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8年連続で社会増となった湯沢町でリゾートマンションのポテンシャルを考える。越後湯沢のバブル期リゾートマンションの今を見てきた

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越後湯沢のリゾートマンション開発の歴史は?

上越新幹線が通る越後湯沢駅

上越新幹線は1982年11月15日に大宮~新潟間で営業運転を開始し、2022年に開業40周年を迎えた。
越後湯沢駅は上越新幹線の停車駅として新潟県南魚沼郡湯沢町湯沢につくられた駅である。東京や上野から約1時間10分、大宮からは約51分というアクセス。駅からの徒歩圏内にいくつかのスキー場があり、またガーラ湯沢スキー場への乗り換えがある。

昭和のウィンタースポーツブームが訪れたのは1981年ごろからであるが、1987年に公開された原田知世主演の映画「私をスキーに連れてって」が大ヒットしスキーブームに拍車をかけた。日本のバブル景気は、1986年12月から1991年2月頃までといわれているが、このバブル期とも重なり日本各地のスキー場はにぎわいをみせる。当時、シーズンになると越後湯沢のスキー場に向かう道路や鉄道・バスはスキー客で混雑した。

越後湯沢駅の周辺、湯沢町には多くのリゾートマンションがみえる

そんな中、バブル期前後から徐々に盛んになったのはリゾートマンションの開発だ。
湯沢町のリゾートマンションの草分けとなったのが、1975年に建てられた苗場スキー場に隣接する「マンション苗場」。これを皮切りに1980年後半には、湯沢町周辺で温泉付きのリゾートマンションの建設ラッシュとなった。1985年~1991年までの6年間で約1万戸のリゾートマンションが販売されたという。

その後、ご存じのようにバブル崩壊により、「失われた30年」といわれる日本の経済とともに各地のリゾートマンション開発は衰退していく。一時期は都内の新築マンション価格と同じように3,000万超の価格で販売されたリゾートマンションは軒並み老朽化もすすみ苗場などはSNSで"廃墟に近い"とも表現され"10万円でも売れない"物件もあり、バブル期の負の遺産といわれる時代が続いた。

しかし、近年の二拠点居住や地方創生の波もあり、熱海などにも例をとるように日本各地のリゾートマンションが見直されるきっかけとなっているようだ。
実は湯沢町の2024年の人口は社会増(流入人口が流出人口を上回る)となっている。
築40年超の物件もある湯沢町のリゾートマンションはどうなっているのだろうか。湯沢町を訪れて、まちの様子といくつかの物件を見てきた。

現在の越後湯沢駅の駅前の様子

越後湯沢駅内の様子(2025年3月撮影)。多くの観光客でにぎわっている

取材に行ったのは、2025年3月の中旬。
越後湯沢周辺は、徐々に暖かくなってきているものの、未だ雪が残っていた。

越後湯沢駅を降りると構内に土産物店が並ぶ。人気の利き酒ができる「ぽんしゅ館」や「酒風呂」に入れる施設もあり、賑わっていた。驚いたのは日本人の観光客を上回るインバウンドで訪れた外国人観光客の多さ。主に台湾や中国からの観光客のようだ。
5・6年前に湯沢町を訪れたときには駅前の店舗は空き家が多かった印象だが、現在では、新しいお店や飲食店も多く開店している。ホテルや民宿も満室に近く、素泊まりの宿も多いため、店舗は増えているものの夕食難民もでているようだ。

今回ご案内いただいた株式会社エンゼル不動産 湯沢店 店長の藤江さん(写真左)と営業の五十嵐さん(写真右)

駅から街を見渡すと駅周辺から山側に向けて、たくさんのリゾートマンションがみえる。バブル期に建てられたものも多く、デザインが施されたマンションは一見ホテルと見間違うほどだ。
実際、湯沢町のリゾートマンションは現在どのようになっているのだろうか。

実際購入されてリノベーションをされた2事例と、現在(※2025年3月現在)売り出している湯沢町のリゾートマンションも紹介したい。
今回、複数のリゾートマンションを取材するにあたって、湯沢町を案内してくださったのは株式会社エンゼル不動産 湯沢店 店長の藤江さんと営業の五十嵐さん。

外観からは想像できないリノベーション後のリゾートマンション実例

越後湯沢駅から徒歩3分ほどの立地にあるKさんの部屋。窓からは湯沢町の雪景色が見える

まず訪れたのは越後湯沢駅から徒歩数分の築45年のマンション。
外観は多少老朽化が進んでいるが、そこまでの古さは感じない。都内にある築古のマンションと変わらないと感じた。一階は常駐する管理人と男女別の温泉の共同浴場がある。

