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中森明菜の恐るべき変化!映像だから伝わってくるアイドルからアーティストへの成長過程

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1987年06月03日 中森明菜のシングル「BLONDE」発売日

NHKで6月に放映された明菜の映像が公開


1980年代に中森明菜が出演したNHK番組の映像がデジタルリマスターで楽しめる『中森明菜 Best Performance on NHK』。今年の4月1日から配信がスタートし、毎月1日と15日の2回、公式サイトで数本まとめて公開されている。これまでテレビで流れていたアナログ映像と比べると、画質の差は歴然。筆者も公開の度にチェックしているが、大画面の4K画質で見ると、歌、ダンス、衣装が溶け合ったショーを眼前で鑑賞している錯覚に陥る。明菜は歌姫であり、優れたエンターテイナーであると再認識させられること間違いなしだ。そんなお宝映像が増えている最近の明菜だが、6月15日には次の4曲が新たに公開された。

▶ サザン・ウインド
  NHK『レッツゴーヤング』1984/6/24
▶ ミ・アモーレ〔Meu amor é…〕
  NHK『レッツゴーヤング』1985/6/9
▶ ジプシー・クイーン
  NHK『ヤングスタジオ101』1986/6/22
▶ BLONDE
  NHK『ヤングスタジオ101』1987/6/14

今回は、1984年から1987年までの6月に放映された映像が集められた。しかも、その時期にリリースされた新曲ばかり。通しで見れば、明菜の歌唱力と表現力の変化が時系列で楽しめる。ということで、明菜の “変化” を切り口に、映像を通じた4曲の見どころ、聴きどころを紹介したい。

「サザン・ウインド」ではアイドル全開の表現力で挑発


前年まで、少女と大人の間で揺れ動く恋心を歌ってきた明菜だが、この年からは世界に進出。前曲「北ウイング」で成田空港から飛び立ち、この曲では、ココナツ葉かげのシルエットが見られる南国リゾートに滞在している。誘惑しなれた男たちを挑発したりと、歌詞の中では大人の女性に成長した明菜。しかし当時の明菜は、まだ18歳。時折見せるあどけない笑顔がキュートで、アイドル全開の表現力で視聴者をも挑発してくる。指をくるくる回したり、カメラ目線でウインクしたりと、自分自身を歌で表現することを心底楽しんでいて、見る側も楽しい。個人的ベストシーンは1番の終わり。歌い終えてホッとした笑みを浮かべる表情は、何度見ても無茶苦茶可愛い。

歌、踊り、表情によるトータルな表現力がアップした「ミ・アモーレ」


1985年の『日本レコード大賞』を受賞したこの曲の舞台は、リオのカーニバル。ラテン・フュージョン音楽の第一人者、松岡直也が作曲したドラマチックで高低差が激しいメロディーを、明菜は見事に歌い切っている。この年の明菜はアイドルからアーティストへ変化する転機だったが、それは映像でも確認できる。

シックな黒の衣装に身を包み歌う明菜からは、1年前の「サザン・ウインド」で見せたアイドル性が薄れ、歌、踊り、表情によるトータルな表現力がアップしているのは一目瞭然。特に、サビ直前の「♪ふたりはぐれた時 それがチャンスと」から続く部分では、抑えていた激情を一気に噴出させる。個人的ベストシーンは、やはりラストの “アモーレ三連発”。曲中の最も高い音域でビブラートを効かせる明菜の歌唱は絶品。燃え尽きるようなパッションを感じる。

「ジプシー・クイーン」では歌詞が憑依したような表現力の凄み


「♪百二十五頁で 終わった二人」という印象的なフレーズで始まるこの曲。前作の「DESIRE」では炎のように燃える恋心が歌われるのに対し、ミディアムテンポのこの曲は、まるで現世の恋愛を達観したような内容。「♪生まれる前の星座(くに)で あんなに愛し合って」と前世に思いをはせ、「♪振り向く私はもう 化石になってもいい 貴方と次の星座で逢えるまで」と来世に期待しているのだ。

まるで悟りの境地に至ったように表情を抑え丁寧に歌い上げている点に、歌詞の主人公が憑依したような表現力の凄みを感じる。一方で、肩を露出させた青いドレスがセクシーで、20歳とは思えない妖しい魅力を醸している。星空を演出し、流星が飛び交うスタジオのセットも圧巻だ。個人的ベストシーンはサビ。表情を殺しつつ、さまざまな方向に目を向けたり、目をつぶったり、手の仕草を加えたりと、明菜らしい細かなパフォーマンスが見られる。

歌姫としての貫禄が漂う「BLONDE」の歌唱とダンス


この曲の原曲は、外国人作家が全曲を提供して明菜が英語で歌ったアルバム『Cross My Palm』の収録曲「THE LOOK THAT KILLS」。英語の曲に日本語の歌詞を付け、原曲から音域を下げて歌っていることで、原曲とは別の魅力を引き出すのに成功している。

映像では、当時話題になったエルメスのスカーフを素材に用いたボディコン風衣装が見どころ。いかにもバブル絶頂期らしいが、「♪時代が甘やかすから 男たち 愛に手を抜くの」と視聴者をそそのかす明菜にはピッタリ。メリハリを付けた歌唱と艶っぽいダンスからは歌姫としての貫禄が漂い、表現力の極みを感じる。個人的ベストシーンは間奏。不敵な笑みをチラリと見せて踊る姿が、たまらなく格好良い。何度もリピートしたくなること請け合いだ。

映像だからこそ伝わる表現者としての魅力


こうして、18歳から21歳までの4年間の明菜の映像を時系列で見ると、アイドルからアーティストへの変化の過程がよくわかる。そして、見る人を楽しませるエンターテイナーとしての素質や、歌を自分色に染め上げる表現者としての魅力も、映像だからこそ伝わってくる。“明菜はテレビで歌うたびに良くなった” と、ワーナー・パイオニア(現:ワーナーミュージック・ジャパン)のディレクターで当時明菜を担当していた島田雄三氏は後年述べているが、そうした成長を楽しめるのも、この企画の素晴らしさ。7月以降も新たな映像の配信が予定されているので、当時のテレビのアナログ映像では気付けなかった明菜の表現力を再発見するのが、今から楽しみだ。

<参考文献>
・ヒットソングを創った男たち~歌謡曲黄金時代の仕掛人 / 濱口英樹(シンコーミュージック 2018年)

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