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名曲「Calling You」とともに不朽の映画がミュージカルに まもなく開幕のミュージカル『バグダッド・カフェ』稽古場レポート

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ミュージカル『バグダッド・カフェ』の稽古場の様子

ミュージカル『バグダッド・カフェ』が2025年11月2日(日)から東京・シアタークリエほかで上演される。
1989年に日本公開され、記録的なロングランを果たして、当時のミニシアターブームのきっかけとなった映画『バグダッド・カフェ』。アメリカ西部の砂漠の真ん中にある「バグダッド・カフェ」の女主人ブレンダ(演:森公美子)と、偶然現れたドイツ人旅行者ジャスミン(演:花總まり)の出会いと友情、そこから広がる国籍も人種も立場も異なる人々の絆を描いたファンタジックコメディだ。パーシー・アドロン監督と妻のエレオノーレ・アドロンが自ら脚本を手掛けたミュージカル版が、小山ゆうなの演出で日本初演される。
開幕を前に、都内で行われている稽古場が報道陣に公開された。その様子を写真とともにお伝えする。

ミュージカル『バグダッド・カフェ』の稽古場の様子

稽古は9月の半ばから始まったといい、この日が2回目の通し稽古。報道陣も稽古場に入っていささか緊張感ある稽古場かと思いきや、通し稽古が始まるまでは、キャストとスタッフを交えながら談笑したり、喉や身体のストレッチをしたりと、和やかな雰囲気の中で出演者らは思い思いに過ごしていた。

ミュージカル『バグダッド・カフェ』の稽古場の様子

ミュージカル『バグダッド・カフェ』の稽古場の様子

本作の劇中で歌唱される、有名な1曲「Calling You」のハーモニーを確認してから、1幕の通し稽古がスタート。ドイツのローゼンハイムからアメリカにやってきた旅行者のジャスミンは、ラスベガスに行く途中で夫と喧嘩別れをして、バグダッド・カフェのモーテルに流れ着く。一方のバグダッド・カフェの女主人ブレンダも、不甲斐ない夫と子育て、そして店の経営難のために常に機嫌が悪く、誰に対しても怒鳴り散らしている状態である。
花總演じるジャスミンは、当初バグダッド・カフェの中で“招かれざる客”な存在なわけだが、ドイツ人らしい真面目さと勤勉さを滲ませつつ、そのちょっとした“異質”な感じを自然と醸し出していたし、森が演じるブレンダは生活感が漂う役作りで、大事な話をしているのに16歳のジュニア(演:越永健太郎)がピアノを弾くのを辞めなかったり、旅行者が赤ん坊を急に抱き上げたりと、あらゆることにイライラする気持ちもよく伝わる。

ミュージカル『バグダッド・カフェ』の稽古場の様子

ミュージカル『バグダッド・カフェ』の稽古場の様子

ミュージカル『バグダッド・カフェ』の稽古場の様子

周りを取り巻くキャストもなかなか個性的。小西遼生は、チャラチャラしつつどこかミステリアスな画家のルディを好演し、松田凌は無口で退廃的なカフェの店員・アブドゥラーを佇まいで表現。清水美依紗がブレンダの長女・フィリスを明るく社交的に若々しく演じたほか、ブレンダの怒りを買うサル(演:芋洗坂係長)も、カフェのモーテルに住むボヘミアン・デビー(演:太田緑ロランス)も、地元の保安官アーニー(演:岸祐二)も、ジャスミンの夫のムンシュテットナー(演:坂元健児)も、ピアノに熱中しているブレンダの長男・ジュニア(演:越永健太郎)も、それぞれに個性が光る。

ミュージカル『バグダッド・カフェ』の稽古場の様子

ミュージカル『バグダッド・カフェ』の稽古場の様子

ミュージカル『バグダッド・カフェ』の稽古場の様子

1幕では大きく物語が動くわけではないが、“日常”と“非日常”のコントラストが淡々と、そしてところどころユーモラスに描かれているし、有名な1曲「Calling You」以外にも、「砂漠のファントム」、「マイ・スーツケース」や「ゴミ箱」など、映画と同じ作曲家のボブ・テルソンによる耳に残る曲が揃っており、聞き応えも◎! 2幕ではどんな展開が待ち受けるのか——。小山ゆうなのノートは聞けずじまいだったが、これからもっとブラッシュアップさせるであろうし、さらに衣装や照明、装置などが加われば、また見え方も変わってくるはず。早く全編が見たいと思った。
東京公演は11月23日(日)まで。その後、愛知、大阪、富山での公演を予定している。お見逃しなく!

取材・文・撮影=五月女菜穂

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