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安野たかひろ、優秀なエンジニア集団を国政へ送り、“政治のOS”を刷新へ

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安野たかひろ、優秀なエンジニア集団を国政へ送り、“政治のOS”を刷新へ

AIエンジニア・安野貴博さんが2025年5月8日、都内で記者会見を開き、新党「チームみらい」を結党して参院選に出馬することを発表。「永田町にエンジニアチームを作る」 という大胆な構想を打ち出した。

戦後日本で30代の党首がゼロから国政政党を設立した例はかつてないという。
しかも、エンジニア出身の党首だ。

組織の壁、技術への無理解、そして外からの変革の限界。多くのエンジニアが日々の業務で直面するこれらの課題に、安野さんは政治という新たなフィールドで立ち向かおうとしているーーそう思えた記者会見の詳細を、エンジニアが知っておきたい部分を中心に、抜粋して紹介しよう。

目次

参院選出馬は、目的を果たすための手段行政と一緒に働いて抱いた「三つの所感」【所感①】デジタルリテラシーの欠如【所感②】熱意もやる気もあるのに、脱せない停滞感【所感③】外から変えることの困難さなぜ、法を変えられる衆議院ではないのか?新党「チームみらい」が目指すのは?まず、永田町に「エンジニアチーム」を作る人選基準は「技術的知見+ガチなやる気」政治や日本を変えるのはエンジニアなのかもしれない

参院選出馬は、目的を果たすための手段

会見の冒頭、安野さんは、参院選への出馬を決めた理由について「東京都知事選に立候補した時から目的は同じ」とし、次のように語った。

「テクノロジーで誰も取り残さない東京を作るために、私に何ができるのか。昨年の都知事選以降もずっと検討してきました。
自治体の首長、あるいは国政、あるいは民間の立場など、さまざまな選択肢がありました。

その中でも、今、最速で政治をアップデートするには、自ら国政政党を立ち上げることが最適だという結論に至りました」

安野さんにとって、いわば参院選出馬は目的を果たすための手段なのだろう。

都知事選以降の約1年の間に、

●GovTech東京の外部アドバイザリー
●衆議院のAI推進法案での参考人質疑で意見陳述
●『デジタル民主主義2030』プロジェクトを立ち上げてOSS開発の活動

を担い、実際の行動に移してきた姿勢をみるに、決して「選挙に便乗した売名」でも、「パフォーマンスでの立候補」でもないことが分かる。

デジタル民主主義2030公式HPより参照

行政と一緒に働いて抱いた「三つの所感」

直近の1年間、地方自治体や各政党の議員と仕事を共にする機会が増えた安野さんだからこそ、見えてきたものがあったとも語る。

安野さんが抱いた「三つの所感」はこうだ。

【所感①】デジタルリテラシーの欠如

「もちろん、個別に熱心に習得されている議員の方、行政職員の方もおられます。しかし、平均の水準、あるいは実務経験をお持ちの方というのはあまりおらず、デジタルを使いこなそうとする意識も、民間と比較すると遥かに低い状況だと感じました。

ITやAIは大事であるという認識をお持ちでも、それは自分が関わるようなものではないし、専門家に任せておけば必要もないのだと、そういう認識の方は大変多い状況だったと思います。
そのような状況では、単にデジタルテクノロジーを使わないことによる物事の推進速度の差が生じるだけでなく、政策を立案する仕組みを考える際の発想を広げられないということがあると思います。これは危機的な状況だと感じました」

【所感②】熱意もやる気もあるのに、脱せない停滞感

「この1年間、私と関わっていただいた議員の方、官僚の方、行政職員の方々は、皆、熱意を持って真面目に頑張っておられる方々でした。これはある意味、良い知らせでほっとすると同時に、問題の根の深さも感じました。

悪意があったり、やる気がなかったりするのであれば、改善がしやすい。しかし、熱意もやる気もある人が揃っている中で、現状の停滞感が生まれているのだとすれば、それは構造的な問題だと感じました」

【所感③】外から変えることの困難さ

「やはり政治の世界では、議員とそれ以外の人に大きな線が引かれているような感覚がありました。永田町では議員でないと聞いてもらえない話があるように感じたのです。

そうであるならば、政治や行政にテクノロジーを持ち込もうとした場合、自ら議員になることが必要不可欠であると思いました。外部のアドバイザーという立場では、できることに限界があると、永田町を変えるには永田町に入るしかないと考えています」

上記の所感から、テクノロジーで日本を良くしていくための最短で最善の道は、自ら永田町に議員として入っていくことだと述べた。

本筋とは逸れるが、安野さんが抱いた課題感は、行政に限らず、規模の大きな組織や非エンジニアの経営層に置き換えても同じようなことが言えそうだ。

なぜ、法を変えられる衆議院ではないのか?

