子どもに大流行中の「マイコプラズマ肺炎」 治療と看病 登校・通院の目安とは?〔小児科医が解説〕
子どもに大急増中のマイコプラズマ肺炎。高熱が出たら親はどうサポートするべきか、看病の方法から学校、病院へ行く目安などを小児科専門医の岡本光宏先生が解説。2回目/全2回
子どもに急増中「マイコプラズマ肺炎」に抗生物質が効かない!? 医師が解説2024年秋、過去最高の流行となっている「マイコプラズマ肺炎」。通常の風邪よりも熱が続くことが特徴で、家で1週間以上、看病するケースも珍しくありません。高熱が出たらどうすればいい? 頭は冷やすべき? など、マイコプラズマ肺炎の看病についての正しい知識を、「おかもと小児科・アレルギー科」(兵庫県三田市)院長の小児科医、岡本光宏先生に教えてもらいました。●PROFILE 岡本光宏(おかもと・みつひろ)
1982年生まれ。日本小児科学会小児科専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医。「おかもと小児科・アレルギー科」院長。新生児から思春期まで幅広く診察。3児の父。
「高熱だからと薬」とあわてすぎない
次のページへ > 看病のために親が知っておくべきこと──マイコプラズマ肺炎(以下マイコプラズマ)では高熱が続くこともありますが、解熱剤はどのタイミングで飲ませればよいのでしょうか。
本人がつらそうにしていたら飲ませてあげてください。不機嫌にしている、つらくて眠れないといった場合です。睡眠は大事です。眠れないと回復も遅くなります。
ですから◯◯度以上になったら飲ませる、といった基準はありません。39度でもつらくなさそうなら飲ませる必要はありません。夜中に39度以上熱があって、息づかいが荒いからといって、ぐっすり眠っている子どもをわざわざ起こして解熱剤を飲ませる必要はないでしょう。マイコプラズマの場合、高熱による脳の炎症はほぼ心配ないでしょう。
──高熱時に親ができることはありますか。氷枕や濡れタオル、冷却ジェルシートは有効でしょうか。
必死に冷やそうとする親御さんもいますが、基本的には冷やさなくていいです。氷枕で後頭部を冷やしても直接的にはあまり意味がありません。
冷却ジェルシートは貼ったときは気持ちいいですが、体温を下げる医学的根拠はありません。特にジェルシートの赤ちゃんへの使用はおすすめしません。鼻や口をふさいで窒息を招く恐れや、食べてしまう恐れがあるからです。
子どもが快適だと思える環境を整えてあげてください。暑がっていれば涼しく、寒がっていれば温めてあげてください。基本的には体温が上がるときに寒気を感じますから、そのときに体を冷やそうとするのはNG。寒がったら布団を掛けてあげてください。
熱が上がりきって暑がるようなら布団を外してあげるくらいの調整で十分です。ただ、解熱時には大量の汗をかきますから、衣類がびっしょり濡れているようでしたら着替えさせてあげてください。快適な温度環境は、休息の質を高め、病気の治癒を手助けするでしょう。
とはいえ、氷枕を用意したり、濡れタオルでおでこを冷やしてあげたりすることは、愛情表現として大きな意味を持ちます。病気と闘っているときは心細いもの。お子さんが快適になるようそばで看病してあげることは、とても素晴らしい愛情表現だと思います。
──高熱が続くと脱水が心配です。何を飲ませてあげればよいでしょうか。
比較的にマイコプラズマ患者は、飲み食いできることが多いです。少しでも食べられていれば、飲み物は経口補水液でなくてもいいです。好きなジュースでもいいですよ。食べ物も食べたいものを食べればよいでしょう。1日以上何も食事や水分が摂れないとなると入院を要する可能性があります。
──咳止めを飲んで咳を止めたほうがいいのでしょうか。
マイコプラズマはしつこい咳が特徴です。咳は細菌に対する大事な防御反応でもあるのですが、体力を奪います。
特に夜間にひどくなりがちで、睡眠のさまたげになってしまいます。ぐっすり眠って体を回復させるためにも、咳止めは有効でしょう。
でもピタっと咳が止まる効果は期待できません。症状が少しラクになる程度と考えてください。次のページへ > 学校は休ませるべき?──マイコプラズマに罹患した場合、学校は出席停止になるのでしょうか。学校で流行っている場合、予防策はありますか。
学校は、場合によっては出席停止になることもあります。基本的には出席停止ではありませんが、「学校で通常見られないような重大な流行が起こった場合には、その感染拡大を防ぐため、必要があるときに限り、校長が学校医の意見を聞き、第三種の感染症として緊急的に措置をとることが可能」とされている疾患です。
学校長が決めた場合だけ登校禁止となり、通常は登校禁止の病気ではありません。「条件によっては出席停止の措置が考えられる疾患」と考えてください。
そのため学校によって違い、出席停止とする学校もありえます。登校の目安については、学校やかかりつけ医に相談してください。まだ咳が続いているようであれば、マスクをして登校することをおすすめします。
予防策はコロナ禍で行っていた手洗いなどの習慣がよいでしょう。マスク、手洗い、アルコールは効果があります。飛まつや接触で感染しますが、インフルエンザやコロナほど一気に広がる強い感染力はありません。とはいえ、学校で広がることもあります。
──受診先はかかりつけの小児科でしょうか。親が感染した場合はどうすればよいですか。
子どもは小児科、大人は内科、が基本です。ただし、マイコプラズマは、子どもも大人も医療的対応がほとんど変わりません。したがって、小児科医も大人のマイコプラズマ診療が可能ですし、内科医も子どものマイコプラズマ診療が可能です。
子どもの診療のついでに親のことも小児科医に相談する、または親の診療のついでに子どものことを内科医に相談する、ということもできると思います。
でも入院を要するような重症例であれば、小児科専門医や呼吸器専門医の治療が必要です。初期は通常の風邪と間違えやすい症状です。3日経っても解熱しなければ、無理をせず、マイコプラズマを疑って受診してくださいね。
あと、前編でお伝えしたとおり、感染してもすべての人が肺炎になるわけではありませんが、通常の風邪だと思い込んで受診が遅れると、肺炎が重症化することもあります。
また、マイコプラズマだった場合は「マクロライド系」といわれる抗菌薬(=抗生物質)が有効です。ただ、今の流行りには「マクロライド系」が効かない、「マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎」もあります。マクロライド系投与から約48時間経過しても解熱しない場合も必ず医師へ相談してください。
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2回にわたって、流行中のマイコプラズマ肺炎について、小児科医の岡本光宏先生にお話をうかがいました。
我が子が感染したときに備えて、抗菌薬の役割や発熱時の対応など、親も正しい医療知識を持つことが重要ですね。
取材・文/大楽眞衣子