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虎舞を国際交流のツールに 郷土芸能伝承を考える釜石高生ら 魅力再認識し担い手増加策に意欲

かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす


 郷土芸能「虎舞」を通じた地元高校生と外国人観光客の交流会が10日、釜石市箱崎町の箱崎集会所で開かれた。虎舞を披露したのは、郷土芸能の担い手不足解消をテーマに研究する釜石高2年のゼミグループメンバーを中心とした有志11人。同市の観光地域づくり法人かまいしDMCの企画に協力した。「みちのく潮風トレイル」を目的にハワイから来日した3人に演舞を披露。お囃子(はやし)や虎の頭(かしら)を操る体験もしてもらい、郷土色豊かな国際交流が繰り広げられた。

 この日集まった1、2年生11人は居住する釜石、大槌、山田3市町で、虎舞や神楽、鹿踊(ししおどり)の団体に所属。夏に米国や中国からの訪日学生に虎舞を披露した経験もあり、同社から声がかかった。生徒らは自己紹介や踊りの演目説明を英語で行い、虎舞の代表的演目「矢車」「跳ね虎」「笹ばみ」を披露した。

自己紹介や虎舞の解説は日本語の後に英語で。女子生徒2人が担当


春のうららかな日差しを浴びて虎が遊び戯れる様子を表現した「矢車」


威勢のいいお囃子とかけ声で演舞を盛り上げるメンバー(左)。外国人客は初めて見る虎舞にこの笑顔(右)


 演舞の後は体験コーナー。外国人客は囃子の一節を太鼓で叩いたり、虎頭を動かしてみたりと初めての体験を楽しんだ。生徒らは覚えている英単語と身ぶり手ぶりで、道具の使い方を教え、地域の芸能の魅力を発信した。

 同社によると、みちのく潮風トレイルを訪れる訪日客は増加傾向にあり、市内では箱崎白浜の「御箱崎の宿」や根浜の「宝来館」、キャンプ場に宿を取るハイカーが目立つという。こうした訪日客は地元住民との交流も大切にしており、今回は同社が管理する御箱崎の宿の宿泊者向けに同交流会を企画した。リー・ベリンダさん(45)は「とても感動的。踊ってみると簡単じゃないことが分かって、パフォーマンスの素晴らしさを実感した」、チョー・ダンさん(48)は「若い高校生世代が地域に伝承しようと活動する姿に感銘を受けた。踊りや音楽の歴史的、文化的背景について知っているのも素晴らしい」と、貴重な体験を喜んだ。

外国人客は虎頭や幕の動かし方を教わって踊り体験


お囃子の太鼓にも挑戦!見よう見まねでリズムを刻む


 ゼミメンバーの一人で、幼い頃から只越虎舞で活動する菅田悠真さん(2年)は「郷土芸能の魅力を発信する上で、海外の人の印象を知ることも必要。英語をもっと頑張って発信力を高めたい」と意気込む。国際交流を機に有志で結成する“釜石高虎舞”は「今までの団体間の垣根を超えて、もっと広い視点で虎舞を広めていこう」と、生徒らが各団体の良さを融合させて演舞。男女や居住地関係なく門戸を開き、担い手育成につなげたいとの思いも込め、新たな活動を模索する。

最後は集まったみんなでお囃子体験。外国人客も声を出して一体感を味わう


 同企画を立案した、かまいしDMCで活動中の市地域おこし協力隊の木野遥香さん(24)は「箱崎半島を訪れる訪日客は漁村文化の体験にも関心が高い」との感触を得て、海岸部に古くから伝わる虎舞に着目。釜石高“郷土芸能ゼミ”の活動を知り、今回のオファーにつなげた。「高校生が国際交流できる機会を提供すると同時に、訪日客が釜石を訪れる際の付加価値のようなものを見い出せれば。交流会の継続開催を視野に、より良い形を考えていきたい」と木野さん。先輩社員らと今後の展開に夢を膨らませる。

現在進行中! 釜石高“郷土芸能ゼミ”とは? 三陸国際芸術祭で活動紹介


郷土芸能の担い手不足解消をテーマに探究活動を行う釜石高2年生のゼミメンバー


 釜石高の2年生が取り組むゼミ活動は、生徒たちの興味や疑問を出発点に自らテーマを決め、調査・研究などの探究活動を行うもの。数人がグループとなり1年を通して活動するが、今年度、地域課題に目を向けたグループの一つが「郷土芸能ゼミ」。担い手不足をどう解消するか―をテーマに活動している。5日は市民ホールTETTOで開かれた「三陸国際芸術祭」に参加。自分たちの活動についても紹介した。

 同ゼミメンバーは普段、各地の郷土芸能団体で活動する5人。釜石市の玉木里空さん(東前太神楽)、菅田悠真さん(只越虎舞)、三浦海斗さん(小川しし踊り)、大槌町の三浦神虎さん(陸中弁天虎舞)、山田町の山﨑柚希さん(八幡太神楽)だ。「年々、郷土芸能に参加する若者が少なくなっている」と感じていたことから、地域の祭りを途切れさせないためにも担い手を増やしたいと考えた。

5日に行われた三陸国際芸術祭で自分たちの活動を紹介=TETTO


 「郷土芸能について詳しく知らないため、参加しづらいのでは?」と仮説を立てた5人。検証のため、地域の小中高生にアンケートを行った。郷土芸能に対しての印象、芸能団体への所属状況、祭り参加者を増やすための方策など6項目について聞いた。浮かび上がったのは、参加への敷居の高さや送迎問題、少子化による影響。さまざまなデータを得て、担い手を増やすには▽地域を限定しない受け入れ態勢▽各団体が互いに尊重し合い、協力し合える関係の構築▽効果的な魅力発信―などの必要性を感じた。

観客にも問いかけながら活動発表。「郷土芸能は絶対に絶やしてはならない」との声があった


ゼミメンバーらは会場で演舞を披露した鵜住居虎舞の演目「跳ね虎」も体験


 4、5の両日、開催された同芸術祭には約3千人が来場。同ゼミメンバーは若手芸能者が継承について語り合う公開ディスカッションにも参加し、多くの学びを得た。玉木さんは郷土芸能への興味、関心の高さを感じ、「担い手の一員としてうれしい。自分たちの芸能に誇りを持ってやっていける」と励みになった様子。ゼミでは今後、釜石、大槌の団体を招いて地元小中高生に伝統芸能の良さを体験してもらう会も開きたい考えで、「次世代を担う自分たちが積極的に動くことで担い手を増やし、地元郷土芸能を盛り上げていきたい」と意を強くする。

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