ヴェルスパ大分 「勝利至上主義」の先にあるもの 【大分県】
ベンチ前で声を張る中村元監督と、その背中に呼応するようにほえる金崎夢生。いま、ヴェルスパ大分のピッチ上には、確かな情熱が生まれている。
J3昇格を目指す今季、ヴェルスパは6節を終えて4勝1分1敗。勝ち点13で3位、首位とはわずか2ポイント差。開幕からホーム無敗の4連勝と、結果が確実にチームの勢いを裏付けている。
その背景には、今季から指揮を執る「火の玉監督」の存在がある。中村監督は就任早々、「勝つことがすべて」と語り、徹底した現実主義を貫いてきた。戦術より情熱。美しさより結果。試合中もベンチからピッチ際まで駆け寄り、選手にげきを飛ばす。
その熱量をピッチで具体化している選手の一人が金崎夢生だ。昨季シーズン途中に加入。どこか孤高な印象もあったが、今季はベンチを飛び出し、仲間と拳を突き合わせて戦っている。6節終了時点で5得点はリーグ最多。元日本代表であり、Jリーグでも実績十分のベテランが、JFLの舞台でここまで泥くさく戦う姿は若手にとって何よりの刺激だ。
仲間とともに勝利を目指す金崎夢生
「元さんの存在がめちゃくちゃ大きい。監督が変わってチームの一体感がまるで違う」と金崎は語る。その言葉通り、チームは今、勝利への執着心を共有している。
得点源となっているのは、浜崎拓磨のキックを生かしたセットプレーだ。中村監督はコーチ陣とともに選手間のすり合わせを徹底。ピッチ上では、狙いすましたボールに泥くさく飛び込む。華やかさはない。だが、昇格に必要なのは、1点でも多く、1勝でも多く積み上げることだと選手も分かっている。
5試合ごとに「勝ち点11」という目標を定める中村監督は、数字でチームを動かす現実主義者でもある。その一方で、勝ち切った試合後には、選手たちの努力に対して真っすぐに感謝を伝える。そのバランスが、選手を走らせ、チームを前へと進めている。
勝利至上主義のチームが、この先にどんな景色を見るのか。泥くさくていい。熱くていい。昇格という一つのゴールに向かって、その一歩一歩を確かに踏みしめている。
勝利のために体を張る選手たち
(柚野真也)