FPが解説!「損害保険の上手な選び方」と「保険料を無駄にしないポイント」
地震や異常気象による災害を始め、各種の事故に備える民間保険は重要です。
支払う保険料が無駄になっていないかをチェックし、自分の状況にあった適切な備えをしていきましょう。
災害多発の令和時代、保険料は上昇傾向
「最近、異常気象や地震による災害のニュースを聞くことが増えた」と感じる方は多いのではないでしょうか。
実際に消防庁のサイトをチェックしてみると、「令和6年 災害情報一覧」においては地震だけでも13件の大規模災害が報告され、2024年元旦に発生した「能登半島地震」と2024年8月に起きた「南海トラフ地震臨時情報」は記憶に新しいところです。その他にも通年、大雪や大雨・台風の被害があいつぎ、この記事を執筆している2025年2月初頭においても全国での大雪発生が報道されています。
特に大雪は自動車事故の多発にもつながりますので、見た目より被害が大きい災害だと言えるでしょう。
一方で、一般市民が災害に備えるために重要な損害保険の保険料は上昇傾向で、2024年10月には火災保険料の参考純率が全国平均で13%の引き上げされること、2025年からは大手損保4社が自動車保険料を3~5%程度値上げすることなどが発表されています。
これらは災害の多発による保険金支払いの増加や、インフレの進行に伴う人件費や修繕費の上昇が主な原因とされていますので、今後はさらに保険料が値上げされていくことが心配されます。
このような状況下で家計を守っていくためには、それぞれの家庭の状況に合った適切な民間保険への加入をしていくことが、これまで以上に重要になってきます。
保険をかけるのは「リスクが大きくて」「めったに起きない」ことだけでよい
筆者は家計改善についてお客様から相談を受けた場合は、現在において自分が加入している民間保険の内容を確認し、場合によっては見直していくことを優先しておすすめしています。毎月・毎年発生する民間保険料は典型的な「固定費」であり、しかも金額が大きいことが多いため、この部分の見直しは大きな家計改善効果を生むからです。
そもそも「保険」の基本とは「リスクが大きくて」「めったに起きない(予測不可能な)」ことに備えることであり、これ以外は基本的に別の方法で備えていく必要があります。
自分の人生において発生する可能性のある危険を「リスクの大・小」と「発生の頻度」でカテゴリ分けすると、以下の4種類になります。わかりやすいよう、()内は病気・ケガを例にとって記載しています。
A.「リスクが大きくて」「しょっちゅう起こる」こと
(老齢期になってからのガン、冒険家・戦争時の軍人の死亡など)
B.「リスクが大きくて」「めったに起きない」こと
(若年期のガンや難病・大病、災害・自動車事故による大ケガや家屋の倒壊など)
C.「リスクが小さくて」「しょっちゅう起こる」こと
(風邪やインフルエンザ、スポーツ時のすり傷や打撲など)
D.「リスクが小さくて」「めったに起きない」こと
(めずらしい症例の軽い病気、大雪による転倒での軽いケガ、台風による雨漏りなど)
Aカテゴリの「リスクが大きくて」「しょっちゅう起こる」ことに対しては、そもそも「保険」という商売が成立しなくなりますので、これに対応できる保険商品は存在しないか、存在したとしても保険料が非常に高額になります。
現在起きている損害保険料の値上げは、天災の多発によって本来Bカテゴリである「リスクが大きくて」「めったに起きない」ことが「リスクが大きくて」「たまに起きる」ことになりつつあることが、一つの原因なのです。
日本は国民皆保険制度があるために、これら全ての危険について一定程度の備えは最初からされているとも言えます。それに加えて、さらに民間保険でも備えるべき危険は基本的にBカテゴリの「リスクが大きくて」「めったに起きない」もののみです。
民間保険では、追加の保険料を払うことでCカテゴリやDカテゴリの危険が起きた際にも補償が下りる「オプション」をつけられることが多いですが、それは自分の人生において本当に必要なものであるかをよく考えたうえで加入する必要があります。
特に気をつけていただきたいのは、上記A~Dの4カテゴリにおいて書かれた「リスク」とは、
「現役世代であり、勤労によって大いにお金を稼いでいる人が、突発的な病気や事故によって死亡するか長期間働けなくなり、収入が途絶えることによって、残された家族の生活が成り立たなくなる」
「生活を成り立たせている根本である住宅や自動車などの財産が、災害や事故によって台無しになり、家族の生活が成り立たなくなる」
などの状況を指していることです。
誤解を恐れずに言ってしまえば「一人暮らしで、扶養家族もいない人」や「働けなくなっても、貯蓄などで生活していける人」、また「すでに高齢であるなどの理由で働いていない、または働いてもたくさんのお金は稼げない人」などは、そもそも民間の生命保険に入る必要自体が低くなります。
