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外国人介護人材の訪問介護への参入 全面的な受け入れ開始はいつから?

「みんなの介護」ニュース

阿部 洋輔

外国人による訪問介護解禁の背景と概要

2025年4月からの外国人訪問介護解禁の詳細

2025年4月から、日本の介護分野における大きな転換点となる制度変更が始まります。これまで制限されていた外国人介護人材の訪問介護業務が、正式に解禁されることになりました。

これまで外国人が訪問系サービスで働く際には、在留資格「介護」や経済連携協定(EPA)などの制度が主な受け入れルートでした。

2025年春からは、技能実習制度や特定技能制度を通じて日本に滞在している外国人も、訪問介護の現場で働けるようになります。

ただし、外国人スタッフの従事には、介護事業所や施設などで少なくとも1年間の実務経験を積むことが必要です。

また、以下のような条件も設けられています。

介護職員初任者研修を修了していること 訪問介護の基本事項、生活支援技術、コミュニケーションスキル、日本の生活様式等に関する研修を実施すること 一定期間、サービス提供責任者などが同行による現場研修(OJT)を実施すること 外国人介護人材のキャリアパス構築に向けたキャリアアップ計画を作成すること ハラスメント対策として対応マニュアルの作成や相談窓口の設置など必要な措置を講じること 介護ソフトやタブレット端末、コミュニケーションアプリの導入など、ICTを活用した環境整備を行うこと

訪問介護の解禁は単なる制限の緩和にとどまらず、深刻化する介護人材不足に対する現実的な対応策として捉えられています。

高齢化が進む日本社会において、質の高い介護サービスを継続的に提供するための重要な一歩となることが期待されているのです。

これまでの外国人介護人材受け入れの流れ

日本の介護業界における外国人介護人材の受け入れは、経済連携協定(EPA)を通じて2008年に開始され、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどから介護福祉士候補者が来日しました。

2017年には在留資格「介護」が、2019年には「特定技能」制度が導入され、即戦力となる外国人の受け入れが可能に。これに伴い、外国人が介護職に就く機会が一層拡大することになりました。

2024年10月の統計では、現在約230万人の外国人労働者が日本で働いており、そのうち約11万6千人が「医療・福祉」分野で働いています。対前年増加率でみれば、28.1%の増加率です。

訪問介護などの訪問系サービスにおいては、これまで、在留資格「介護」で就労する介護福祉士とEPA介護福祉士(※)についてのみ従事が認められていました。(※EPA介護福祉士に関しては、受入期間に一定の留意を求める)

自宅という私的な空間での介護では、利用者との密接なコミュニケーションが必要になります。そのため、外国人介護人材の業務は基本的に、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設介護に限定されていたのです。

しかし、介護人材不足の深刻化を背景に、政府は訪問介護への外国人介護人材の受け入れ拡大を決定しました。

訪問介護分野では人材確保が特に課題となっており、2025年4月からの訪問介護解禁が、人手不足の解消策として期待されています。

深刻化する介護人材不足と外国人材への期待

日本の介護業界は、少子高齢化の進行とともに深刻な人材不足に直面しています。

厚生労働省の第9期介護保険事業計画によると、2022年度の介護職員数は約215万人でしたが、2026年度では約240万人の介護職員が、2040年度では約272万人の介護士が必要になると予測されています。

このような状況下で、外国人介護人材の受け入れ拡大は必要不可欠となるでしょう。

みずほリサーチ&テクノロジーズの調査によると、外国人介護人材の受け入れに対する評価は施設サービスにおいて非常に良好であり、「満足」または「非常に満足」と回答した事業所の割合は技能実習生の受け入れで約82%、特定技能外国人の受け入れで約81%に達しています。

外国人介護人材は、柔軟なシフト対応や多様なバックグラウンドを持つため、介護現場に新たな視点をもたらすことが期待されています。

新たな人材の確保により、介護サービスの質の向上や、利用者へのよりきめ細やかなサポートも可能になると考えられています。今後は、訪問介護においてもその活躍が期待されることになりそうです。

