リングをこすったら5億円!?今期3度目の上方修正でMTGが見せた巧みな経営手腕【いづも巳之助の一株コラム】
MTGが今期3度目の上方修正ですか。いやー、ノッてるねー。内訳をよく見ると、実にうまい経営のかじ取りが見えてくるよ。今回の決算は、イリュージョン?のような技もいくつか繰り出されたね。
ひとつ目のイリュージョンは、英国子会社のMcLEARの解散に伴う「税務マジック」だ。McLEARは決裁スマートリング事業を9年間も展開していたが、ずっと赤字だったんだよ。最初に伊藤忠商事や三菱UFJ銀行などから資金調達を受けていた鳴り物入りのスタートアップだったが、MTGの主力である美容・健康とのシナジーがなかったのが惜しまれる。
9年も辛抱したのは、なんかブレイクそうなカンジがあったからね。ローンチ時、次にブレイクしそうなデジタル新事業の常連だった記憶もあるし。ところが、今回の解散で大赤字が出ると思いきや、約9億円の特別損失が出たが、法人税などが約14億円減額され、差し引きで約5億円の純利益増加。結局リングをこすったら、5億円出てきたようなフシギな話になってジ・エンドだ。でも、今回の経営判断は素晴らしかった思う。9年も続けた事業は、なかなかやめられないものなので、今後もこの決断は、今後の強い企業風土になるよね。パチパチです。
さて、イリュージョンがもうひとつあるんだ。新ブランド「レッド(ReD)」のローンチだ。リカバリーウェア市場で、大ヒットのTENTIALの「バクネ」の領域に対して、MTGが「美容」視点から参戦。テレビCMや渋谷ヒカリエの直営店、そして大泉洋の起用や宣伝費をこれでもかと投下し、仕掛けも本気だ。
でも、IRでは「レッドの立ち上がりが順調」とあるが、肝心の数字が見えてこない。「レッド」単体の売上高や利益構成比は開示されておらず、消費者レビューは上々とはいえ、収益貢献度の判断にはまだ早い。それがあの宣伝の数々を見ているうちに物凄く売れているように錯覚してしまう。まさにイリュージョンだ。
そして今は猛暑の中、長袖のリカバリーウェアを着るには現実的なハードルがある。つまり、「レッド」が本当に売れるのは、気温が下がり始める秋以降。今は、広告投資とプロモーションによる仕込みの時期だ。夏の段階で好調と表現されているのは、ECや限定需要をうまく刈り取った結果かもしれないが、事業としての確実性を語るには時期尚早かなと。
最後のイリュージョンは、株価が7月24日以降で4,700円を超えている。まだまだ騰がる印象は確かにある。でも今回、修正後の1株利益(EPS)は165.24円なので、PERは約28.4倍。グロース銘柄としては、許容範囲なんだけど「安い。買おう!」とは言い難いよなあ。市場はすでにある程度、業績改善を織り込んでいる可能性が高い。「レッド」がこの秋本当に数字を伴って飛躍するのか、それを見届けてからでも遅くはない。
イリュージョンはあくまで「タネ」があるからね。
▶巳之助メーター 2ニョロ ここで一旦監視。
秋の商戦をチェックして、押し目があればGOだ。
(1ニョロ=素通り 2ニョロ=監視 3ニョロ=今だ!)
■プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。