磯採集で出会える魅力的な<ニザダイ科の魚>3選 小さくて華やかな水槽の名脇役?
ニザダイ科に属する魚たちは、沿岸の岩礁域やサンゴ礁域に生息し、比較的に水深が浅いところで観察できます。
サザナミハギ属やナンヨウハギ属、テングハギ属、ヒレナガハギ属など、形態が違うさまざまな属に分かれます。
草食性が強く、成魚では尾柄部に棘や骨質板が見られることが特徴に挙げられます。
そんなニザダイ科の魚たちから3種を取り上げて紹介します。
無効分散を行う魚たち
ニザダイの仲間は無効分散によって、毎年夏から秋にかけて太平洋沿岸で見ることができます。
無効分散とは、いわゆる死滅回遊魚。南方から本州の伊豆あたりまで泳いでくるものの、冬には海水温が下がり死んでしまう魚です。
ニザダイ科の魚たちには、綺麗で独特な形をしたものがたくさんいます。タイドプールや岩場で、ベラやヒメジなど他の魚と一緒に泳いでいることが多く、比較的浅いところでも見ることができるのが特徴です。
ヤッコやチョウチョウウオと並んで綺麗な魚で、魅力的な仲間がたくさんいます。
ニザダイの仲間は寒さに弱いのか、12月に潜ると一切見ることがありません。チョウチョウウオやヤッコは年を越して1月まで見ることがあります。
磯採集でよく見られるニザダイの仲間
磯採集で観察できるニザダイ科の魚3種を紹介します。
それぞれの生息地や特徴も書いていますので、磯採集に出かけた際には、ぜひ参考にしてみてください。
シマウマのような見た目<シマハギ>
シマハギは白い体に黒い横線が数本入るシマウマのような見た目をしています。
水深30センチのタイドプールから数メートルの浅瀬の岩場、砂地で見ることができます。
比較的個体数が多く、見つけることは簡単です。同種で群れを作ったり、ベラやヒメジの仲間などと一緒に泳いでいたりします。
また、夜のタイドプールでも隠れることがなく漂っているのを見つけることができます。
また無効分散として6~12月上旬まで見ることができますが、下旬になると一気に見なくなります。
全身が鮮やかな黄色<モンツキハギ>
モンツキハギは全身が鮮やかな黄色をしています。浅い岩場や砂地で観察できます。
無効分散として太平洋沿岸で観察できますが、シマハギやニジハギより個体数は少ないです。群れることは少ないですが、同種数匹で一緒に泳いでいることがあります。
ニザダイやシマハギなど他のニザダイ科と泳いでいることもよく見かけます。この種は夜のタイドプールで見ることはありません。
また、不思議なことにニジハギと同じ場所にいることはありません。
オレンジの体色に黒で縁どられた青い縦線<ニジハギ>
ニジハギは岩場にいることが多く、タイドプールでは比較的深いところにいます。
無効分散で太平洋沿岸で夏から秋にかけて見ることができます。
オレンジの体色に黒で縁どられた青い縦線が入っている、独特な模様の魚です。青色の縦線は水中では白く見えますので、水面越しにこの魚を見ると地上で撮影した写真よりも少し地味に見えます。
シマハギに比べると個体数は少ないです。様々な場所に点々といるより、いる場所にはたくさんいる印象があります。
同種は数匹で一緒に泳いでいることはありますが、基本単独でいます。
シマハギやニザダイなどといることはありますが、モンツキハギと同じ場所にはいません。
潜水採集の仕方
ニザダイの仲間は、岩場やタイドプールで採集できます。さらに、シュノーケリングなど海に潜って採集を行う潜水採集では魚を採集できる確率が高いです。
ニザダイ科全てに言えることは、採集が難しいということ。素早く泳ぎ、網が届かない小さな穴に隠れたり、目立たないように地味な体色に変化します。
穴から追い出したと思ったら、目に見えないスピードで飛び出して、行方をくらませます。採集する側からすると非常に厄介な特徴ばかりを持っています。
採集の仕方は魚を追い込んだ穴の前に網を被せ、細い棒で追い出すのが一般的。網で追いかけるのはまず採集できませんので、どこかに追い込むことが重要です。
ハギの仲間は発見したところに戻ってくることがあるので、見失ってしまっても時間を置いて、また発見したところに戻ってみてください。
同じ個体が何食わぬ顔で泳いでいたりします。
採集は難しいけど応用がきく
ニザダイの仲間は綺麗で独特なフォルムをしている個体が多いので、とても面白い魚たち。ヤッコやチョウチョウウオに比べると少し地味かもしれませんが、一緒に泳がせたい水槽の名脇役です。
採集するのは難しいですが、諦めずに何回もチャレンジすれば採集することができます。
日頃から魚の動きをよく観察し、地形を見ながら予測することはとても大切です。試行錯誤することで採集した時は大きな達成感と喜びを感じられますよ。
ニザダイの仲間を普通に採集できる程の腕があれば様々な魚にも応用でき、自信につながるのでぜひチャレンジしてみてください。
(サカナトライター:たつ)
参考文献
瀬能宏(2018)、山渓ハンディ図鑑13 日本の海水魚、山と渓谷社、P464,468,469
中坊徹次(2018)、小学館の図鑑Z 日本魚類館、小学館、P436,437
エムピージェー(2022)、海の魚とサンゴの情報誌マリンアクアリスト No.103 2022 SUMMER、株式会社エムピージェー、P81,82