外国人の訪問介護参入のメリットと課題

介護事業者にとってのメリット

外国人介護人材の訪問介護への参入は、介護事業者に多くのメリットをもたらします。

まず第一に、人材確保の選択肢が大幅に拡大することが挙げられます。深刻な人手不足に直面している介護業界において、外国人材は貴重な人的資源となるでしょう。

特に訪問介護では効率的なシフト管理が求められますが、人材の多様化によって柔軟な対応が可能になります。

次に、職場の活性化も重要なメリットです。異なる文化や背景を持つスタッフが加わることで、職場のダイバーシティが向上します。

これにより、新しい視点や発想が生まれやすくなり、サービスの質の向上や業務改善につながることが期待できます。また、言語や文化の違いを乗り越えるためのコミュニケーションにおける努力は、職場全体の対話能力の向上にも寄与するでしょう。

さらに、外国人介護人材の多くは若い人材である特徴があります。出入国在留管理庁によると、介護分野で働く特定技能外国人のうち、約7割が18歳から29歳となっています。

日本の介護職員の平均年齢が上昇傾向にある中、若い世代の参入は職場の年齢構成バランスの改善につながります。また、訪問介護の現場では体力を要する業務も多いため、若い人材の活力は大きな強みとなるでしょう。

適切な研修体制と支援があれば、長期的には安定した人材として定着する可能性も高まります。

日本での就労・生活に対して高い意欲を持つ外国人介護人材は、良好な職場環境が整えば長期雇用にもつながりやすく、採用・研修コストの回収も期待できるのです。

利用者・家族の視点から見た懸念事項

外国人の訪問介護への参入は、介護人材不足の解消に貢献する一方で、言語や文化の違いから、利用者やその家族が不安を抱くこともあります。訪問介護は生活の最も私的な空間である自宅で行われるため、これらの懸念に真摯に向きあうことが重要です。

コミュニケーションの課題

訪問介護では、介護者と利用者が日常的に会話を交わしながら生活支援を行います。そのため、言葉が通じにくいと感じると、利用者や家族が不安を抱くことがあります。

特に高齢者の場合、方言や訛りが強いこともあり、意思疎通が難しいことがあります。

また、介護では「痛みの具合」や「食事の好み」など、細やかな感覚を伝える必要がありますが、言語のニュアンスが十分に伝わらないと、利用者が思うように希望を伝えられないという懸念点があります。

加えて、緊急時の対応において適切な意思疎通ができるかどうかも、家族にとって気がかりな点となりうるでしょう。

文化・習慣の違いによる不安

介護の現場では、食事、入浴、生活リズムなど、利用者の慣れ親しんだ生活スタイルに沿ったケアが求められます。

しかし、外国人介護士がそうした日本独自の習慣を十分に理解していない場合、利用者が違和感を覚えたり、生活の快適さが損なわれたりするかもしれません。

特に高齢者は、長年の生活習慣を変えることに抵抗を感じることが多いため、「自分の希望が伝わるか」「これまでと同じようにケアしてもらえるか」という点が不安材料となる可能性があります。

外国人の訪問介護参入に対する不安は、主に言語や文化の違いから生じることが多くなっています。

そのため、利用者や家族が安心してサービスを受けられるよう、同行する日本人スタッフが十分にフォローアップを行いましょう。

事業者が感じる運用上の課題

外国人の訪問介護への参入にあたっては、事業者が直面するさまざまな運用上の課題もあります。

訪問介護は、施設内でのケアとは異なり、スタッフが単独または少人数で利用者の自宅を訪問し、ケアを提供するため、高度なコミュニケーション能力や判断力が求められます。

実際に、前出の調査の中では、訪問介護及び定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所の66.7%が技能実習生の受け入れを「難しい」と回答し、特定技能外国人についても63.8%が同様の意見を示しています。

その理由の一つとしては、「利用者ごとに異なる物品の配置や生活習慣、価値観に対応する必要があり、施設介護よりもハードルが高い」点が挙げられています。

訪問介護の現場では、利用者が話す方言や高齢者特有の表現を理解する必要があり、単なる日本語の習得だけでは十分とは言えません。

また、介護現場では利用者の生活背景を踏まえたコミュニケーションが求められますが、文化の違いによって適切な対応が難しくなる場面も想定されます。

次に、教育・研修の負担も課題の一つです。

施設介護のように先輩スタッフと連携しながら業務を覚える環境とは異なり、訪問介護では短期間で必要なスキルを習得することが求められます。

また、サービス提供開始後も、一定期間の同行訪問やフォローアップが必要となり、事業者にとっては人的・時間的コストの増加が避けられません。

これらの課題に対応しながら、外国人介護人材のメリットを最大限に活かすためには、体系的な受け入れ体制の構築と継続的な支援が不可欠です。

しかし、多くの事業所ではこうした体制が十分に整っておらず、受け入れを進める上での障壁となっています。

外国人訪問介護参入の成功に向けた取り組みと展望

介護事業所に求められる受け入れ体制

外国人介護人材の訪問介護への参入が進む中、事業所には効果的な受け入れ体制の構築が求められています。前出の調査によると、訪問介護事業所が考える具体的な受け入れ要件が明らかになっています。

