので、県内だけで5つのスタンプを入手して伝建地区名産品の抽選に応募できるんです。
これを機会に、全国各地でスタンプラリーに参加しているかたに倉敷美観地区の歴史的な町並みを巡り、素晴らしい景観と共に、食文化や生活文化など新たな魅力に触れていただいて、岡山県内に住んでいるかたにもスタンプラリーを通じて倉敷美観地区の魅力を再発見してもらいたいです。
おわりに
取材終了直後、そのまま倉敷美観地区を訪れてみました。
見慣れたはずの町並みなのに、建物、屋根、窓、立ち並ぶお店などを新鮮に感じられたのは、私の意識が変わったからかもしれません。不思議な感覚でしたが、「伝建デジタルdeスタンプラリー」は新たな旅の始まりを予感させるものでした。
良い機会なので、まずは岡山県内にある「伝建地区」5つを訪れて、特産品の抽選応募権を手に入れようと思います。近県の「たつの市龍野(兵庫県)」や「福山市鞆町(広島県)」など、他の伝建地区への思いも広がります。
ぜひ参加して、スマホ片手に「伝建巡りの旅」に出かけてみませんか。
岡山県内にある「伝建地区」5か所
・倉敷市倉敷川畔伝統的建造物群保存地区
・津山市城東伝統的建造物群保存地区
・津山市城西伝統的建造物群保存地区
・高梁市吹屋伝統的建造物群保存地区
・矢掛町矢掛宿町伝統的建造物群保存地区