しかし、永田町に入りたいのであれば、「国政でなく行政に入る選択肢」もあったはずだ。

ましてや、法律を変えるような変革が必要になった場合、参議院ではなく、衆議院を目指す方が、より直接的な影響力を行使できるのではないだろうか。

「まず、行政府(行政)についてですが、もちろん熱意と能力のある方が多いと感じています。一方で、不確実性の高いソフトウエア開発や革新的な政策を実行していく上では、どうしても保守的な傾向があると感じました。

行政には『無謬性』が求められるが故に、変化を恐れる構造があるのかもしれません。外部から貢献しようと試みましたが、限界を感じたのが、立法府(国会)を目指した理由です」

さらに、参議院を選んだ理由については、こう続けた。

「立法府の中で、なぜ衆議院ではなく参議院なのか、ということですが、いくつか理由があります。まず一つに、参議院には6年という長い任期があります。衆議院のように解散によって任期が左右されることがありません。

これは、目先の選挙活動に追われることなく、腰を据えて政策の中身を練り上げ、政治的な活動に全力を注げる環境だと考えられます。

いわゆる『良識の府』と呼ばれる参議院の側面は、私たちが目指す、じっくりとみらいを考え、議論する政治のあり方と非常に合致していると感じています」

安野さんの言葉からは、短期的な政治的駆け引きよりも、長期的な視点に立ち、本質的な変革を目指す強い意志が感じられる。

新党「チームみらい」が目指すのは?

さて、それでは「チームみらい」とは何を目指し、何に取り組む政党になるのか。

安野さん曰く、「名前の通り、みらいを作るための政党」であり、「テクノロジーで誰も取り残さない日本を作る」ことが主目的の集団となるそうだ。

「テクノロジーは、難解な専門技術ではなく、できなかったことをできるようにする具体的なツールです。テクノロジーを正しく活用すれば、複雑な仕組みを効率化し、無駄を削減し、手続きをスマートにすることができます。チームみらいはメンバー一人一人が手を動かし、テクノロジーを駆使して政治をアップデートすることを目指します」

特に、現在の政治の話題は「お金の再分配」に偏りがちで、「未来の成長」につながる議論が不足している点に懸念を示した。

「世代間や国家間の対立が激化し、またAIは指数関数的にその能力を伸ばしている今、もちろんお金の議論も重要ですが、場当たり的な対応だけでは、進行する物価高やインフレに対する根本的な解決策にはなりません。

予測困難なこの時代に今必要なのは、成長戦略と柔軟かつ迅速に変化に対応できる社会システムだと考えています。

チームみらいは、AI時代にふさわしい成長戦略を掲げ、子育て教育、科学技術への投資、新産業の育成、文化の振興を進めていきたいです」

まず、永田町に「エンジニアチーム」を作る

チームみらいが国政政党として要件を満たした後、最初に取り組みたいことは「年1億円以上ある政党交付金(※)を用いて、永田町にエンジニアチームを作る」ことだと話した。

そのチームは、約10名規模の優秀なエンジニア、リサーチャーで構成し、作ったものは全てオープンソースで公開し、誰でも参加・貢献できる形にする計画だ。

国会議員の中にAIエンジニアはまだおらず、「この人数が0から1に変わることは、非常に大きな違い」であり、永田町にAI、DXの専門家を送り込むことには大きな意味があるとした。

「永田町でエンジニアチームを立ち上げることができれば、例えば民意を政策に反映する仕組みとして、オンライン上で大規模な熟議を行えるシステムを実装し、集まった意見を論点整理して可視化して建設的な議論を国政の場で進めることができるはずです」

チームみらいは他党の議員とも是々非々で政策を議論しつつ、そのテクノロジー活用やDXまで積極的に支援する。こうした既存の政党の枠組みを超えた発想にワクワクさせられる点も、新党への期待につながりそうだ。

(※)従来の国政政党では、党によっては政党交付金の多くが選挙に使われているという。しかし、チームみらいは自らの選挙のためだけではなく、政治のデジタルトランスフォーメーション、政治のDXを進めるための活動に使っていく計画だ。