調査結果を見ると、最も重視されているのは「利用者と問題なく意思疎通を行うだけの会話力を有すること」です。

また、「事前に利用者に説明し同意を得ること」「サービス提供責任者等が同行する等の必要なOJTを行うこと」なども高い割合を占めています。

これらの結果から、事業所には以下の三つの受け入れ体制の整備が求められています。

コミュニケーション能力の向上支援 日本語教育プログラムの導入や、定期的な進捗確認、専門用語集の作成などが効果的でしょう。特に介護現場特有の言い回しや、高齢者とのコミュニケーションに必要な敬語、地域特有の方言などへの対応力を養う取り組みが重要となります。 利用者・家族との信頼関係構築支援

外国人スタッフが訪問する前に、利用者や家族に丁寧な説明を行い同意を得ることで、不安や抵抗感を軽減することができます。また、初回訪問時は日本人スタッフが同行するなど、段階的な導入も効果的です。

OJTを中心とした実践的な指導体制の確立 サービス提供責任者等が同行して指導することで、訪問介護特有の判断力や対応力を養うことができます。また、定期的なケース会議や振り返りの機会を設けることで、継続的な成長を支援することが大切です。

これらの体制を整えることで、外国人介護人材の円滑な受け入れと質の高い訪問介護サービスの提供が可能になります。

外国人介護人材のキャリアパス構築のポイント

外国人介護人材の定着と成長を促進するためには、明確なキャリアパスの構築が不可欠です。訪問介護における外国人スタッフの活躍を長期的に支える仕組みづくりが求められています。

まず必要なのは、継続的な学習・研修体制の構築です。介護技術の向上はもちろん、日本語能力の段階的な向上を支援するプログラムが効果的です。

特に訪問介護では利用者との一対一のコミュニケーションが求められるため、応用力を高める実践的な研修が効果的でしょう。

次に、資格取得支援の仕組みづくりも重要です。介護職員初任者研修から実務者研修、さらには介護福祉士資格取得まで、段階的なステップアップを支援することで、モチベーションの維持と専門性の向上が期待できます。

資格取得により収入アップや業務範囲の拡大につながるキャリアパスを明示することが重要です。

さらに、リーダーシップポジションへの道筋を示すことも大切です。単なる現場スタッフではなく、将来的には後輩の指導役や、多文化チームのリーダーとして活躍できる展望を提示することで、長期的な就労意欲を高めることができます。

これらのキャリアパス構築を通じて、外国人介護人材が「一時的な労働力」ではなく「ともに成長するパートナー」として位置づけられることが、訪問介護における外国人材活用の成功につながるでしょう。

外国人介護人材の活躍による介護業界への影響

外国人介護人材の活躍は、人材確保にとどまらず、さらに幅広い可能性をもたらすことが期待されます。

まず、デジタル技術との融合が加速する可能性があります。

言語の壁を乗り越えるため、AIを活用した翻訳機器やコミュニケーション支援ツールの開発・導入が進み、介護業界全体のICT化を促進するきっかけとなるかもしれません。

また、外国人介護人材の増加は、介護サービスの多様化にもつながるでしょう。

例えば、外国にルーツを持つ高齢者向けの文化的背景に配慮したケアサービスなど、これまでにない特化型のサービスが生まれる可能性があります。こうした展開は、日本の介護サービス全体の選択肢を豊かにするものです。

さらに、介護業界における外国人材の活躍は、国際的な介護人材育成モデルの構築につながる可能性があります。

日本で培った技術や知識が母国に還元され、アジア全体の介護水準向上に寄与するという好循環も期待できます。

外国人介護人材の訪問介護への本格参入は、ただ人材不足を解消するだけでなく、日本の介護サービスに新たな価値と可能性をもたらす大きなきっかけとなるでしょう。

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