このマンションの最上階の一室を買い、リノベーションをしたKさんの自宅を見せてもらった。
「私はスキーが好きで、冬になるとスキー場に行く機会が増えます。越後湯沢は東京からのアクセスもよくて、温泉も美味しいものも楽しめる。何回もシーズンに訪れるのであれば、いっそ住めないかと調べたところ、1980年築の中古のリゾートマンションが格安で販売されていました。平米数は約58m2のマンションです。購入価格よりも内装のリノベ費用の方が圧倒的に高かったですが、それでも購入費用など込みで1,000万円かかっていません。
1階には共用設備の温泉もあり、常駐の管理人もいる。部屋からの眺望と駅からの近さもあり、購入を決めました。週末に来て、温泉とスキーを楽しんで週明けに都内に戻る、という生活で快適に過ごしています」という。

物件に温泉がついているため、あえて部屋内の浴室スペースはなくした。内装はデザイナーに依頼して、自分らしいくつろげる空間にリノベーションしたという。

内装はデザイナーに依頼して、自分らしいくつろげる空間にリノベーションしたという
こちらも駅近のSさんのお宅。越後湯沢駅からほぼ外を通らずマンションに入れるという立地も魅力

もうひとつ、駅近のリゾートマンションを購入したSさんのお宅。
こちらも駅から徒歩圏内の築36年(1988年竣工)、50m2の最上階の一室をリノベーションしたという。

「越後湯沢は大好きで学生の時から通っていました。家族でスキーをする機会も多く、お正月はホテルをとって湯沢町でスキーをすることも多かったのですが、近年のインバウンドの観光需要でホテルも予約が取りづらく、予約ができても孫も含めた家族で数日滞在するとそれなりの金額がかかってしまう。夫婦で相談をして“それなら、いっそ購入しよう”ということになりました。
いくつか候補となる物件をみましたが、ちょうど駅近の物件の最上階の部屋が空いており、購入を決めました。共用設備には温泉もサウナもあり、地下にはスキーの板などを収納できるロッカーもある。管理体制もしっかりしているのでよい買い物だったと思います。
リノベーションした部屋には床断熱も入れて、間取りは壁をとって空間を広々と取りました。家族や友人が来た際は、空間を区切って泊まれるように吊り下げ式のパーテーションをいれています。窓からの眺めが最高で、この拠点ができたことで都会と自然豊かな湯沢町の両方の生活を楽しめています」という。

越後湯沢の販売中のリゾートマンションはどうなっているのか

「ホワイトプラザ湯沢Vプラージュ」の外観

湯沢町の少し駅から距離がある物件もご案内いただいた。
まずは、築32年(2025年現在)の魚野川近くに立つ「ホワイトプラザ湯沢Vプラージュ」。総戸数616戸の大型物件だ。
エントランスロビーはホテルのよう。共用部分はリゾートマンションにふさわしく、温泉大浴場・露天風呂・クアドーム・ラウンジ・スポーツルームなどを備えている。一階にはレストランも完備されており、リゾートシティのような物件である。
リノベーション済みの部屋をみせていただいた。14階建ての14階、84.38m2の1LDKの部屋だ。半円形のリビングは窓から越後湯沢の雄大な風景がみえ、“都内だったらいったいいくらになるだろう”と思うような間取りと広さと設備をもつマンションだが、売り出し価格は1880万円。別途、管理費と修繕積立金で月額53,200円ほどかかる。
冬の時期はスキー場が近くにあり、夏であれば近くの魚野川で川遊びもできそうだ。マンションには駅までの送迎のシャトルバスもあり、管理が行き届いている事例のリゾートマンションだ。

温泉大浴場・露天風呂の他、写真のクアドーム、ラウンジ・スポーツルームなどを備えている「ホワイトプラザ湯沢Vプラージュ」
「ステラタワー神立」の外観

もうひとつ、湯沢インターチェンジより車で3分の物件「ステラタワー神立」である。築32年、691戸の大型リゾートマンションで、外観は都内のタワーマンションのよう。
こちらも館内には温泉大浴場、室内プール、フィットネスジム等の施設と屋外には夏場のみ利用できる露天風呂、テニスコート等がある。冬期間・ゴールデンウィークは湯沢駅とマンションを結ぶ無料バスの運行もあるという。こちらは複数の物件により価格の幅はあるが、現在の販売価格は広さにより400万円からリノベーション済み物件で1980万円ほど。

