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「全日本高校生WASHOKUグランプリ」初開催のファイナリスト レシピ賞味会

料理王国

「全日本高校生WASHOKUグランプリ」初開催のファイナリスト レシピ賞味会

和食の聖地・金沢で高校生が和食の腕前を競う「全日本高校生WASHOKUグランプリ」。今回で5回目の節目となる2024大会の記念事業として、グランプリに輝いたチームの料理を実際に味わう「ファイナリスト賞味会」が今年1月に開かれた。2024年度チャンピオン、広島県立総合技術高等学校のチーム「Wミミ」の二人が再び金沢に出向いて30名の参加者をもてなすという初の試みを、レポートする。

「WASHOKUグランプリ」は和食の甲子園

金沢市中心部からほど近い、「金沢未来のまち創造館」多目的室には、白いクロスがかかったテーブルと椅子がセットされていた。

「全日本高校生WASHOKUグランプリ2024」決勝大会が開催された約5ヶ月前、グランプリを受賞したのは、広島県立総合技術高等学校のチーム「Wミミ」。食デザイン科2年の西本未来さんと福島未温さんだった。彼女たちが受賞した料理「5種の出汁香る瀬戸内御膳」を参加者にふるまう「ファイナリスト賞味会」が、この日開催されることになった。

広島県立総合技術高等学校のチーム「Wミミ」は、福島未温(みお)さん(左)と西本未来(みく)さん、二人の名前の頭文字から命名。

当日は村山卓 金沢市長をはじめ、協賛企業や地域の人など、30名が出席した。

「全日本高校生WASHOKUグランプリ(以下WASHOKUグランプリ)」は、全国の高校生たちが、テーマに沿ってオリジナルレシピで闘う、まさに「和食の甲子園」だ。誕生した目的は、ユネスコ無形文化遺産登録以降、国内外から注目が高まる和食の、次の時代を担う料理人を発掘・育成すること。主催者は、「金沢の食文化の継承及び振興に関する条例」を掲げる金沢市と開催委員会だ。

グランプリ受賞者にはニューヨーク研修を、グランプリを含む決勝大会に進んだ全6チームには、金沢の料亭での実地研修と食事体験を副賞として贈り、本物の食に触れる機会を作っている。今回の賞味会も、多くの人に自分たちの料理を味わってもらうという、高校生の二人にとっては、貴重な経験になるだろう。

グランプリを受賞したチーム「Wミミ」の二人は、ニューヨークの一流レストランの厨房で研修を受けた。

さまざまな出汁を駆使したコース料理を松花堂にアレンジ

WASHOKUグランプリでは「出汁を使った和食」を大会テーマに、高校生が考える新しい和食を募っている。昨年の決勝大会の審査では御膳形式であったが、今回の賞味会では、松花堂弁当スタイルにアレンジ。御飯、煮物、蒸し物、強肴を弁当箱に納め、吸物とデザートを別添えにして提供した。

ご飯は「広島牡蠣の炊き込みご飯~針生姜を添えて」。地元・広島特産の牡蠣と三原市の米を昆布だしで炊き上げ、瓢の形に盛付けた。

吸物の「葛打ち瀬戸内鯛トマト出汁の土瓶仕立て~焼きあらの香り」は、トマトだしと鯛だしを合わせ、吸い口には柚子ではなくレモンを使っている。

祝蒸しは鰹だしをきかせた「神明鶏の茶碗蒸し」。広島のブランド鶏の皮目を焼き、卵液にはとうもろこしを入れて食感に変化を出した。

強肴は「レモン出汁で味わう三種の変わり揚げ」。サツマイモは煮含めて、ニンジンはかき揚げに、エビにはキクイモチップスの衣をまとわせて揚げ、鰹だしにレモンを加えた天つゆを添えている。

煮物は、金沢の郷土料理をアレンジした「三原だこの治部煮~車麩とともに」。

デザートの「トマトとブドウのゼリー寄せ」には、トマトだしをとったあとのトマト果実を活用した。

広島が誇る特産品を使い、多様なだしを合わせた独創的な和食だ。

彩りやバランスを考えた盛付け。弁当箱や器も自分たちで準備。人数分を学校から会場に送った。

調理スタッフとして地元の高校生もサポート

賞味会が始まる数時間前、会場の上の階にある調理室には、本日の主役「Wミミ」の二人と一緒に、コックコートで動き回る高校生達の姿があった。石川県の鵬(おおとり)学園高等学校・調理科2年生の4人。彼らの先輩は、「WASHOKUグランプリ2024」でファイナリストとして決勝大会で闘っている。この日は「Wミミ」の助っ人として、能登半島地震で被災した七尾市から駆けつけたのだ。

30名ぶんの多種多様な食材を同じようにカットし、調理し、イメージ通りに盛付ける……。細かな作業の一つ一つを、技術を持った同じ世代の仲間が手伝ってくれることが、「Wミミ」の二人にとってどれほど心強かっただろう。一方、グランプリを獲得した料理を一緒に作り上げるという経験をした鵬学園の4人にとっても、有意義な時間だったのではないだろうか。

賞味会では、鵬学園の4人も参加者としてテーブルにつき、「この味付け、いいね」「治部煮に蛸って面白い」と口々に感想を言いながら料理を味わっていた。

能登半島にある鵬学園高等学校から調理スタッフとして参加した4人。参加者として、完成した料理も味わった。

グランプリを受賞して世界が変わった?!

