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エアタグの悪用が急増中?紛失防止タグによるストーカー被害と法の抜け穴とは

TBSラジオ

きょうは、いま急速に普及している「ある便利グッズ」についてです。それは「紛失防止タグ」。財布やカバン、鍵などなくしやすい持ち物に取り付けて使うキーホルダーのようなもので、代表的なのが、米アップルの「AirTag(エアタグ)」。スマホと連携させておけば、「あれ、どこに置いたっけ?」というときに、スマホのアプリで位置情報を確認できる便利なツールです。

知らぬ間に「居場所を知られている」かもしれない

ところが先日警察庁から「このタグが、悪用されるケースが増えている」と発表がありました。何が問題になっているのか?まずは、東京都立大学・法学部・教授の、星 周一郎さんに聞きました。

「東京都立大学」法学部 教授 星 周一郎さん

ストーカーをする相手のカバンの中であるとか、プレゼントみたいなものを贈るような形で、「紛失防止のためのタグ」を仕込んでおいて、それによってストーカーの相手方が、どこにいるのかを、遠隔で電子機器を使って把握するといったようなことです。こういったストーカー行為が問題になっている。例えば自分のスマホとかがつながっていると、スマホ上で今どこにいるのかを確認するという操作をすると、紛失防止タグを仕込まれた人が、今どのあたりにいるのかがわかるわけですね。もうかなり小っちゃい、キーホルダーのようなものもあったり、相手に気づかれない形でこういうものを密かに仕込んでおくということは、十分可能になってきてますね。

こちらは紛失防止タグの一例。ロジテックの「LGT-BETG1」。AppleのAirTagと類似した製品です

直径3センチほど

こうしたタグの悪用による被害の相談件数が急増しているんです。警察庁によると、去年1年間に全国で883件、「GPSや紛失防止タグを使ったストーカー被害の相談」があったうち、370件が「エアタグなど紛失防止タグ」の悪用とみられ、前年度のおよそ2倍に増えているそうです。

このタグ、どうやって場所がわかるのか?簡単に説明すると、実はタグそのものにGPSはついていません。代わりに、「近くにいるスマホ」に助けてもらうんです。タグはずっと小さな電波=ブルートゥースという信号を出していて、それを近くを通りかかった他人のスマホが「拾ってくれる」。そのスマホが持っている位置情報を使って、「タグはこのへんにありますよ」と、自分のスマホに教えてくれるしくみ。つまり、通行人のスマホを中継地点にして、落とし物の場所を探すというわけなんです。これが従来のGPS装置よりも、電池の消費量が少ないので長く使えるという利点もあり、利用者が増えているようです。

旅行、仕事、子ども見守りまで?広がるエアタグ活用法

うまく使えば頼れる道具ですが、悪用されれば大きな問題に。そこで、実際に使っている人たちは、どんなふうに活用しているのか? 街で話を聞いてみました。

財布につけています。持ち歩きのこういうちっちゃいエアタグなんですけど。「モノなくし」エグいんで。忘れっぽいので、すぐモノなくしちゃうので。逆に小っちゃすぎてどこにいったか分かんないんですよね。毎回どこに入れたんだっけって。

友達が使ってるのは見たことある。海外旅行の時とか、お財布に入れてたり。

航空会社で働いてたことがあって、結構ロストバゲージ多いなーって思ってたので、スーツケースに入れたりとかしたら、防止できるかなと思って。

僕はエアタグですね。今、実質4つ。鍵、あとバイク、あと車、あとは持ち運んでるカバンとかに入れてます。実際、鍵置き忘れちゃったりとかした時に「あれ、どこ置いたっけ?」って時に、やっぱりエリアは絞れるんで、「あ、この辺にあるんだ」みたいな。(うっかりさんというわけでなはなく?)そうではないけど、保険的な要素が高いですかね。

これだけ多くの人が、旅行や仕事、子どもの見守りなど、さまざまな場面で活用しているからこそ、「知らないうちに持ち物に入れられていた」となると、不安も大きいのでは。

GPS禁止でも、タグはセーフ。法のグレーゾーン

しかも今、このタグをめぐっては、「制度がまだ追いついていないのでは?」という声もあがっているんです。再び、東京都立大学の星さんのお話です。

「東京都立大学」法学部 教授 星 周一郎さん

現在「紛失防止タグを仕込むこと」それ自体は、ストーカー規制法の対象ではないです。

実はこれは盲点だったんですが、法律の方に、位置情報の無断取得については、「位置情報記録送信装置」というふうに書いてあって、紛失防止タグがそれ自体で位置情報を取得しないので、対象にならないっていう盲点があったんですよ。

要するにですね。GPS装置というのは「人工衛星」を使った位置情報の取得ということになるわけで、「それを使ってはいけないよ」ということは法律に書いてある。でも紛失防止タグは、ブルートゥースという、人工衛星を使った技術ではないもんですから、今の法律の規制の対象にはなっていないんですね。それだけでは罪にはならないということになります。

ブルートゥースを使った追跡は、現在のストーカー規制法では明確に禁止されていないんです。なぜなら法律上、「GPS装置」による位置情報の取得は対象ですが、紛失防止タグは人工衛星を使わず、スマホ経由で位置を把握する仕組みのため、対象外となっている為だそうです(規制の歴史を振り返ると、最初は電話やFAX、次にSNS、そして2021年にGPSが加わったそうですが、ブルートゥースは対象外のまま…)。

実際タグで追跡されても、それをもとに「押しかけた」などの行為がなければ、警察も動きづらいのが現実。

一方で企業側も対策を進めていて、「見知らぬタグが一緒に移動しています」と、スマホに通知が来たり、持ち主から離れたタグが自動で音を鳴らす仕組みも導入されています。それでも悪用はあとを絶たず、警察庁ではタグ自体をストーカー規制法の対象に加える方向で、法改正の検討が進められています。

技術の進化に、法律が追いついていない状況ですが、法律の方も、時代に合わせてアップデートが求められます。

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)

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