いずれの物件もリゾートマンションであるため設備は充実、都内の7千万~億超えに近い中古物件と比べると、価格は相当に安い。ただし、築30年超のマンションが多いからこそ、メンテナンスを含めた管理体制は気にしたいもの。
スキーなどが趣味であり、二拠点を考えている人は都内からのアクセスも含めて便利で快適に暮らせるのではないだろうか。マンションの管理規定などがあり、民泊は現時点ではハードルが高いが、周囲のホテルが予約がとれない事情などを考えると、管理規定変更などが可能であればもっと注目を集めるはずだ。

「バブル期に建てられたリゾートマンションですが、越後湯沢は東京からのアクセスもよく、問い合わせが増えている状況です。一時期はかなり安い金額でも売れない時代も続きましたが、現在、管理がしっかりしている駅近物件についてはほぼ在庫がない状況になっています。インバウンドからの問合せもあり、今再び注目が集まっています」と藤江さんはいう。

今回の取材では、湯沢町の中でも比較的駅に近い物件をみてみたが、苗場など少し離れた地域のマンションは見学できなかったので、さらに物件にはバリエーションがあるように思う。物件購入を検討する方は、各地区を含めて物件を見ていくとよいと感じた。

「ステラタワー神立」の最上階にはラウンジも備えられている

8年連続で人口の社会増がつづく、湯沢町のまちづくりの今後

湯沢町の移住定住サイト(https://livelife.town.yuzawa.lg.jp/)

二拠点にしろ、移住にしろ、湯沢町に暮らすのであれば、今後の湯沢町のまちづくりについても気になるところだ。
湯沢町では土地の再活用、駅前のにぎわい、スキー場含めた観光への取組みなどが進む中、湯沢町は今後どのようにまちづくりを考えているのだろうか。
湯沢町役場の富沢さん、湯沢町議員の飯田さんにもお話をきいた。

「湯沢町では平成27年から『観光立町宣言湯沢町 君と一緒に暮らす町』』をブランドスローガンに掲げ、地方創生に取り組んできました。中でも、移住を支援する各種補助金や、移住相談窓口の民営化など、積極的な移住・定住施策を推進しています。
その成果もあって、人口の社会動態(転入と転出の差)では過去8年連続の転入超過を達成し、人口減少を緩やかにすることに成功しています。移住した際の住まいとして、リゾートマンションを活用できることも転入増加の要因です。
これからは、観光客などの交流人口はもちろんですが、交流人口よりもさらに湯沢町への関与意欲が高く、確度の高い移住予備群となりえる"関係人口"をどれだけ確保できるかが、町のサステナビリティを高めるためのポイントだと考えています。
そうしたことの基盤となる、越後湯沢駅からの二次交通の利便性向上や、冬季や夏休みに偏ってしまう観光産業の平準化を進めていきます」と富沢さん。

また、湯沢町議員の飯田さんは、
「湯沢町は観光振興と地域生活とのバランスを保ちながら、持続可能で魅力的なまちづくりを進めており、訪れる人々にも住む人々にも満足度の高い地域社会の実現を目指しています。地理的な利便性では、東京から新幹線で約70分、関越自動車道で約2時間というアクセスの良さに加え、冬季には自然雪を楽しめる10のスキー場、夏季には避暑地としての自然を活用したアクティビティなど、四季を通じた観光資源が豊富です。
しかしながら、観光産業の発展が住民の生活に悪影響を及ぼすようでは本末転倒です。観光客や移住者、事業者の急激な増加によって、知らない人ばかりが周りにいることによる「不安感」を住民に住民に生じさせてしまってもいけません。持続可能なまちづくりを目指す上で、人口や事業者数、観光客数のバランスや各種施策、規制については、今後も慎重に検討を進める必要があります。
そのためにも、観光客数の増加だけを目的とする箱物ビジネスではなく、住民生活との調和を重視した高満足・高付加価値なまちづくりを目指していくべきだと考えます。議員の立場として、様々な観光地の事例を研究しながら、湯沢町の活力向上と将来世代に誇れるまちづくりが実現できるよう、行政と連携して取り組んでまいります」と話す。

人口の社会増となっている湯沢町。
観光でも復活しつつあるが、バブル期に建てられたリゾートマンションの再販も含めて、どのような街になっていくのか。リゾート地の中古マンション活用でまちづくりが進むひとつのモデルタウンとなるのか。今後に注目をしていきたい。

■取材協力
エンゼル不動産 湯沢店
https://www.angel-f.com/yuzawa

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