賞味会の開催中も「Wミミ」の二人は忙しい。会場の一番前で、まずはレシピの説明をする。料理のコンセプト、それぞれの食材や調理法の特徴、どのように味わってほしいかなどを参加者達に伝えた。頷きながら聞く人や改めて料理を見て味わう人がいて、二人の思いが会場の人たちに共有されていくのがわかる。

プレゼンテーションする「Wミミ」の二人。

その後、「全日本高校生 WASHOKU グランプリを通して学んだこと」と題した二人のプレゼンテーションが続いた。人前で調理をする緊張感、作りたい味を作り出すことや、二人がお互いに納得する味にする難しさを感じたという。

ニューヨーク研修では、現地のシェフが「ゲストに楽しんでもらいたい」という思いで料理と向き合っていることを実感したことで、実習の際も“人に食べていただく”という意識を持つようになったことなどが、彼女たちの言葉で語られた。

30名の参加者が試食した。右が金沢市の村山卓市長。その隣が全日本高校生WASHOKUグランプリ開催委員長を務める髙木慎一朗さん。

賞味会終了後、少しほっとしたような表情になった二人に、「グランプリを取って何か変わった?」と聞いてみた。笑顔で即座に返ってきたのは「取材が増えた」という返事。自分の考えを人に伝える機会が増えたことが、この日のプレゼンにも成果として表れているのだろう。

卒業後、福島さんは管理栄養士を目指すという。西本さんは「いつかは海外で働きたい。シンさんみたいに」。シンさんというのは、WASHOKUグランプリ開催委員長で、金沢の有名料亭主人の髙木慎一朗氏のこと。決勝大会では審査員長を務め、ニューヨーク研修では引率者として、既知のレストランに同行している。

学校生活だけでは出会えなかった人たちと出会うことで、二人の視界は大きく広がったようだ。西本さんはさらに続けた「ビッグになりたいです」と。

20名分の松花堂弁当をていねいに仕上げていく。

WASHOKUグランプリを金沢で開催する意義

開会の挨拶で、村山市長はこう言った。「大会では、審査員のみが審査の過程で試食をするので、食べてみたいというお声を多方面からいただいていました。今回は初の取り組みで、一流の審査員の厳しい審査を勝ち抜き、見事グランプリを受賞した高校生が考えたすばらしい和食をみなさんで味わいます」。また、開催前には「決勝大会の時から、この“レモン出汁”が気になっていた」と、展示している料理見本を熱心に見入っていた。市長の大会に対する思いが伝わってくる。

11年前、平成25年度に「金沢の食文化の継承及び振興に関する条例」を施行した金沢市は、市民に広く食文化を伝えることに力を注いできた。料亭文化が今も息づき、日本料理の新旧の名店が並び立つのは周知の通り。その一方で金沢市は料理人達と共に、小中学生を対象にした食文化と技術を伝えるワークショップ「和食のジュニアエリート養成事業」を開催している。賞味会で「Wミミ」に質問を投げかけていた子どもたちがいたが、彼らはこの和食のジュニアエリートの修了生だった。

賞味会では石川県七尾市にある鵬学園高等学校の学生も調理と食事に参加。先生も駆けつけ、広島から来た「Wミミ」との交流を深めた。

開催委員長の髙木慎一朗氏の閉会の言葉が象徴的だ。「WASHOKUグランプリは、料理の腕を競うだけの場ではなく、高校生達にいろいろなことを体験してほしいという思いで始めました。調理技術だけではなく、料理人とはどんな人なのか、料理に対する姿勢やお客様への向き合い方、ニューヨーク研修で見て聞いて体験したことを、高校生のみなさんの視点で、まわりの人たちに伝えていってほしい」。

食文化には、歴史や豊かな食材、卓越した調理技術も必要不可欠だが、それを守り継いでいくのは「人」である。その「人」を育てることに軸足を置く金沢で、WASHOKUグランプリが開催されていること、そしてその料理を、地元の小学生から市長までが一緒に味わう機会があることは、食文化を次世代に繋ぐ大人たちにとって、ひとつの指針になるに違いない。

写真・文 つぐまたかこ

高校生達が和食日本一を目指す「全日本高校生WASHOKUグランプリ2024」

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