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森山良子のジャズアルバム「Life Is Beautiful」大江千里プロデュースのニューヨーク録音

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2024年12月18日 森山良子のアルバム「Life Is Beautiful」発売日

いつまでも若々しい、憧れの大人の女性、森山良子


♪ワタシはモリヤマリョウコ~

カウントから飛び出した1曲目の最初がこの自己紹介。わたしは思わず笑ってしまった。それ以来しばらく、この気持ち良い歌唱っぷりが耳にこびりついて離れない。皿洗いしながら鼻歌まじりに歌ってしまっている。あの「さとうきび畑」を歌っていた森山良子さんがこんな歌を歌ってるのよ?

ニッポン放送『オールナイトニッポン MUSIC10』の月曜日パーソナリティとしてもおなじみの森山良子さん。上品で落ち着いていて、優しい語り口のお喋りも魅力的な、いつまでも若々しい、憧れの大人の女性だ。

2003年にはスタンダード中心のジャズアルバムを発表


森山良子さんとジャズ? 実は森山良子さんのルーツだったりもする。良子さんの父・森山久さんはサンフランシスコ生まれのジャズトランペッター。母・浅田陽子さんは第二次世界大戦前、吉本ダンシングチームでスウィングを歌っていたジャズシンガーだった。

5歳の頃からジャズが大好きでジャズシンガーを夢見ていた良子さんは、成城学園高校在学中からカントリーバンドで歌っていた。1967年1月に来日した当時の世界的フォークシンガーであるジョーン・バエズのステージのゲストで歌い、“日本のジョーン・バエズ" と称された。その後も歌謡曲からポップス、スタンダード、童謡までジャンルを問わず幅広く歌っており、長くジャズシンガーへの夢は封印されていた。

しかし、2003年にはスタンダード中心のジャズアルバムを発表。ニューヨークでライブ活動を行った。それからもクラシックやスタンダード、日本語のロックのカバーを含めて本当に幅広いジャンルの歌を発表してきた。本作は2003年のジャズアルバムから20年を経て、ブルックリン在住のジャズピアニスト・大江千里さんがプロデュースする日本語のジャズボーカルアルバムである。

あたしの遺言のつもりで真剣にジャズアルバムを作りたい


ところで、何故に森山良子さんと大江千里さんの接点は? という疑問をお持ちの方も多いのではないだろうか。大江千里さんのNoteによると、2人の出会いは1985年頃。森山良子さんの長女の奈歩さんが大江千里さんのファンだったことからリハーサルスタジオを訪れたという。そして2022年、秋元康さんがプロデュースするTOKYO FMのラジオに大江千里さんが出演した際、千里さんはトークの相手として森山良子さんを依頼。

ある日、良子さんから “あたしの遺言のつもりで真剣にジャズアルバムを作りたい” という言葉を大江千里さんは受け、いろいろお喋りをしながら曲のモチーフをつくっていったようだ。このお二人には少なくとも二つの共通点がある。ひとつはネズミ年生まれ、もうひとつは、ジャズが好きだったけれどジャズにたどり着くまでに回り道があったこと。

良子さんはこのアルバムの制作にあたり、忙しい中を何度もジャズ留学としてニューヨークに通った。講師のひとりであるニューヨーク・ヴォイセスのローレン先生は、“Senriや私が太刀打ちしても敵わない経験値とアイデア、テクニックそして広い心を持っている” と良子さんを評した。大江千里さんは自身のライブで、森山良子さんのことを日本のバーバラ・ストライザンド、日本のジョーン・バエズ、いろんなジャンルを歌う国民的歌手、と紹介している。

本当に、世界にひとつだけのわたしだけのジャズ


森山良子さんによる日本語のジャズボーカルアルバム「Life Is Beautiful」。レコーディングは 2024年8月にニューヨークのバンカー・スタジオで大江千里トリオ (大江千里 (p)、Matt Clohesy (b)、Ross Pederson (ds))とともに行われた。というわけで、ここからはこのアルバムを紹介する。

全9曲。うち7曲は大江千里さんの書き下ろし。カバーのうち1曲は大江千里さんの「Gloria」なので「NADA SOUSOU」以外はすべて大江千里メロディだ。ジャズピアニストに転向して以来、千里さんのジャズ作品のメロディに日本語の歌詞とボーカルが乗るのは初めてだ。彼の書く “Senri Jazz” は日本語のうたがあることでより映える、という証明のようなアルバムでもある。

1曲目、千里さんの “One,Two” というカウントではじまる「MORIYAMA」。“わたしは森山良子” という自己紹介ソング。影響を受けたジャズのレジェンドたちの名前を曲中で呟き、最後を飾るのは良子さんの父、トランペッターの森山久さん。非常に気持ちよさそうに歌う良子さんの後ろで “MO-RI-YA-MA” と野太いコーラスを聴かせるミュージシャンたちも素晴らしい。 「♪ワタシはモリヤマリョウコ~」と満面の笑みで歌うステージでの良子さんが楽しみな、本当に “世界にひとつだけのわたしだけのジャズ” だ。

2曲目「LOST AND FOUND」。若い頃に亡くなった恋人に対して、年を重ねた女性が話しかけるラブソング。歌のなかの主人公の気持ちになって聴いていると泣けてくる。

3曲目は軽快なボサノバ「Oshaberi Bossa Nova」。良子さんが若い頃にラスベガスからルート66を友人とドライブした想い出をヒントに、シカゴから友人とおしゃべりしながらのドライブの心象風景が描かれる。

4曲目は落ち着いたジャズワルツ「Futari Dakeno Togetherness」。器楽曲のような難しいメロディ。良子さんの落ち着いた低音から美しい高音までヴォーカルが楽しめる。千里さんが2021年に発表したジャズピアノ作品「Togetherness」を新しいヴォーカルナンバーに新たに仕立てたという印象。

5曲目「TONIGHT’S SPECIAL」は、いまの歌手・森山良子さんのリアル。等身大の姿がそのままジャズになったような楽曲。

6曲目「Life Is Beautiful」は先行デジタルシングルとして配信されている。大江千里節ともいえるメロディと、誰にでもあるような心象風景を描いた歌詞が印象に残る。

7曲目「Gloria」は大江千里楽曲のカバー。クラシカルな良子さんのボーカルが、千里さんのピアノとデュエット。オリジナルは1987年のアルバム「Olympic」のラストに収録されていた。

8曲目「NADA SOUSOU」。ボッサ風に仕立てた「涙そうそう」のセルフカバー。

9曲目「Soramimi Datte」。“I Love You え、そらみみだって?” という歌詞にキュンと来た。もう少し良子さんとこの大江千里トリオの演奏を聴いていたいと思わせる小粋な1曲。

森山良子というボーカリストの底力をあらためて感じた世代を問わず楽しめる作品集


大江千里さんは自身のNoteにこんなことを記している。

「ユーミンや中島みゆきさんを聴くように森山良子ジャズを聴いて笑ったり泣いたりしてほしい、元気になってほしい、そんな願いが僕たちの中にはあった」


ジャズというジャンルをまとってはいるものの、世代を問わず楽しめる作品だ。日本語も英語も聴きやすく、森山良子さんというボーカリストの底力をあらためて感じた。何よりも、演奏も歌もハッピーオーラに満ちているのがいい。これから、あちこちで流れているといいな。そんなことを思って、今日も鼻歌で「♪ワタシはモリヤマリョウコ~」と歌っている。

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