冷静に現在の自分の状況を客観的に観察し、必要最低限の保険に加入することが合理的だと言えるでしょう。
保険料を無駄にしないため、チェックしたいポイントとは
現在定期的に支払っている民間保険について見直すときは、特に以下について確認していただきたいと思います。
自分や配偶者が事故などによる死亡や長期療養で働けなくなった場合、生活を続けていくために「どれほどの金額が」「いつまで必要になるか」計算しているか
前述したとおり、生命保険とは主に「収入が途絶えることによって、家族の生活が成り立たなくなる」リスクを減らすために加入するものです。そのため、扶養家族が多いなどの理由で生活費が高いのであれば、加入する保険も手厚くする必要があります。
ただ、例えば被保険者の配偶者の収入を増やしていく手段があることや、子どもが独立する予定の時期が近いという状況であれば「生活を続けていくために必要な金額」は少なくなります。一度、現在のライフステージを確認するとともに、万一のことがあった場合のライフプランを考え、現在加入している民間保険が過剰でないかを計算してみましょう。
心理的な「安心」でなく、経済的な「安全」を得るための保険であるか
保険は手厚ければ手厚いほど「安心」を手に入れることはできますが、それは実際に計算される経済的な「安全」に必要な金額とズレている可能性があります。
例えば各種の生命保険・損害保険に用意されている多様なオプションは「安心」には必ず役に立つものですが、経済的な「安全」に求められる水準から見ると過剰である場合が多く見られます。保険代理店の担当者や家族の方以外の第三者へ相談してみることなどで、現在家族にかかっている保険の条件を客観的に把握してください。
公的な社会保障制度、特に高額医療費制度を理解したうえで保険に入っているか
前述したとおり、日本には国民皆保険制度があり、各種のリスクに対する一定程度の備えについて、日本国民は自動的にできている状況です。
非常に複雑な制度なので正確に理解するのは大変ですが、特に「高額医療費制度」だけは理解したうえで生命保険に加入していないと、過剰な保険に加入してしまう可能性が高くなることは理解していただきたいと思います。
高額医療費制度とは、1ヶ月にかかった医療費の自己負担分が一定の基準を超えた場合、その基準を超えた金額分が払い戻される制度です。自己負担限度額は年齢や所得によって異なりますが、例えば70歳未満で年収が370万円未満である場合は、月額自己負担限度額は57,600円と定められています。
この自己負担限度額のうち一定程度は貯蓄の切り崩しなどで対応可能だと判断できるのならば、医療費が支払われる保険については加入をしないか、支払い保険料を薄くしていく余地があると言えます。
入っている損害保険の補償内容に「ダブリ」がないか
自動車保険などに各種のオプションを付けている方は特に気をつけていただきたいのですが、損害保険は1事故の補償に対して重複して保険に加入していたとしても、保険金も重複して支払われることはありません。そのため複数の保険でカバーしている保証範囲に「ダブリ」が存在していると、片方の保険が無駄になってしまいます。
自動車保険で家族の個人賠償や人身傷害のオプションをつけていたのに、別の自転車保険に入っていたというパターンなどが典型的です。一度、家庭で入っているすべての損害保険の補償範囲について確認をしてみましょう。
同等の補償内容である保険について、数社から見積もりを取っているか。また、ネット保険について検討したか
各種の保険商品については、保険会社間での競争によってより有利な商品が開発されており、保険を切り替えること大きく保険料を削減できる場合があります。
特に近年はネット保険会社が発展しており、同等の補償内容でも保険料が非常に安くなっている傾向がありますので、保険内容の見直しを長期間行っていない方は、まずネット保険について調べてみるとよいでしょう。
インフレに伴って保険料も上昇しだしている現在においては、家族や住宅などにかける保険内容についても吟味が必要になってきます。中立な視点をもち、自分のライフステージや状況に合わせて柔軟に保険を見直していきましょう。
【執筆者プロフィール】
山田 圭佑(KYお金と仕事の相談所 所長)
キッズ・マネー・ステーション認定講師、国家資格キャリアコンサルタント、ファイナシャルプンナー技能士2級・AFP、琉球古典音楽 野村流伝統音楽協会 歌三線 師範、八重山古典民謡保存会 歌三線 教師
東京都出身。大学入学と同時に沖縄県へ移住。大学卒業後、沖縄県庁にて18年間奉職した後にキャリアチェンジ。現在はフリーランスのキャリアコンサルタント・ファイナンシャルプランナー・歌三線師範として幅広く活動。2022年7月に「KYお金と仕事の相談所」を開設。所長を務めている。
(ハピママ*/キッズ・マネー・ステーション)