ジブリ映画『もののけ姫』シシ神の森を守る犬神・モロの君の解説まとめ|全国のIMAX劇場にて4Kデジタルリマスターの期間限定上映
1997年公開のスタジオジブリ作品『もののけ姫』。宮崎 駿監督が構想16年、製作に3年の月日をかけて生み出した渾身の超大作です。
物語の主な舞台は人を寄せ付けない深い神々の森と、鉄をつくる城砦のようなタタラ場。森を守る神々と森を切り拓く人間が争う惨劇のなかで、死の呪いを解く方法を求めて西の地へと向かうアシタカは、やがて数奇な運命に巻き込まれていきます。
本稿では、シシ神の森を守る犬神・モロの君をご紹介。キャラクター像やサンとの関係、シシ神の森についてなどを解説します。
また、2025年10月24日(金)より全国のIMAX劇場にて、4Kデジタルリマスターの期間限定上映が決定しました。この機会にIMAXの高精細な映像とクリアな音響で蘇った『もののけ姫』を、ぜひ劇場でご鑑賞ください!
※本稿には『もののけ姫』のネタバレが含まれます。
シシ神の森を守る犬神・モロの君
モロの君はシシ神の森を守る、齢300歳の強靱なメスの犬神。高度な知能の持ち主で人語を解します。サンの育ての親であり、母親心を見せる場面も。シシ神の森を侵す人間を憎み、特にエボシ御前には敵意を持って執念深く命を狙っています。齢500歳の鎮西(九州)の猪神・乙事主とは旧知の間柄。
シシ神の森
人を寄せ付けない太古の深い森の中には、人語を解する巨大な山犬や猪などの神獣たちが潜んでいます。聖域を侵す人間たちを襲い、荒ぶる神々として恐れられていました。物語の舞台のひとつとなる「シシ神の森」は、屋久島をモデルに描かれています。
シシ神は生命の授与と奪取を行う神獣で、新月に生まれ、月の満ち欠けと共に誕生と死を繰り返す存在。慈愛に満ちているようにも残忍にも見える顔で、その首には不老不死の力があると信じられており、人間に狙われています。ディダラボッチはシシ神の夜の姿で、十数メートルはあるであろう巨人。独特の模様と半透明の体を持ち、体内に青い光を放ちながら夜の森を徘徊します。
サンを自分の娘として育てる
モロはサンの育ての親。森を侵した人間が生贄として捧げた赤子(=サン)を、犬神のモロは自分の娘として育ててきました。森を侵す人間たちを激しく憎み、山犬として生きてきたサンは、人間との戦いに赴く度に土面を着けて毛皮を被ります。
モロの子
モロほどの知能はないですが、人語を解する犬神の兄弟。サンを守り、サンと共に人間と戦います。サンに従順で甘える様子も。アシタカとはやがて協力関係となり、アシタカの相棒であるヤックルとも信頼関係を築いています。
エボシ御前との対立
深山の麓にある城砦のような製鉄工場「タタラ場」では、エボシ御前を筆頭に独自のコミュニティを築いています。製鉄には森を削るなど自然破壊を伴うため、シシ神の森を守るモロ一族らの怒りをかっていました。
エボシはシシ神退治を条件に師匠連という謎の組織から石火矢衆40名を借り受け、ジコ坊に付き従う唐傘連とも連携。猪神やモロ一族ら森の神々との大決戦に挑みます。
アシタカへの言葉
アシタカはエミシ一族の長となるべく生きてきた若者。強い正義感の持ち主であり、村の人たちを守るためにタタリ神を倒して死の呪いをかけられてしまい、それを解く方法を探るために村を出て西の地へ。
森と人間が争う惨劇のさなか、アシタカはサンとの出会いやタタラ場の人たちとの関わりを経て、森と人間の双方にある正義や事情に葛藤しながら、両者が共に生きる道を訴えかけていきます。しかしモロの言葉は非常に厳しいものでした。
アシタカは争いからサンを解放するよう詰め寄りますが、モロはサンの身の上を語り、「お前にサンを救えるか」と一蹴。生贄として森に捧げられ、人間にもなれず山犬にもなりきれぬサンを案ずる母親のモロは、何も知らない人間の若者の言葉に激昂していました。アシタカは「共に生きることはできる」と答えますが、もうお前にできることは何もないと突き放されてしまいます。
森と運命を共にするモロ一族
人間によって放たれた毒ツブテにより身体が侵されつつあるモロ。諦観した犬神であっても死は恐ろしいものですが、既に充分に生きたと己の死を見つめ、シシ神は傷を治さず命を吸い取るだろうと悟っています。
森と生き、森が死ぬ時は共に滅びる。そんなモロの意思をサンもまた受け継いでおり、森のために戦う決意は揺るぎないものでした。人間との大決戦では罠だと分かっても突き進む猪神たちの力になり、サンは命をかけて共に立ち向かいます。シシ神の傍に残るというモロにお別れを告げて。
アシタカに対して「お前にあの娘の不幸が癒せるのか」と厳しい態度で接しているモロですが、サンには「お前にはあの若者と生きる道もあるのだが……」と、人間として生きる道を残しています。森と運命を共にするというモロからこのような言葉が出るのは、森と人間のあいだで揺れ動く娘を思いやる母親心からでしょう。
エボシへの憎悪は根深いものですが、それ以上に娘のサンへの愛情は深いもので、残しておいた力をサンの救出に使い、アシタカに愛する娘を託しています。そして、最後の最後までエボシに噛みつこうとする執念を見せました。
モロの君を演じているのは美輪明宏さん
モロの君を演じているのは美輪明宏(みわあきひろ)さん。1935年5月15日生まれ、長崎県出身。スタジオジブリ作品では『ハウルの動く城』の荒地の魔女も演じています。