都筑の「ポジティブエイジング」 人生に「定年」はない 仲町台在住・森山修さん(66)
「人生100年時代」を生きる今の会社員にとって、定年は一つの区切り。森山修さん(66・仲町台在住)は、60歳と65歳と2度の定年に際し、「仕事の楽しさ」や「居場所の大切さ」を再確認。「やりたいこと」に積極的に取り組み、アップデートを続けている。
エンジニアとして家電メーカで約30年働いた森山さん。60歳の定年まで勤務し、再雇用の話もあったが、「せっかくの人生。同じ仕事じゃつまらない」と退職。「どうせなら何か新しいことに挑戦したい」と選んだ再就職先は、東京ディズニーランド。キャストとして施設内の売店で商品販売を担当した。年下の仕事仲間や来場客との仕事は笑顔にあふれ「やりがいを感じた」と笑う。
戸惑いと不安
長くても5年、65歳までと期限が決まっていた再就職。森山さんは2度目の「定年」を間近に控え、「ゲストやキャストと会話を楽しんでいた毎日が、定年を境に全くなくなる」生活に戸惑いや不安を覚えたという。「仕事をしている時は(定年後は)『旅行もしたい、趣味もしたい』と思っていたが、『本当にそれだけがやりたい事?』と自問すると、物足りなく感じた」と語る。「仕事は人と関わる機会を与えてくれる貴重な場」ということを再確認した。「定年」という2度の節目を「仕事について考える良い機会だった」と振り返った。
2度目の「定年」後、仕事中心の生活からは退いたものの、好奇心旺盛な性格もあり、横浜スタジアムの運営スタッフや麻布台ヒルズのペルー料理店でのアルバイトなどを週に数回のペースで続けている。
地域で活かす知見
そんな森山さんが「地域に貢献したい」との思いから参加したのが、横浜市が主催する「よこはまポジティブエイジング」というプログラム。
プログラムはシニア世代と地域の企業・団体が行う地域貢献活動をマッチングさせ、技術や経験を生かし、社会参加や課題解決、産業振興につなげてもらおうというもので、昨年度からモデル事業として始まった。
プログラムのパンフレットを手にした森山さんは「自分たちの世代にどんなニーズがあるのか知れるのでは」と参加。プログラムの一環で、実際に自身より年上の「店員」が働くコミュニティカフェを見学。「『65歳なんて、若いねぇ』といわれ、まだまだ色々なことが出来るなぁ」と前向きになれたという。
プログラムのマッチングで森山さんは、中高生のキャリア教育支援を行うNPO法人アスリード=金沢区=の活動に共感し、ボランティアとして参加。プログラム終了後もボランティアを続けており、今年度は同法人が発行するキャリア教育の冊子制作に携わり、企業で働く人への取材記事を執筆したり、学校でのキャリア教育の授業に同行したりした。同法人代表の杉野瞳さんは、「活動の趣旨を理解してくれ、何でも助けてくれる。人生の先輩として、人を楽しませたり、気を配ったり、と常に思いやりを持った対応をしてもらえる」と森山さんの働きぶりを絶賛する。
できること精一杯
アルバイトやボランティア活動以外にも、テニスやバドミントンを趣味で楽しむ森山さん。「体力には自信がある。スポーツは心も体もリフレッシュさせてくれる」と、昨年からは卓球も始めた。一方で、今年新たに消防団への入団を決めた。「地域の防災について他人事だった」ことを自省しての入団。70歳の「定年」まで続けるつもりだという。
まさに『ポジティブエイジング』に年齢を重ねている森山さんだが、決して無理はしていないという。「今、自分ができる事を精一杯やれば良いと考えている。もし何かできなくなっても悲観せず、またできる事を考えれば良い」と語る。「まだまだやりたいことがたくさんある。社会に貢献できるような活動も続けていきたい」と、『人生100年時代』の後半戦を見据えている。