静岡県でも人気店の店舗次々オープン ラーメン市場が過去最高 立ちはだかる「1000円の壁」
■昨年度のラーメン市場7900億円の見込み 10年前の1.6倍
ラーメン市場が拡大している。昨年度の売上高は過去最高の7900億円に達する見込みとなった。静岡県内でも浜松市を中心に人気店の店舗が次々にオープンするなど、チェーン店が業界をけん引している。
東京で行列が絶えないラーメン店 「むかん」も浜松市にオープン
帝国データバンクが発表した昨年度の「ラーメン店市場動向調査」によると、ラーメン店の市場規模は事業者の売上高ベースで7900億円に到達すると予測される。集計可能な2010年以降で最高を更新し、10年前の1.6倍に拡大している。
市場をけん引しているのは、家系ラーメンや濃厚豚骨ラーメンを提供するチェーン店だ。主要50社の店舗数は昨年度末時点で約6200店に達し、初めて6000店を超えた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で一時は落ち込んだものの、10年前の5043店から約1200店増加し、チェーン各社の積極的な出店が奏功している。
業績面では、ラーメン店の44.7%が「増収」、55.0%が「増益」と回答した。原材料費や人件費、光熱費といったコスト増が続く中でも、それ以上に売上が伸びている店舗が多い。特に大手チェーンでは、スケールメリットを生かした原価管理や効率的な店舗運営によって収益力を確保。海外からの観光客需要も後押しとなり、3年連続で業績好調を維持した。
■チェーン店が業界けん引 6月に浜松市や清水町で新店舗
静岡県内でも人気店の店舗が次々と出店している。浜松市では6月から7月にかけて「むかん」、「カプサイメン」、「魁力屋」の新店舗がオープン。清水町では大手チェーン「天下一品」の店舗が開店した。
業界全体の売上や店舗数は増えている一方、課題も浮き彫りになっている。2020年度を基準とした「ラーメン原価指数」は2024年度に129と、わずか5年で約3割上昇。豚骨や背脂などの具材に加え、麺やメンマ、海苔といった広範な原材料が軒並み高騰し、原価の高止まりが続いている。
安くて満腹になる“庶民の味方”というイメージもあって価格転嫁が難しく、「ラーメン1杯=1000円の壁」は依然として重い。1000円を超える期間限定メニューやセット商品の開発などで客単価の引き上げを図る店舗もあるが、全面的な値上げには慎重な姿勢が続く。
また、昨年度の倒産件数は62件と、中小・個人店を中心に経営状況が厳しい店も少なくない。コスト増に見合う価格設定ができず経営難に陥るケースが多く、大手チェーンとの収益力の“二極化”が顕著になっている。
近年は牛丼大手の「吉野家」をはじめ、ラーメン業態以外の外食チェーンがラーメン市場に新規参入する動きも目立つ。市場全体に占める上位3社のシェアは25%程度にとどまっており、今後もシェア拡大の余地は大きいとされる。既存チェーンの国内外での出店攻勢に加え、新たなプレイヤーの参入によって、ラーメン市場は今後も高成長を維持する可能性が高い。
安くて手軽な“国民食”として長年親しまれてきたラーメンは、いまやグローバルに展開する一大外食ビジネスへと成長している。その動向から目が離せない。
(SHIZUOKA Life編集部)