人選基準は「技術的知見+ガチなやる気」

夏の参院選では、安野さんを党首に据え、チームみらいは比例区と選挙区で10名以上の候補者を擁立する計画だ。

すでに10名ほどの候補者とは個別に調整を進めており、エンジニアもいる。エンジニア出身でなくても、社会の第一線で活躍しており、「テクノロジーに明るい」方が中心だと明かした。

また、立ち上げ予定のエンジニアチームについて、会場から「優秀なエンジニア、リサーチャーで構成する、とあるが“優秀な”とは、具体的にどのような人物を指しているのか?」と質問があがった。

安野さんが述べた、人選基準は以下の3点だ。

【優秀なエンジニアチームの人選基準】
①前提、技術的な知見およびコンピューターサイエンスの知識があること
②解いたことのない問題を解いたことがあること
③新しい事柄に対する好奇心があること
④ガチでやる気があること

ちなみに、安野さん側から候補者にアプローチするだけでなく、「自分も立候補したいという申し出があれば、そうした方に出馬いただくことも検討したい」とした。

「戦後の日本で30代の党首が0から国政政党を設立できた例はかつてありません。今回、『1%の革命』(※)が実現することは、永田町の新陳代謝を促し、硬直化しているシステムを進化させるきっかけにもなると考えています。

今回も組織票や後ろ盾が全くない中での選挙戦、地盤も看板も鞄もない中での挑戦になります。

チームみらいは情報発信や政策研究を担ってくださるボランティアの方々を、全国から広く募集します。そのため、チームみらいの政党としての活動を楽しみながらできるようなゲーミフィケーションプラットフォームを開発することにしました。

このプラットフォームの上で、情報発信のための動画編集や政策提言など、様々な活動に参加しやすくなる予定です。活動内容の詳細はチームみらいの公式サイトをご覧ください。ご興味のある方のご参加を歓迎します」

(※)『1%の革命』とは? チームみらいが国政政党の要件を満たすためには、有効投票数の2%以上を得る必要がある。これは昨今の投票率を踏まえると約120万票、そしてそれは1億2000万人の人口の1%に当たる規模感。安野さんは、この一連の取り組みを「1%の革命」と名付け、1%の新しいことに挑戦する人が世界を変えるという考えを込めていると語った。

政治や日本を変えるのはエンジニアなのかもしれない

今回の安野たかひろさんによる新党「チームみらい」の設立と参院選への出馬表明は、単なる政治家の新たな挑戦として片付けることはできない。

それは、AIという最先端のテクノロジーを操るエンジニアが、自らの手で停滞した政治の”OS”を刷新しようとする、野心的な試みだからだ。

安野さんが打ち出した「永田町エンジニアチーム」という構想は、これまで抽象的に語られてきた政治のDXを、具体的なアクションプランとして提示した。

それは、霞が関に閉ざされたシステムに、エンジニアという、ある意味異質な存在を送り込み、透明性の高い、効率的な政治のあり方を模索する挑戦に他ならない。

その道のりは決して平坦ではないだろう。

長年培われてきた政治の慣習、そしてデジタル化に対する無知や抵抗。

安野さん自身が語ったように、「熱意もやる気もあるのに、停滞感を脱せない構造的な問題」は、容易に打ち破れるものではないはずだ。

それでも、安野さんの言葉からは、現状を変えたいというエンジニアとしての強い意志が感じられた。

組織の壁、技術への無理解、そして外からの変革の限界。多くのエンジニアが日々の業務で直面するこれらの課題に、安野さんは政治という新たなフィールドで立ち向かおうとしているように思えた。

AIしかり、ITは、社会をより良くするためのツールなのか。それとも、複雑さを増すだけのツールなのか。

その答えは、テクノロジーを理解し、その可能性を信じるエンジニアたちが、政治という舞台でどのような行動を起こすかにかかっているのかもしれない。

安野たかひろさんの挑戦は、私たちエンジニアにとって、他人事ではない。永田町に「技術の灯」を点せるか。その動向を、引き続き追っていきたい。

「チームみらい」党首
安野たかひろ

1990年生。エンジニア。東京大学 松尾研究室出身。外資系コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループを経てAIスタートアップ企業を二社創業。デジタルを通じた社会システム変革に携わる。日本SF作家クラブ会員。内閣官房デジタル行財政改革戦略チーム構成員。東京都AI戦略会議委員。一般財団法人GovTech東京アドバイザー。近著に『1%の革命 ビジネス・暮らし・民主主義をアップデートするみらい戦略』(文藝春秋)、『はじめる力』(サンマーク出版)

編集/玉城智子(編集部)

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